我が姫君に栄冠を 感想

我ながらホントどうしようもない。
なんやかんや言いながらやってしまうんですね。
DL版で欲しかったのですが、『和香様の座する世界』と同じくパッケージにFANZA GAMESのDLコードが同梱されてる仕様で、だったら別にDL版出しても問題ないんじゃない? っていう不思議ちゃんです。
誰に対する義理立てなのか。
多分そのうち時間差でDL版出るのは既定路線でしょう。


神奈川を出たタカヒロ

さて本作、タカヒロ氏が神奈川EXITかますというもうそれだけで事件です。
姉しよ』以来コツコツと、そろそろ神奈川もネタが尽きましたかね?
あと地域的にしいてネタにできると言ったら箱根くらいでしょうか。
タカヒロ氏×箱根……、全く想像できません。

しかしながら、意外なほど無難にファンタジー世界は料理していたのではないでしょうか。
よくよく考えたら『結城友奈は勇者である』とか『アカメが斬る!』とかやってましたもんね。
アダルトゲーム以外の経験をこちらの業界に還元してくださるのはとても素晴らしい。

ただこのファンタジー世界、世界観にどっぷり浸かれるタイプではありません。
そもそもタカヒロ氏が世界観ゴリゴリ作り込んでいく人ではないので、言わば「なんちゃってファンタジー」です。
恩恵を受けたのはキャラの方でしょう。
といいますか、種族によるキャラの差別化をより容易にするための側面が強いように感じます。
まじこい』の無印であの物量のキャラ付けにかなり苦労していた印象だったので、しっかり対策しているなという印象です。
そういうところ、『和香様』の時も思いましたが、ホント修正能力高い。


いつものタカヒロと比べて

キャラクターに関しては、キャラもビジュアルも安心安定のクオリティです。
気の強いヒロインっていいですよね。
これもう10年くらい言い続けてる気がします。

テキストは『まじこいS』あたりからのセリフ比率高めな流れを汲んでいますが、だいたいの登場人物が自分の動作実況してくれてまして、それじゃ地の文省く努力した意味ないじゃんねっていう。
セリフだけで話進めるとテンポめっちゃよくなりますが、その分難易度高いですよね。
違和感なくそれができる域にはまだ達していないです。
そのへんモロに影響受けてるのが戦闘描写でして、動作実況中継&能力セルフ解説スタイルのバトルは個人的にとても嫌い。
露骨すぎる説明セリフと合わせて、もう少しどうにかならないものか……。

あとパロディ的なのが今回はほぼ無かったように思います。
少なくとも不自然にぶち込まれている感覚はありませんでした。
一番避けてほしいのは、何のネタかはわからないけど何かのネタっぽいぞこれ、という違和感・不自然さです。
やるなとは言いませんが、下手こくくらいならやめて欲しい。
その点は非常に良好です。


構成について

なかなかダイナミックなルート制限かけてきました。
ここまでガッチリ固めてくるのも珍しい。
だんだん情報を出していく構成は好きです。
こういう逆算的な作り方をタカヒロ氏がするようになるとは、なんとも感慨深い。
ただこの作り方だと、最初のヒロインがわり食うんですよね、ノアさん……。
あとサブヒロインえらいあっさりでしたが、残りは『我が姫S』ですかね?

自分でもなんでか不思議ですが、びっくりするくらいハイクーン大陸の広さ感じません。
あっちこっち行くわりに道中端折るせいですかね?
でもこれで移動のたびに描写されたら死ぬほどダレるので、全然正解なはずなのですが。
あと、旅の道中楽しむゲームでもないですしね。

陣営ごとで展開の住み分けはとてもうまくいっていると思います。
ノアルートで世界観をざっくり見せて、エリンルートで広げて、クロネルートで回答編といいますか。
どの陣営に仕えても同じ展開で大陸制覇してちゃんちゃん、にならなかったのはホント僥倖です。
しかし先述のルート制限のせいで、キャッチコピーの「三人の姫君、誰に仕えるか」感が薄まってるのが痛しかゆしですね。
誰に仕えるかほぼ決められちゃってます。


金のかけどころについて

毎度のことですが、男性声優への金の使い方が頭おかしいです……。
女性キャラ以上に知ってる男性キャラの声が多すぎて笑います。
今回のポイントは先述のパロディネタ同様、声優ネタもほぼ封印している点でしょうか。
ネタぶっこまなくても、これだけのメンツがアダルトPCゲームに声当ててるってだけで面白いです。
隠す気ない人とか。

また、金の話でいうと、タカヒロ氏の過去作はこれまで全てアニメ化されています。
まあ『姉しよ』はアダルトのOVAですし、『きみある』は多分自分で持ち込みで無理くり感ありましたし、『つよきす』はアニメ化なんてされていませんが、本作も何らかの形で映像化はされるのかな、なんて思っています。
また先述の通り、続編展開で『我が姫S』とかやるのかどうか。
その辺も結構気になったりします。


おわりに

キャラクターデザインや会話のノリの良さといったタカヒロ氏元来の良さは生かしつつ、世界観の構築やストーリー構成の作り込みといった部分で新境地をみせてくれました。
一方で情報開示時の説明セリフや戦闘描写に見られる過剰な「分かりやすさ」は、恐らく私の趣味に合わないだけで世間的にはマイナス要素にはなっていないのだと思います。
そこはもう、タカヒロ氏のタイトルを遊ぶ際に私側でなんとかしないといけない問題なのでしょう。

いくつもヒット作は作ったけれど、まだまだ守りに回る気はないぜという心意気を感じた一本でした。

2021.05.09