雪鬼屋温泉記 感想

温泉旅館経営SLGということで、ついに葵屋回帰かと思いきや別の旅館でした。
まあ私も「葵屋まっしぐら」をプレイしたことはもちろん、そもそも現品を見たことすらありません。
ですから葵屋だろうと雪鬼屋だろうと特に問題はないのです。
もちろん今回も、作中に葵屋は登場します。

さて肝心の中身のほうは、『グリンスヴァールの森の中』と『忍流』を足して三で割って+αみたいな感じです。
予算と相談しながら建物を増やしていきつつ、旅館のスタッフを育てていくわけですが、この建物増やすのはグリンスヴァール学園のノリで、旅館スタッフの周回引継ぎが忍流です。
忍流にも建物ありましたが、あれは全部大きさ同じで、しかも敷地拡大ありませんでした。
大きさの兼ね合い、条件を満たしての新たな建物の開放、このあたりがまさにグリンスヴァールです。
これに新たな要素として、建物同士の効果範囲というのがありまして、お客さんの移動範囲が建物五個分、建物自体の効果範囲が三個分となっています。
これがグリンスヴァール以上に計画的な敷地利用をプレイヤーに要求します。
下手に建てると、壊して新たな建物を設置する時にすごく困ります。
また旅館スタッフの周回引継ぎなのですが、これ非常に重要です。
レベル上限は10と低めなのですが、スタッフ一人の一日あたりのお客処理能力がレベル+1なので、特に終盤はレベルの高いスタッフをそろえておかないとお客をさばききれずに非難轟々という危機に。
当然、レベルが上がれば人件費も上がります。
ですが、上がれば上がるほどにお客処理能力単価は下がっていくので、レベル1五人よりもレベル10一人の方がお得です。
レベル上げてどんどんこき使いましょう。

周回プレイに関してですが、ソフトハウスキャラの作品は周回プレイが充実しているほど出来がいいという印象があります。
正確には周回こなさないとルートが開放されない作品ですね。
攻略できないキャラがいるからこそ必死になって周回こなしていくんです。
未攻略キャラのエンドを見てやろうという欲望が原動力になり、一度クリアしてももう一周、さらにもう一周とズブズブのめり込んでしまいます。
『DAISOUNAN』と『忍流』がイマイチパッとしなかったのは、見ようと思えばほとんどのキャラのエンディングを同時に見ることが出来たこと、二週目三週目の新モード開放がなかったことに原因があるように私は考えています。
そう考えると『王賊』や『BUNNYBLACK』のヒットが説明できないのですが、そこはもう純粋にゲーム自体の面白さというほかありません。
両者ともそもそも周回を前提としていませんし。
前置きが長くなりましたが、本作では周回を重ねるごとにヒロインの攻略モードが解放されていきます。
フリーモードを開放するまでに最低でも八周必要です。
しかも毎回初期施設配置が違いますし、景気も変動します。
この時点で私は、今回はすごいの来たなと思いましたが、そうやって期待してしまった分も含めてちょっと肩透かしを食らった気分です。
というのも、ヒロインを攻略しているという実感がほぼないのです。
このコマンドを中心に進行していけば、このパラメータを伸ばせば、というルート突入への工夫というか一種の縛りがゲームに変化を与え、それによってまた深みにはまっていくというのがいつもの良く出来たソフトハウスキャラのパターンだったのですが、本作では売り上げさえ確保しておけば勝手にイベントが進んでいってしまい、結局毎回やることが同じになってしまっています。
店を繁盛させていくその傍らで進行していくシナリオが数種類あるだけで、結局やっているのは毎回同じような施設設置や投資だけなのです。
フリーモードまでに八周する負荷を考えてか、本作では今までに多かった一週間に一度の行動選択ではなく、一ヶ月に一度の方針決定になっています。
従来の四ターン分を一気に進めるってことです。
確かに楽ですが、例えばここで主人公が毎週どこかの施設を選択して視察し、それによってイベントを発生させていくことでヒロインを攻略していくというシステムにすれば、熱中度もだいぶ変わっていたことでしょう。

しかしながら本作においても、いつもの思わずクスリとくるようなショートイベントは健在ですし、本気で規制問題についてメッセージを発信していく姿勢には感心します。
おまけでのぶっちゃけた話も充実していますし、いろいろ文句も書き連ねましたが、ユーザーのことを考えてくれているんだなという熱意はしっかり伝わっています。
ちょっとくらい不満があっても私がここのファンをやめられない理由はそのあたりでしょうね。
今回は次回作への投資という位置づけで、なんだかんだいっても楽しめましたしまあ良しとしましょう。