星継駅疾走軌 感想

事実上のRail最後の作品です。
希氏の製作がLiarに移ってしまいましたので、わざわざRailに戻って新たに作るって事は無いんだろうなと思うと寂しい。
Liarで作るとテキスト枠が小さなADV形式になってしまい、希氏のテキストを味わいつくせないのです。

巨大構造物パラノイアとして名高い希氏ですが、今回は超巨大列車です。
動力は?とか、線路は?とか、車輪の軸受けとか即死じゃね?とか、この期に及んでそんな事を気にする諸兄はそもそも本作なんぞに手を出したりはしていないと思います。
そのあたりの理不尽さを、まあいいか、で済ませられる雰囲気作りが出来ているからいいのです。
しくじると致命傷になる荒業です。
しくじってるケースで何本のゲームを投げた事か。
……話が脱線しました。

この星継駅シリーズでは、全く異なる空間が無節操に入り乱れる傾向が顕著ですが、今回は空間に限らず登場キャラまで無節操で『年代史』でそれぞれ順繰りに巡った時代はちゃぶ台返しが如き様相、挙句なぜか朔屋と智里まで混入する始末。
瑛とシラギクが同時に登場するのはあまりに掟破り。
Liarのファンディスクだと、不思議時空を舞台に作品跨いでキャラクターごちゃ混ぜっていうのはお約束です。
まあ、その法則を本作に適用してやると『信天翁航海録』までは『ハチポチ』に収録されているので、発表順でいくと『花散峪山人考』からの出張となるのですが、伊波が出張してきたら全部ぶちこわして話の収拾がつかなくなります。
そもそも本作、私が勝手にファンディスク的位置付け(?)みたいに思ってるだけで、公式にはファンディスクでも何でも無いただの続編(あるいは番外編)でございます。

本作のヒロイン、親切さんことキモいさんですが、作中で言及されるほどキモさがイマイチというか、Rail作品のヒロイン陣が基本強烈過ぎてキモさでは突き抜け切れていません。
気持ち悪いヒロインという字面は強烈なのに、実態が追いついていないというか。
いや、キモいのは確かにキモいんですけど、腐ってもヒロイン、エロシーンをご提供しなければならないという縛りがブレーキになったしまったかもしれません。
エロシーンが成立するための最低限ってありますから。
そもそも枠に全く収まらないRailヒロイン達となんでもありのぶっ飛んだ世界の中では、そういう王道ではない個性ってある意味持っていて当たり前というか。
『信天翁航海録』のヒロイン陣とかホント酷いし(褒め言葉)。
本人の申告通り親切さんと呼んでもらえない事以上に不幸な話だと思います。

話的には、いつもの希氏のアレです、としかもう言いようが無いような。
食材や調理法は見当がつかないけれど、何か強烈で猛烈なやつを、お腹いっぱいああすげえ食ったな、みたいな感じ。
後にも先にもこれしかないからカテゴライズ不能、とかそんな風にお茶を濁すしかないです。
当サイト的には完全敗北ですが、希氏ファンには通じて欲しいこの気持ち。

完全に妄想ですが、今になって思うとRail Softってこの星継駅シリーズありきで作られたブランドだったのかなあと感じます。
Railって単にLiarの逆綴りではなく、鉄道のレールを指していたのでは?という。
じゃあ『霞外籠逗留記』から『花散峪山人考』までは何だったの?って話になります。
これは完全に私の予想ですが、希氏が書き溜めていたテキストを発掘した旧遊演体のLiar-Softメンバーが、これゲームにしようぜ!みたいなノリで立ち上げちゃったのがRailSoftの正体なのではないかと。
『帝都飛天大作戦』以降、希氏の活動ペースが落ちてきているのはその証左では?『大迷惑大迷宮』からこっち、希氏の次回作情報もありませんし。
いろいろ事情があるとは思いますが、ミドルプライスでもロープライスでも、背景BGM等々使い回しでも構わないから、そろそろなんか作ってくれないかなあ。

Railの空気が恋しくなる一本です。

2018.10.06