積みゲー賽の河原


ショコラ~maid cafe "curio"~

先日友人の結婚式があり、そういえばフォセットの脱カトレア記念日が素晴らしかったなと思い出し、久しぶりにプレイしなおしたらやっぱり素晴らしかったので、これは当サイトでも早々に丸ねこ三部作の感想ページそろえてしまおうという事で今更ながらのアップでございます。

丸ねこ三部作の記念すべき1作目、これが無ければ傑作『パルフェ』も生まれなかったわけですが、その企画が丸戸氏発ではないから世の中って面白いです。当初別のライターがシナリオ担当していたところ途中で失踪し、丸戸氏に白羽の矢が立ったというのはファンの間では広く知られた話です。本作も、随所に丸戸節が炸裂して入るものの、やはり氏のセンスではないなという箇所がちらほら散見出来ます。
例えば、あまりにもあざとすぎる鈴の「お兄ちゃんの妹の結城鈴です」なんて台詞や、惰性でずぶずぶと溺れていくような眞子さんのルートのプロットあたりは、個人的に前任者がかろうじて残していった部分なんじゃないかなと思っています。逆に、香奈子さんのどうしようもない依存的な駄目さ、翠を巻き込んでの三者三様の煮え切らなさなんかはまさに氏の仕事らしいと感じられます。加奈子さんで上手くやりきれなかったところをぶつけたのが里佳子らしいので、そう見るとまた違った面白さが感じられます。そう言えば美里ちゃんの終盤、初任給のくだりなんかも実に丸戸氏らしいと思うわけですが、一方でヤクザの娘の家出というシチュエーションはなんかあれ?というらしくなさを感じます。せいぜい『この青空に約束を―』の校長、教頭レベルの小悪党くらいの悪い人しか氏は出さないので。『世界でいちばんNGな恋』の澤嶋さんちもそうでした。このあたりは必死に継ぎ接ぎした痕跡といったところでしょうか。おかげでバラさんの過去が一層謎めいたものになってしまってしまいました。あれはあれで良い。
また、丸戸氏はファンタジーには手を出さないイメージです。唯一は『めもらるくーく』くらいでしょうか。あれはあれで思い切った設定なので、やはり本作のチロルは、氏の経歴からみれば浮いた存在です。そういう意味では、他人の尻拭いもファン的にはありがたいと言えるかもしれません。

『パルフェ』では玲愛、『この青空に約束を』では奈緒子が素晴らしく好きでしたが、本作の場合は圧倒的に翠です。芯が強くて女っぽさ抑え目のヒロインが好きなのです。悪友みたいな付き合いのくせにしっかりヒロインやってるからずるいんですよ翠はホントもう。そして名台詞が多い。「手元に置いとく道具箱」から「私だって女なんだぞぉ」の破壊力はその最たるところで、私が現実(当時曰く、どうして世の中には女の腐ったような女しかいないんだ)に絶望するには十分すぎる威力でした、当事は多感な時期でしたから。
しかしながら、翠以外となると、先述の美里ちゃんルートと香奈子さんルートくらいしか見所が無いのも実に悲しい。良くも悪くも何かあれば、内容は覚えておらずとも何かあったこと自体を最低限覚えているものですが、それさえもないのでそういう事だったんだと思います。だから本作は翠と香奈子さんと、気が向いたら美里ちゃん見とけばいいと思います。

最大限ポジティブに捉えるならば、今の丸戸氏に企画作らせたとしても絶対出てこない作品を楽しめる、という点に尽きるでしょうか。メイド喫茶経営なんていかにも戯画らしいひねりの無い企画です。丸戸氏にまわってこなかったら、間違いなく誰に記憶されるでもなく消えていく単発タイトルになっていたことでしょう。そして本作のヒットがあったからこそ『パルフェ』が生まれたわけですから、ホント巡り会わせって面白い。本編も、盤外の下衆の勘繰りも楽しい一本です。

追記:本稿で言及する丸戸史明は、ライトノベル作家丸戸史明とは別人です。私の中では。ここ5年ほどの動向は一切関知しておりませんのでご理解ご了承の程、何卒よろしくお願いいたします。

2017.12.20