積みゲー賽の河原



世界でいちばんNGな恋

丸戸氏の趣味駄々漏れな香りがムンムンします。いつだか雑誌か何かの座談会みたいなコーナーで「ダメ女が好き」みたいな話をしていた記憶があります。『この青空に約束を』のさえちゃんみたいな負け犬系ではなくて、『パルフェ』の里佳子みたいな男のせいでダメになっていく依存系が良いらしいです。本作では特に麻実さん真夜さんあたりが丸戸的ドストライクじゃないかなあと、これまでの私の丸戸遍歴が囁いています。まあ、一番のダメなのはトコちゃんママで間違いないですけれども。

しかしながら、この人の引き出しは面白いです。例えばテラスハウス陽の坂の住民たち。熊さんはっつぁんご隠居に、美人なヤキモチ焼きの女将さんが長屋に住んでいらっしゃる。しかも家賃が滞納気味ときたら、もう古典落語のテンプレートです。この世界観をより楽しみたいのであれば、噺家にもよりますが『雑俳』あたりオススメです。また、会社員をここまでちゃんと(というには少々仕事が派手ですが)描いた作品はあまり記憶にありません。一般企業に勤めた経験のあるクリエイターが少ないのか、安牌っぽい学園モノしか作らせてもらえないのか。まあ少なくとも、経験していなければ作れないのは間違いありません。人生経験って大事です。野球をしたことも見たことも無い人間が、野球の面白さを他人に伝えることは出来まないのです。ただ、この人昔どんな働き方してたんだよ、というのはいつも感じます。それこそ『RIPPLE』の頃からですが、いつも主人公が破壊的な働き方します。本作も「72時間働けますか」を地でいってますし。2徹3徹どんとこいなノリには恐怖を感じざるを得ません。

本作のように一本の大筋のストーリーがあり、途中途中で本筋と個別ルートへ分岐するスタイルを、「途中下車方式」と表現した先人がいるようです。実に上手い言い回しだと思います。イメージ的にはさびき釣りの仕掛けみたいな。(余計分かりにくいですね)私は大抵本筋放置して、分岐がある順にヒロインルートへ入りますが、本作はそれで正解だったと思います。やっぱりだんだん分かっていくほうが面白いです。例えばトコちゃんですが、高校生だと思っていたらなんとなく違和感があって、話が進んでいくと実は中学生でした、という。先述のダメ女の事が私の頭にあったので、タイトルの『世界で一番NGな恋』は「ダメ女たちの恋模様」みたいな意味で捉えていましたが、とんだダブルミーニングです。年の差一回り以上はあまりに犯罪的です。

アニメ化、実写化等、アダルトゲームの映像化について私は結構否定的なのですが、本作の場合はドラマ化すれば結構映えると思います。理由としては以下の3点です。
①登場キャラの年齢層が高め
②途中下車方式(メインのルートが明確)
③アニメ・マンガ的な表現は抑え目

過度にアニメ・マンガ的なお約束に依存していないとも言えます。一応「第○話」なんて切り分けもされていますが、映像化したときどんな尺になるか不明なのであまり有利には働かないでしょう。あとは世間様にどれだけ受けるかどうかですが、さて。ある媒体で使い古されたパターンを、他の媒体に持っていくと案外当たるケースがあります。本作をドラマ化、と言うとドラマという媒体がアダルトゲームのパターンを輸入するという意味になりますが、実態は逆です。本作がテレビドラマをアダルトゲームに輸入しているのです。ですからテレビドラマ側から見れば、逆輸入になります。アダルトゲームという媒体で製作されたことがブラッシュアップと取られるか、劣化コピーと取られるか、微妙なところです。

思ったことをダラダラと書き連ねましたが、いろいろ思いつくくらいによく練られた企画だと思います。いろいろと詰め込まれているのに無駄なものがありません。このあたりは実に丸戸氏らしい洗練のされ方です。能力ある人が作りたいものを作りたいように作ったら、そりゃ面白いもの出来るよねと感じた一本でした。

2015.06.24