大迷宮&大迷惑 -GREAT EDGES IN THE ABYSS- 感想

いよいよもってRailの方は休止状態かなあという、希氏Liar第二弾です。
『帝都飛天大作戦』の時もそうでしたが、Liarの方で作るとどうしても希氏以外のテキストが混入したり、エンジンもビジュアルノベル非対応のADV形式になってしまったりと魅力ダウンは否めません。
しかしながら原画がこめ氏ということで、『信天翁航海録』タッグなのです。
期待してしまうのは誰が責められましょうか。

さて蓋を開けてみれば、やはり希氏のテキストは縦書きで読みたいなというのが一発目で、ADVの限界を感じました。
前作と異なり希氏のテキスト比重が増えてますので、小さいウィンドウでちまちまテキストを進めるより、画面全体にどばっと表示された方がきっと快適です。
氏のテキストは本編と無関係な脇道にこそ醍醐味があるもので。
サブライターに二人クレジットされていましたが、一部エロシーンがメインですかね。
何となくテキストが普通っぽかった。
あと冒頭導入部分の雰囲気にソフトハウスキャラっぽさを感じました。
多分気のせいですけれど。

作品コンセプト的にはかなり意欲的な姿勢を感じました。
少なくともこれまでのどこか退廃的で文学崩れな希氏のイメージではなく、もっとヴィヴィットでポップな印象です。
(無駄に横文字を使いたいお年頃)ダンジョンRPGのお約束をベースにしつつも上手い事希氏の趣味を落とし込んでおります。
例えば冒険者の職業クラスごとに得手不得手のスキルがあるとか、下手をすると厨二臭い黒歴史ノートになりかねない材料を使っている一方、ジ・アビスには地下ダンジョンとはいいつつ広大な森あり海あり古代遺跡ありとやりたい放題ですし、随所に希氏的力学による「なるものはなる」みたいな何でもアリを織り交ぜてみたり、らしさはしっかり満載して不思議な折り合いをつけています。
ラストの、ここではない未知なるどこかへ、みたいな展開も、よくよく考えればRail時代からの一貫したテーマを今回も踏襲しているといえるでしょう。

そして野月まひる氏です。
好きです。
控えめに言って愛してます。
なんかお久しぶりな気がしますがお会いするのは、はていつ以来でしょうか。
ニコライト役は実に完璧すぎるキャスティングですねこれは。
希氏の台詞回しもさることながら、それに応える野月氏の技量はさすが。
このキャスティングありきでないとこれは実現しなかったでしょう。
そういえば
Liarで海原エレナ氏にお会いするのは初めてです。
この方も好きなんですよ。
なんですかこの私を喜ばすためのキャスティングは。
意外だったのはアーテの声。
スキュラの声、どこかで聞いたことあったなと記憶をたどればそうだシアだ春花だと。
で、エンディングテロップを眺めればアーテも同じ人だったという。
こういうのも出来るんですねやっぱプロはすげえ。

今回一枚画の塗りがイマイチ好みじゃありません。
アニメっぽいというか、単調で面白味に欠けるというか。
Liarでいうと『ハチポチ』なんかこんな塗りだった記憶あります。
正直綺麗な画は、Liarに対しては求めてません。
どんなに大味でも整ってなくても、他では感じられない何かを期待してしまいます。
こめ氏の原画は個性が出てて良いと思いますが。

個別ルートのラストがそれぞれどうも不完全燃焼感あると思っていたら、やはりありましたグランドルート。
希氏はしばしばこの手口を使いますので、結構読めてました。
随所にそれを匂わすところがありすぎました故。

正直パターン云々はいろんな取り方が出来てよく分かりません。
本作がダンジョンRPG自体のパロディみたいな色合いが強いので、ダンジョンに潜る一回一回がそれぞれパターンって事でしょうか。
そう取ると、ラストの全てのパターンを回収しきるってどんだけの偉業だよってなりますが、個人的にはそれが一番しっくり来ました。
まあ解釈なんて人の数だけあればそれでいいのです。
(予防線)

Liarで作り始めてからは、我らが希氏のテキストも多くの人に楽しんでいただけるような仕様になっていて喜ばしいとは思うのですが、一方でまたがっつりどっぷり一番濃いところを薄めず原液でむせ返りながら飲み干したい自分がいるのも事実です。
イメージとしては、これまでは比較的いろいろ混ぜすぎて彩度を失ったけれども奥深い色合いでした。
それが今回は原色を飛び越して蛍光っぽい色合いです。
このテイストでもう一度ビジュアルノベル形式でやっていただけたらと、あらぬ期待を感じてしまう一本でした。