しょぱん! 感想

半額セールだからとりあえず買っちゃう例の病気です。
DL版の積みゲーって超怖いです。
気が付いたら積んでるというか、買った瞬間満足してしまって、え、これいつ買ったん? みたいなの多数。
いつか絶対DLsiteとDMMで重複買いします。

というわけで、私のDLsiteライブラリに埋もれかけていたのが本作です。
蓋を開ければ実に我らが嘘屋らしいお仕事。
何故lightのようなブランドが、こんな怪しいライター(誉め言葉)と手を組んだのかは全くの謎です。
わりと尖った芸風の両者が出会って、制御不能なテイストが明後日の方向にスピンアウトせず、むしろマイルドなくらいに着地しているあたり、何か通じるところがあったのかもしれません。
あるいはクセの強い郷土料理と地酒が妙に合う、みたいな?

DL版という事で廉価版かな?なんて思っていましたが、そもそもロープライスタイトルのようです。
この頃はアリスソフトをはじめ、フルプライスでの制作がメインなブランドがロープライス帯でいろいろ模索をしていて面白いです。
そういう動きがよくある話になったここ数年は、逆にアリスがそういうの出さなくなったのがらしいっちゃらしいです。
他が追従しだした時にはすでに他の事をやりだしている、そんなフロンティアスピリッツが素敵。
あるいは同価格帯で廉価版を拡充させているから、という向きもあるかもしれませんが。

ロープライス帯という事で、嘘屋氏の言葉を借りれば決して「助走のある」作品ではないものの、氏のテイストはふんだんに散りばめられています。
ストーリー自体は幼馴染の、なまじ距離が近いもんだからそれ以上にも以下にもなれない二人がどうしましょう? っていうよくあるやつです。
そこで繰り広げられる意地の張り合いが実に嘘屋氏らしいですし、妙に俺様感出してくる主人公がドカ盛メニューで餌付けされてしまうのもお約束、あとはヒロインの変な発情ポイントとかもまさに。
地の文とセリフの使い分けなんかも、らしさといえばらしさでしょうか。
キャラ同士の掛け合いはテキストウィンドウでほぼセリフのみ、地の文は固めて一気にビジュアルノベルっぽく表示することで非常にメリハリというか、進行に緩急があって良いです。
これは他ブランドの作品でも嘘屋氏がちょくちょく使っている手口です。
このあたり、まるっとそのまま『さかしき人にみるこころ』に継承されていて、かつあちらは同じ価格帯でありながらしっかり「助走のある」作品に仕上げてますから、それに対する試金石という位置付けで、本作の寄与というのは非常に大きかったのではないかと思います。
そう考えると本作の見え方もまた変わってくるのが面白いです。
幼馴染という題材も、価格帯の予算的に「助走」がつけられないから、というか「助走」が不要なお約束の展開にあえて乗っかったのでは? とか、そのわりに出番の少ないモブに立ち絵とボイスよく付けたなとか、そういう推察がそれ自体楽しいです。

ただし、嘘屋氏の思惑や当時のロープライスの流れ、lightの模索なんかについての推察を抜きに、純粋に作品だけを見ると、特に盛り上がりがあるわけでなく、カタストロフがあるわけでなく、正直展開的に楽しみどころが乏しいのは事実です。
しいて言えば、先に行為があって、お互いの気持ちやプレイヤーの理解がそこに追いついていくっていう構図に捻りが効いていて良いな、という点くらいでしょうか。
ただ和姦系のエロシーンを並べて、間にヤマもオチもない日常シーンをちょいちょい挟むだけなら、Nornあたりが毎月ベースでも作れてしまうわけなので、lightと嘘屋が組んで作る以上はそれくらいの爪痕は残していただいてようやく及第点ラインです、なんてのは言い過ぎでしょうか? でもそれがブランドって言葉が本来持つべき重みってもんですよ。

何をどうやっても『さかしき人にみるこころ』の影がちらつきます。
私としてはそれだけ印象深い作品だったのです。
阪神ファンがいまだにバースの話してる、みたいな。
インスタントに嘘屋テイストを摂取できて、かつ試行錯誤の跡が楽しめる、特定層狙い撃ちの一本でした。

■ 追記
『しょぱん!』ってもしかして「ショートパンツ→ショーパン→しょぱん!」なのでしょうか?
まさかそんな、安直な……。
確かにショートパンツ成分多めでしたが。
とはいえ、BGMが全部ショパンの楽曲のアレンジなんですよ!とか言われても困りますけれども……。

2019.08.30