積みゲー賽の河原


眠れぬ羊と孤独な狼 -A Tale of Love, and Cutthroat-

躍進目覚しいクロックアップ阿久津チームの新作ですから、当然の買いです。『フラフルニテ』の勢いで『Maggot baits』を買いすっかりファンになってしまったわけですが、未だ『ユーフォリア』は未プレイ。購入を見送ったタイトルを、後になって評判が良いからと今さら買えるか!みたいな思いがあります。この度量の狭さがそのまま人生の幅を狭めているなと思ったり思わなかったり。

さて本作、こういうアウトロー系は大好物です。すごくドロドロした『龍が如く』なんていうとファンの方から怒られそうですが、歌舞伎町が舞台になる作品って案外多くないんですよねこの業界。最初に連想したのはまさかの『家族計画』でした。そういえばあっちも中国系マフィア出てきました。秋葉原だと『STEINS;GATE』とか『AKIBA'S TRIP』とか結構あるんですけれども、歌舞伎町によく足を運ぶ人とこの手のゲームをよくプレイする人って層が被らなそうです。

阿久津チームの過去作と比較し、随所にやたらカッコよさを感じたという印象があります。東儀の合理性を突き詰めた冷徹さや、御舟のいかにもな任侠臭さ、雲石穀や李の燻らせた野心と断ち切れない未練、猛風の一握の正義心、この手のアウトローに内包される要素の欲張りセールがごとき様相です。こういうVシネマじみた男臭いカッコよさの中に、今度はコミック的なカッコよさの主人公二人を放り込むからまた映えるんです。"俺"こと村木武生(ないし曾黒星)の、生きるために余計な物を全て削ぎ落とし、一方で単純に生きるだけなら全く無用な殺傷能力を備える歪さ、尖り具合はまさに二次元的フィクションじみてますし、あずみの運動性能の派手さスタイリッシュさも同様です。それは、普段はもっとフワフワした美少女をニヤニヤしながら消費しているオタク野郎が、何かの手違いでこんなタイトルを手にしてしまったのを皮肉っているようでもあります。

また、お約束のグロシーンもしっかり実装されており、ダルマ女誕生シーンは阿久津チーム過去作中でも屈指の迫力をもって描かれております。いやホント、ここまで胸が悪くなる思いは最近無かったような。抜歯から一連のシーンで、画面越しに絶望感とそれに比例したステージの熱狂、異常性がぶつかってくるような生々しさが実に強烈。
ただ、歌舞伎町に舞い戻ってきてからは義肢に武器を仕込み時速40kmの車椅子で爆走するという、若干ギャグっぽいというか、主人公同様コミック側の住人といえるかもしれません。印象的には『ブラックラグーン』のロベルタでしたが、その体でM60の二挺撃ちはさすがに無理だろうしかも両脚で、と。それ言ったら両腕の短剣も同様なのですが。いや、両手義手なのにどうやってそのカバー外したの!?とか。
最終的に俯瞰すると小夜子さん、本筋の事件の発端であり、その裏に潜む事件の被害者であり、グロシーン担当であり、かつ東儀のキャラクターを深掘りするためのヒロインであり、八面六臂の大活躍ではあるのですが、ここまで来るともう登場人物というかもはや万能舞台装置に近いかもしれません。

強烈だったといえば恩田のおっさんなわけですけど、どうして一番狂ってしまったのがこの小汚いおっさんだったのか。あれだけカッコええと思っていた面々が、この小汚いおっさんの直接間接問わない働きでばったばったと死んでいくのは、一抹の物寂しさがありました。この手の「男のカッコよさ」を締めくくるのは死に様なのに、おいおいこんなおっさんでいいのかよ……みたいな。まあ裏を返せばそんな風に呆気なく死んでいくっていうのもアウトロー系の一側面なのかなあ、とも思いますが。

BlackCycやNitro+が派手に動かなくなり、本格的なハードボイルドやアウトロー、ダーク系路線の担い手が乏しくなった昨今ではありますが、そこでしっかりニッチを獲得し確固たる地位を築きつつあるように感じる阿久津チームです。
一人のユーザーとして、切なる願いはとにかく面白い物に触れたい、というところに尽きます。そんな中で、本作のようにプロデューサーがブランド力を担保するという体制は非常にありがたい事です。あらゆる分野に天才がいて、この業界にも天才的なクリエイターは何人もいました。しかし彼らの独力で年に2本作れるかといえばそれは不可能なのです。ましてやそれをコンスタントに何年も出来るかといえばとてもとても。それに最近は特に、ある程度売れたらラノベやらアニメやらどっか他媒体にいつの間にか消えてしまいますし。だからプロデューサーなのです。確かに単発では天才渾身の一発に及ばないかもしれませんが、安定した供給能力という面で見れば比較になりません。従来、私は前者をこそ尊んでおりました。しかしこうもみんなラノベに行ってしまう現実に直面すれば、そりゃ宗旨替えもしましょうよ。

余談が長くなりました。フルプライスタイトルとしてみれば決して長いとはいえないプレイ時間でしたが、その分強烈に濃い時間でした。これはボリューム不足が不足しているのではなく、余計な物を削って洗練されていると見るべきです。作品の密度×プレイ時間で計算すれば、そこら凡百のフルプライスより余程中身は多いと言えるのではないでしょうか。ボリューム=テキスト容量と考えるのは業界の悪習であり、ユーザー側にも責任があります。キロバイト信徒は今一度、そのあたり考え直す契機にして欲しい一本です。

2018.04.26