バタフライシーカー 感想

サスペンスが我が家で局所的にブームの兆し。
いや、サスペンスというかミステリー?定義的には犯人が分かっていて、それを追い詰める過程を楽しむのがサスペンス。
誰が犯人なのか明らかにしていくのがミステリー、みたいな話をどこかで聞いたことがあります。
それでいうと本作はさてどちらになるのでしょうか。
よう分かりませんが面白いのは確かです。

本来であれば謎解きに異能っていうのは邪道ですが、それありきでなくきちんと物的状況的証拠に基づいて話は進むため、第三者から見た場合の論理破綻は起こっていません。
異能で入手した情報そのものを証拠に用いてはいけないという、ここは必ず抑えなければならないポイントだと思います。
『JDCシリーズ』はほら、ミステリーとかそういう枠に収まるのとは違うから……。

ネーミングが逐一好きです。
主人公の異能でありタイトルである「バタフライシーカー」にしても『バタフライエフェクト』の名前をもじっただけでなく、しっかり中身もそれに準ずるものになっていますし、昆虫美食部→ムシクイの通称も推理パートで文中のブランク(虫食い)を埋めていく過程に引っ掛けていたり、単にパロっただけでない面白さがあります。

ネーミングに限らず設定についてもかなり練られている印象で、ヒロインは作品の全体像の従属物、くらいの思い切りが感じられます。
事件の解決を描いて、TRUEエンドへ至るまでの伏線ばら撒ければそれで良しというか、個別ルートでヒロインを前面に押し出していこうってスタンスではないです。
これは『シンソウノイズ』や『景の海のアペイリア』にも見られた傾向です。
裏で手を引いているのはホビボックスかDMMか、あるいはシルキーズプラスの意図なのか。
いずれにせよ、ヒロインありき、あるいはそれだけで売ろうとする、ないし売れてしまう業界へ一石を投じる(本人達の意図はさておき)心意気を感じます。
そういう硬派さ好きです。

ヒロインはみんな乳があって非常に良いと思います。
おっぱい星人には嬉しい仕様です。
ただ1枚画だとたまに人体構造が不安になるのが若干残念。
まあ多くは求めませんとも乳さえあれば。

ヒロインの萌えを求めるユーザーは消化不良かもしれません。
先述の通りTRUEへの伏線というのもありますし、物語の軸足が事件とヒロインの関係性でもって展開していく色合いが強く、通常の萌え系のように主人公とヒロインの関係性の中でいろいろと展開していく流れを期待するとギャップがあると思います。

しかし、ではヒロインのクオリティがイマイチかというとそんな事は無く、むしろ私はかなり好きです。
梓先生なんかは筆頭ですが、女子力低いのが好きなんです。
砂糖菓子みたいな女の子女の子したのは苦手です。
だから天童さんとか苦手。
それで言うと透子姉さんは女子力高そうな部類に入ってしまいますが、まあ女子力高いヒロインは「白織市のハンニバル・レクター」なんて呼ばれませんので良しとしましょう。

攻略順を、羽矢⇒千歳⇒優衣の順でいきましたが、これ最適解じゃありません?主人公の過去について、白織市の異常性とアカオリチョウの関連、透子姉さんの真実等々、出てくる順番が良かったと感じます。
試すつもりはありませんが、他の順番でも「あ、これが正解の順番だ」なんて思えるようだと、伏線管理やばすぎでしょって話ですね。
プロットの魔術師を名乗ることを許可します。

しばらく積んでいたわりに、プレイし始めたらサクサク終わってしまいました。
しかも、感想だらだら書いてるうちに、なんとFDの製作まで発表されてしまいまして。
あんまりFDの発表が早いと、商業的に芳しくなのではと不安になります。
本編の販売不足を即FDで補填しにいくっていうのはこの業界あるあるらしいので。

しかし旧elfのシルキーズ時代は『愛姉妹Ⅳ』なんかでも表明していたように、FDに対して積極的ではなかったはずなのに一体どういう宗旨替えがあったのやら。
そうえば『景の海のアペイリア』なんかもでしたか。
いや、ユーザー的には嬉しい話なんですけれども。
だったら『なないろリンカネーション』とか『あけいろ怪奇譚』も頼むぜと期待したくなってしまうのを誰が止められましょうか。
こっちは商業的にそこそこヒットしてるみたいなので、こっちは出ないとなると上記の話の証左になってしまうのですが……。

妙な邪推はさておき、濃い時間を楽しめました。
ブランド買いの期待に応えてくれる一本でした。

2018.07.24