水スペ 川野口ノブ探検隊〜これが秘境だ!人跡未踏!立ちふさがる商店街!八鏡大学に隠された地球最大の謎を追え!! 感想

難解さ、というのはLiar-softのひとつの魅力であります。
それは例えば『Forest』のような作品自体の意図するテーマ・全容の理解という意味である場合もありますし、本作のようにいかなる経緯でこんなものが世に出てしまったのか、という意味でもあります。
メインストリームから全力のスピンアウトが許される、そんなLiar-softが好きです。
そういう方面のタイトルは当サイトでも積極的に取り上げているところ(『サルバとーれ!』とか『どすこい女雪相撲』とか!)です。
本作の掲載が遅くなった理由は、昔やった記憶だけで書くにはあまりにうろ覚えで、感想を書くためにわざわざ再プレイするのもシャクだった、みたいな複雑乙女心が一つと、アホみたいに(実際アホなんですけど)長いタイトルがもう一つ。
あんまり長いタイトルを一覧に掲載すると乱れるんですよ、サイトの表示が。
そのあたりをCSSの調整でようやく乗り越えられたので、じゃあ今一度プレイして感想載せてみようか、と。
DL版も買いなおしたことですし!

さて本作、タイトルからしてもうふざけてます。
全力で川口浩探検隊をパロっています。
タイトルからして『水スぺ』ですから。
……と、浅学な私は思っておりました。
後に聞いた話によると、本作の原形としてより近いのは『とっても少年探検隊』との事で、Wikipediaの記述を見るに、確かにそうらしい雰囲気。
『川口浩探検隊』をパロった『とっても少年探検隊』をさらにパロってくるという、まあ正気じゃないですよね(誉め言葉)。
他にもパロディ満載なのですが、また元ネタが独自路線極まります。
お約束のパロディネタ、みたいなのあるじゃないですか。
とりあえずジョジョネタやっときゃお前ら喜ぶんだろ? みたいな。
そういうのを嘲笑うかのごとき、これはもはやある種の硬派です。
映画とか小説とか特撮とかからゴリゴリかき集めてきます。
しかも男らしく、伏字は一切使いません。
本筋の話題から大脱線して、探検部員たちが平然と『BLEACH』の好きなキャラの話しだすあたり、格の違いを見せつけます。

そんな有様ですから本作、やはり正気のおつむでは難解を極めます。
荒唐無稽さを煮詰めて捏ねて、なんとかかんとかアプリケーションの形に冷やして固めたようなものなので、最初から意味なんてないんだろうな、なんてのは言わないお約束ですけれども。
ちょっとお酒でも飲みながら深くは考えずに楽しむのが吉かと思われます。
でないと「野生化した男色趣味の野良學天則を女装した主人公が色仕掛けで誘い出す罠」とか、シュールすぎて理解がついていけません。
不勉強な私などはそもそもこの作品で、過去に「學天則」なる東洋初のロボットが制作されていた、なんて歴史を初めて知ったのです。
それにどんだけ乗っけてくるんだよ、と。
一事が万事そんな塩梅で、ここまでぶっとんでしまうと、もはや大学敷地内が異界化してるとか些末な問題すぎます。
基本的にはどこまでも不条理系ギャグマンガの世界なのです。

また本作、実にLiarらしくどうしようもないゲームパートを備えています。
……ゲーム、なのかなあ。
これが最高に無法地帯。
概要としては、ゲームブック風の進行で「イベント→選択肢→結果」を2コマオチで延々繰り返しながら探検を進行していく感じです。
イベントの結果に応じてポイントが手に入り、その結果で報道機関が査定をし収入になります。
そしてこのイベントが荒唐無稽の極みでして。
フリもオチも文字数的にTwitterくらいの内容なので、ワケのわからない問いにワケのわからない不条理回答が無限に続くカオスワールドが展開されます。
一応、探検隊員の人数と食料と可搬重量みたいな数字いじりの要素もありますが、基本犬ぞり入手すればすべてのバランスが崩壊するので無視してかまいません。
むしろいかにして狙ったポイントを溜めるかの方が圧倒的に面倒くさいです。
ポイントは「エキサイティング」「ファンタスティック」「ポルノ」の三要素。
イベントも選択肢も結果も、徹頭徹尾不条理ギャグなので、何を選んだらどのポイントが入るか、全く予測できません。
にもかかわらず、特定エロシーンに入るフラグが「エキサイティング」と「ポルノ」だったりして、もうイベント覚えるしかないじゃん……っていう。

これまでの内容からすれば、主要キャラの声がほぼ兼任とか、そういうのすら些細な問題にしか思えません。
同じ声優のキャラ同士の掛け合いとか胸が熱くなります。
立ち絵も無いしね!
まあ、Liar-softにヒロインは求めてないのでなんらの問題もございませぬ。

最近はこういうLiar-softが楽しめていませんでした。
『ガチゆるヒーローバトル~姫巫女銀河』くらいが最後でしょうか。
それですら、イマイチ突き抜け切らない中途半端な感じでしたし。
いろいろと難しいのだとは思いますが、こういうLiarをこそ、愛し続けていきたいと思える一本でした。

2019.12.17