積みゲー賽の河原



真剣で私に恋しなさい!

つよきす』の面影を追いかけていた自分があったことを否めません。誰も思い出には抗えないのです。

無駄に多い登場キャラクターに、有名声優を惜しみなく起用し、「武士娘」というキャッチーなコピーのもと生まれたのが本作です。内容云々はまず置いといて、とにかく売れました。実際問題、2009年ではダントツの売り上げだったみたいですし。営利法人を営む以上、全く以って正しい姿です。その点ではまず大成功でしょう。

私の主観的な感想としては、少々肩透かしな印象が強かったです。思い出のせいで期待が大きすぎたのは間違いないのですが、少しキャラクターの作り方が下手になったような気がしています。元々タカヒロ氏が、華麗なテキストや巧妙なシナリオで売るタイプではなく、あくまでキャラクターの魅力で勝負するタイプなのは百も承知で、私としてもそのキャラクター目的での購入だったのですが、さすがにキャラクターの数が多すぎました。ここまで増えると、一人一人は薄くならざるを得ません。かと言ってあまりに薄すぎてはそもそも登場させる意味がありません。結果、本作ではキャラクター各々に一定の濃さを持たせるための折衷案として、何かある毎に一定パターンの言動を繰り返しとにかくイメージを定着させる、と
いう手段をとっております。これが過剰に繰り返されるため、非情にくどいわりに薄っぺらいという奇跡の仕上がりです。あろうことかヒロインまでやたらめったら「修行、修行」「バトル、バトル」の連呼ですから、もったいないなあと。

また、タカヒロ氏の持ち味であるパロディネタも、どことなく足を引っ張っているように思います。ああいうのは、あくまで分かる人だけ気付く、くらいが丁度いいのです。「ここパロディしてますけど!」と自己主張するようなやつは大抵寒いです。商業主義の権化みたいな本作ですから「タカヒロと言えばパロディネタ」みたいな需要がある事に対し、かなり意識的であったと思われます。結果、これでもかと盛り込んで供給過多となり、一つ一つのネタが安かろう悪かろうとなってしまっているように感じました。場面によっては、このパロディネタを出したいがために流れをぶった切るようなものもありましたので、本末転倒です。浅すぎる政治ネタも残念でした。

最もまずかったかなあという点は、バトル描写をマンガのノリでやってしまった点でしょう。マンガというのは、実は極めて情報濃度の高い媒体です。「画」「セリフ」「擬音」「漫符」「コマ割」等々の伝達手段を重ね合わせ、大量の情報を1ページの中に凝縮しています。一方で本作が用いているADVというシステム。「音声」「画」「テキスト」「BGM」が精々でしょう。しかもマンガが各ページで情報を使い捨てるのに対し、ADVは「立ち絵」「BGM」等、使い回しです。1単位あたりの伝達情報量も少なくなります。つまるところ、ADVでバトルのような動きの激しい描写をしようとすると、全く持って情報の供給が追いつかないのです。ましてや本作、地の文でマンガの視覚情報を説明するような描写をするものですから、ミスマッチが加速します。戦い方間違えている気がしてなりません。
プロローグでバトルシーンをアニメでやっていたあたり、そのあたりは自覚的なんだろうなという気配はしていたのですが。

繰り返しますが、商業的には大成功です。ソフトの売り上げに加え、メディアミックス展開まで含めると(この業界レベルとしては)莫大な収益を上げているはずです。自動車でいえばTOYOTAの「アクア」みたいなものでしょうか。消費母数に対し、最大公約数を上手い事見つけ出せています。私が勝手にランボルギーニ欲しがって文句言ってるだけです。思い出は美しいまま心の奥にしまっておくのが一番だと感じた一本でした。