巣作りドラゴン 感想

アダルトPCゲーム界におけるプレミアソフトの代名詞として名高い本作です。
リリースから10年以上も価格を維持し続けたので、店頭で見かけた事ある方も多いかと思います。
鶏卵もびっくりな物価の優等生ぶりです。
これだけプレミア価格で安定していると、購入後そのまま高値で売れるので、案外普通に新品を買うのと同じくらいの出費で楽しむ事ができていました。
私もその口です。
基本的に買ったものは売らない主義ですが、数少ない例外です。
今回のDL版販売開始で改めて手に入れ懐かしい気持ちでいっぱいですが、中古価格が崩れ売り抜けられなかった方はご愁傷様です。

周回プレイのゲームバランスが秀逸です。
なんとかかんとかユメエンドにたどり着いて周回を重ね、ユニットのレベルが上がるにつれてフェイ、ルクルと攻略できるようになっていくスピードの丁度良さが、何故かのめり込んでしまう要因の一つである事は間違いありません。
少し頑張れば手の届くところにご褒美があると、多少しんどくても案外頑張ってしまうのが人間ですが、その「少し」の加減が憎らしいくらいに絶妙なのです。

この何故か分からないけれど1週間ほど気が狂ったようにのめり込んでしまう仕様は、歴代キャラ作品中でも屈指のレベルです。
この1週間という期間がポイントで、大抵の人は2~3時間でゲームの大まかな流れを理解し、その翌日はコツを掴み始めます。
そして3~4日もあれば「必殺無効」の重要さに気付き、デフォルトでこのスキルを持つハラミボディを周回しつつ育て戦力を安定させるという戦術に落ち着きます。
この間に漆黒騎士に「必殺無効」を覚えさせる快感に目覚めた方はかなり勘が鋭い方だといえるでしょう。
そしてその後は巣のレイアウト以外特に戦術的な発展もなく、ただただイベント回収をする作業となり、1週間が経つころには何故あんな必死にハラミボディを育てていたのか理解ができなくなるというわけです。
この1週間の時間配分は芸術的ですらあると感じます。

ヒロイン陣は犯せば落ちる安心のソフトハウスキャラ仕様です。
ルクルを見ていると、そういえばツンデレなんてワードが流行っていた時代だったなと懐かしさを感じるとともに、もうそんなに前の話なのかと恐怖を感じます。
今になって思えば、ツンデレが良いというよりは、段々とヒロインがこちらへなびいているのが感じられるのが良いんだよなあとしみじみ。

クー役の松永雪希氏は私的に高得点です。
この人の声でご主人様とか言われると『パルフェ』の玲愛がフラッシュバックして悶絶モノのエライ事に。
まあ時系列的には本作の方がリリース先なんですけれども。

グラフィックだ音声だ楽曲だと、ゲームを作るにあたって使おうと思えばいくらでも金は使えます。
しかしながら、いくら金を積んでも買えないのがゲームの根っこ部分の面白さです。
開発にうん百億円かけた超美麗グラフィックが売りの最新機種タイトルに30分で飽きて、結局暇つぶしにテトリスやってるとかよくあります。
本作のその類かと。
すごいシンプルなのに、何故か猛烈に引き込まれてしまう。
ソフトハウスキャラの評価を爆上げしたタイトルという事と、やっぱりゲームの面白さは開発費だけじゃ語れないんだというユーザー魂的に、押さえておきたい一本です。

2016.12.11