積みゲー賽の河原


凍京NECRO

起動していきなりエラーかと勘違いしました。ウィンドウ表示ならすぐ演出だと気づけたかもしれませんが、いきなりフルスクリーンでソースコードっぽい文字列だけ走り出しますから、これは焦ります。「凍京都」のAAに気づく余裕すらありません。

オープニングムービーも凝ってます。ただ、オープニングムービーの出来と本編の出来には何の関係も無いので、個人的には評価ポイントとはしません。むしろどうしてその労力を本編のクオリティアップに割けなかったのだ、なんてケースのほうが多いもんですから。そしてそこいらのメーカーとニトロを同列に考えた私が愚かでした。
いやまさか、戦闘シーンも全部3Dでこれだけ作りこんでくるなんて全く予想していません。主観でFPS風味な銃撃戦とかなら『続・殺戮のジャンゴ』なんかで記憶にありますが、これマジで全部動いてるんですもん。近接銃術はこれ完全にガン=カタですね。『リベリオン』は私的に完全にネタ扱いですが、3Dアニメでやるとすげえ映えるから不思議です。蜜魅のアドバンスド・タイ捨流剣術も中々飛ばしていて好みです。作中のアドタイ流という略がツボ。
表現のアプローチ的に『魔法使いの夜』を対比として挙げたいです。あれはFLASHアニメ的な考え方でADVの限界に挑んでいましたが、本作は完全に3Dの動画を挿入しています。以前からニトロ作品は結構3Dアニメを演出の一部として取り込んでいましたが、この規模となると完全にレベルが異なります。共にADVの形式を取りながらいかにして画面を動かすか、という命題への取り組みですが、ここまでアプローチが間逆だと面白いです。もちろん、どちらが優れているとかそういう話ではなく。

しかしながら、ここまでクオリティの高いSFは、アダルトPCゲームではちょっと記憶に無いです。世界観に浸っているだけで気持ち良いレベルです。さすがはニトロが時間かけて作りこんだだけはあります。惜しむらくは、そのクオリティの高さが敷居を挙げてしまっている点でしょうか。今日日ハードなSFはあまり流行らないのです、残念ながら多分。加えてかなりエグイ描写が多々ありますので、いっそうその傾向は強いかもしれません。意識ある状態で会話しながら頭蓋オープンなんて『ハンニバル』以来の衝撃でした。その一方で、既存ニトロファンの琴線にはガンガン響くのではないかと思います。このやっちまう具合大好きです。

登場人物たちが軒並みイカレてるというのも、ニトロのお約束といえばお約束でしょうか。ここまで性的倒錯者を集めた作品も、抜きゲー含めて無かったように思います。一番業が深かったのが牙野原中将だったというのも、もはや笑えないレベルです。血は争えねえ……。
主人公二人の構成についても、非常に上手く調理したと思います。また、二人の生死如何でのルート分岐は、これが出来るのはニトロだけだろうな、なんて印象です。結局主要キャラクターは全員どこかしらでぐちゃぐちゃになって死亡しますし。特にメインヒロイン然として描かれるイリアが、どうやっても早雲とセットでは生き残らないあたり、地味ですが強烈です。それでいてエンディングに悲壮感やもの悲しさがあるかといえばそうでもなく、背筋にぞわぞわっとくる高揚感は少なくともバッドエンドのそれではありません。人の死を乗り越えて、それでも厳しい世界を生きていくという希望が鮮やかに描かれています。つい近頃までそう思っておりました。だからこそ今の今まで感想放置していたのですが。
先日書店での事、本作がコミカライズされているのを発見したのですが、やたら絵柄が濃い。よくよく見れば作画が叶精作でして、昔『ダミー・オスカー』に散々お世話になった記憶が蘇ります。この衝撃的なやってのけるとはさすがニトロ、変態的です。で、あまりにショックだったので久しぶりにソフトを起動してみたところ、トップ画面に見覚えのない選択肢が出ておりまして、私は1年半の期間を経てTRUEルートの存在を発見したわけです。ちゃんとみんな生きてるルートありました。彼らの前の世代は皆逝ってしまいましたが、これも新しい世代が新しい世界を生きていくのだという時代の転換を感じられて良いかと思います。

控え目に言って傑作です。スタッフも素材も惜しみなく投入し、それらがしっかり組み合って形になっています。採算取れてるのか心配なレベルです。実際冗談ではなく、キャラが多いから立ち画も多いですし背景も同様です。戦闘シーンには惜しみなく3Dアニメを使いBGMも53曲。おまけページで見ればスタッフも結構な人数が動員されています。テキストも多く、当然台詞数もそれに比例するためそこにも金がかかります。採算分岐は一体何本に設定している事やら。そして決して万人受けするわけではないニトロの芸風なので……というわけです。いや、ユーザー側からすればこんなに嬉しい事もないので心配するのも余計なお世話なんでしょうけど。もうニトロ様には一生ついていきますと誓わざるを得ない一本でした。

2017.09.05