星継駅年代史 感想

やった!『星継駅』の続編が出たぞと、前作をDL版で購入した情熱的なユーザーならば感じたでしょうが、あいにく私はDL版は好みません。
前作『星継駅擾乱譚』同梱の本作が、実質私の『星継駅』デビューです。

で、しっかり『擾乱譚』のほうを終わらせてからこちらを始めたのですが、なんだよオキカゼと紗流江出ないのかよというのが一発目の突っ込み。
ここで確信しましたが、やはりこのシリーズの中心にいるのは「駅」みたいです。
キャラクターなんてあくまで世界の従属物でしかない、というスタンスでしょうか。
「駅」が出るから『星継駅』シリーズなのであって、そこにキャラクターとか物語とかはあんまり関係ないのです。
例えば、『ガンダム』シリーズはガンダムの名を冠したMSが出てくるから『ガンダム』なのであって、主人公が誰であろうが、舞台が宇宙であろうが地上であろうが、戦争をしていようがいまいが、そんな事は些細な問題に過ぎないのです。
(ガンダムファンの方、暴言をお許しください)
ガンダムはさておき、「現代編」「過去編」「未来編」の3編で構成される本作、唯一全編登場を果たす瑛が、過去編にて駅と一部同化しているというくだりは実に示唆的です。

過去は永遠に失われず───
現在は不変であり───
未来は待ってはいてくれない───

このコピーが頭にこびりついて離れません。
プレイ前からなかなかの名コピーだと思っていましたが、プレイ後に改めて読むと一層趣深く感じます。

今のところ3部作の『星継駅』シリーズにおける中核的存在です。
『擾乱譚』の方は導入編的な色合いが強いですし、『疾走軌』の方はFD色のお祭り要素が強いです。

『擾乱譚』では物理的に異なる空間の対比で境界を演出していたのに対し、本作ではそれに加え時代的な対比でさらに差異を作り出しています。
いつの時代も駅は駅のままデタラメですが、登場人物たちは変化します。
あの落ち着き払ったゼルダクララとヒプノマリアに、遥か昔にはシラギクに良いようにあしらわれていた時代があった、なんてのも面白かったです。
駅という世界観は空間の対比での掘り下げでしたが、登場人物たちは時代の対比で掘り下げた形です。

やってる事は結局、駅を舞台に大騒ぎです。
いつの時代も駅に平穏など無縁なのです。
『擾乱譚』同様に、行く先々であっちこっちに脱線する希氏のテキストと、情報が明らかになればなるほどよく分からなくなっていく駅の存在が、いかにもRailといった一本でした。

2016.01.12