少女たちは荒野を目指す 感想

題材的には本来間違いなく回避するやつでしたが、如何せんシナリオ:田中ロミオの誘惑には抗いがたく、購入と相成りました。『コミックマスターJ』とか『吼えろペン』くらいぶっ飛んでくれると面白いのですが、中途半端な内輪ネタに終始されてしまうとすごく萎えます。ちなみに、内容はタイトルの元ネタとあんまり関係ないです。読んだのはかなり昔なので相当うろ覚えではありますが。

さて本編。よくよく考えてみたら私ももう10年以上もアダルトPCゲームプレイしております。途中で大学のサークルでメーカースタッフに会ったり、バイトで売る側に回ったりいろいろありました。今さら私の知らない業界の実態とか裏側とか、求めるのはなんか違うかなあと。ですから、製作現場ってそうなってたんだ!とか、業界の実態ってそんななんだ!なんて感動はありませんでした。そこを要求するのも酷かと思います。ましてや作ってるのは、対象ユーザー層の最大公約数の読みが上手いみなとそふとですから、尚更です。

部活でアダルトゲームを作る、というのは私の許せるライン的にはかなりきわどいところです。本来ならもっと別の然るべきコミュニティで描けよ、無理矢理部活で取り上げるテーマじゃないだろ、となりますが、学園生が作るという話題性で売るという説明があったのでギリギリ許容します。業界事情に精通した敏腕プロデューサーがいるというのも一定の説得力を感じました。これが単に、とりあえず変な部活ぶち込んで、完全な素人集団にゼロから手探りでやらせよう、なんて流れだったらもう放り出してます、間違いなく。

しかしながら、どうして全年齢向けなんでしょうか。いや別に、是が非でもこの作品でエロシーンが見たいとかそういう意図ではなく、商売上の戦略的な話です。企画のタカヒロ氏は、これを通じてアダルトPCソフトに興味を持ってもらえれば、なんて発言をしていたようですが、全年齢だからこれなら買えるぜ!っていう18歳未満のユーザーはどれほどいるのでしょうか。まあそれでは話が進まないので、仮に100歩譲ってそんなユーザーがいたとしましょう。そしてさらに100歩譲ってその18歳未満の彼ないし彼女がアダルトPCゲームに興味を持ったとして、18歳未満ですから結局エロいのはプレイできないじゃありませんか。手にしてはいけないものに興味を持ってどうしろというのでしょう。なんか言動のちぐはぐさを感じます。

何故私がこんなに噛み付くかというと、主人公一派が所属する六波羅の製作方針、というか黒田女史の製作方針が私の趣味と真反対だからです。この方針ってもしかしてみなとそふとそのまんまですか?リスクを可能な限り抑えて消費者ニーズの最大公約数を狙いにいくってまさにそんな印象です。黒田女史が全身黒づくめなのはタカヒロ氏を模しているから?答えは闇の中です。
彼らが作る『朝森さん家の24時』が発売予定にラインナップされていたら間違いなくスルーです。視界にすら入らないかもしれません。作中で垣間見える内容も別段興味を引く内容ではありませんし。作品公式サイトを作る、なんてプロモーションもやってはいますが、手法的に目新しさは無いです。ヒロイン紹介のみのネタサイトとはいえ、ロープライスで3GBのデータサイズは驚きですが。

ただ、田中ロミオ氏の軽妙なテキストは笑いどころ多く楽しめました。本作の良心とも言えます。安東父が個人的には一番のヒットでした。あの魚群探知機はズルいです。次点で業界の神こと須丸玄麻。そりゃもう間違いなく神でしょうとも。名前は悪魔合体ですが、キャラは奈須きのこぽいですね。リメイクするなら全部書き直すことになるからやらない、発言をしれっとしましたが、割と洒落になりません。『魔法使いの夜』とか『月姫』とか。特に後者は発表から何年経ちましたっけ?
良心といえば、本作のサスペンデットは非常に便利なシステムだと感じました。これは業界的にもっと普及させるべき機能だと思います。

正直、あまり良いお買い物だったとは思いません。価格には寛容な方だと自負していますが、さすがに本作で9,800円は無いんじゃないかという印象です。『朝森さん家の24時』みたいに3,800円とは言いませんが、5,800~6,800円が妥当なラインではないでしょうか。販売手法的にも、先行して第一部のみアニメを放送し個別ルートの第二部はゲーム版でという、テレビ放送⇒完結は劇場版で、みたいな一昔前のテレビドラマのアレですから、なおさら高すぎる価格設定はどうかと。まあ、アニメ版見てないですけれども。
楽屋オチという最悪の事態は避けられただけ上等な気がしないでもありません。しかしオチ自体結構尻切れ感があっただけに、もうちょっと何とか出来なかったのかなあという気持ちが強い一本でした。

2016.05.15