空色イノセント 感想

井上啓二氏と飛行機という事で購入しました。概要を見るにアダルトPCゲーム版『グース』といった印象でしたが、作中でもそのような旨の言及がありました。この手の映画作品のオマージュはしばしばありますが、得てして良作率が高い印象があります。まあ、作中で明言しちゃってる時点でオマージュなのかどうかっていう議論はありますけれども。 『グース』の構成要素を、

①渡り鳥の卵を保護する
②親と刷り込まれたからには育てる
③一緒にウルトラ・ライトプレーンで飛ぶ

という3点に集約・抽出し、学園萌え系のフォーマットに上手いこと落とし込んでいます。この加工が実に過不足なくスマートです。主人公がガァコ達と飛ぶ理由についても、各ヒロインのルートごとにしっかり消化し反映されています。恐らくですが、作品コンセプトに対してヒロイン達の設定が後付になっているのではないかと思います。学園モノでガァコたちとウルトラ・ライトプレーンで飛ぶとしたら、関係できる立場ってどんなものだろう、というスタートで生物部・映画部・飛行機部というステークホルダーが出てきて、それぞれの理由が設定されたと考えた方が自然です。しっかり設定同士が関連できています。同じコミュニティ内にヒロインを集めてしまうとルートごとで話の差別化がグダグダになりがちですが、テーマに対してそれぞれの切り口で描く事で上手く回避しています。このあたりの手腕はさすが井上氏といったところでしょう。 まひるのツナギ姿が実に良いです。この手の色気のない服装が大好物です。実に私好みです。また、普段であれば亜美のようなタイプは敬遠することが多いのですが、この娘は不思議と大丈夫でした。女の子女の子してはいるものの、イラっとくるあざとさではないです。もちろん完全なる主観ですけれども。
しかしながら、やはり一番グッときたのは華子です。この手の女らしくない娘に弱いです。男友達みたいな距離感からルート突入後に時折見せる女の子っぽさというのは、幕ノ内一歩のステップインからのガゼルパンチ並に効きます。今のところ2016年暫定王者です。 企画段階でかなり完成度が高いと思われる本作ですが、ひかりのポジションだけが解せません。はっきり言っていなくても問題ないキャラです。ガァコたちと編隊飛行をして映像作品化するという本プロジェクトにおいて、彼女の役割はなんだったのか。せいぜいがガァコたちの世話を手伝った程度ではありませんか。物語冒頭から賑やかし役として参加していたピヨコの方が、下手したら作品に占めるウェイト大きいかもしれません。強いて言うならば、CS版で追加された新ヒロインのような、そんな異物感です。どうにも蛇足感が拭いきれません。
しかし、もう一歩下がって、『グース』のオマージュとして本作を考え直すと別の見方が出てきます。先に本作は『グース』の要素を3つに集約・抽出したと述べました。そこにもう一つ

④母を失って田舎に移り住んだ少女

という要素を持ってくるとガラッと話が変わります。そう、まさにエイミーの役どころです。『グース』のオマージュをする以上、これが外せないピースだったのか、単にヒロインの人数が足りなかったための水増しなのか。もしくは作中で言及されているように、原作小説である『ファザー・グース』はおっさんの話なので、あくまで映画『グース』のオマージュである事の差別化かもしれません。いずれにせよ判断はしかねますが。『アルテミスブルー』のネタをつっこむ程度には遊び心があるようなので、ありえないこともないかなあという妄言です。 井上氏が原案にとどまる事でどうかと思いましたが、氏の語りたがりなところが緩和されつつ、企画力は発揮されるという理想的な結果となりました。ライターの氏も読み口の軽いテキストで、プロットの良さを活かせています。惜しむらくはルート突入⇒即挿入のいきなり感くらいでしょうか。結構な唐突感ありました。どのルートもそこにワンクッションあればもっと隙の無い仕上がりになったと思います。まあ、手順を踏むために共通パートから分岐を挟んで整合性がグダグダになるのを避けるという意味では詰め込まざるを得なかったのでしょうけれども。そのあたり鑑みても、やはり作品コンセプトありきの製作なんだろうな、という印象です。良作に仕上げるために、しっかりと手順を踏んで丁寧に作られた、優等生になるべくしてなった一本でした。

2016.03.08