LIKE×LOVE ~十津川 光~ 感想

これの続編の『LIKE×LOVE ~色川 鈴音~』がとても良かったので、その前作のこいつもこりゃ期待ができるじゃろうとプレイしてみたわけです。
続編購入時にちゃっかりこっちも買ってあるあたり、我ながらナイスです。
セールで安くなってるいつかプレイしそうなやつがあったらとりあえず買っておく。
DL版を楽しむ初歩の初歩ですのでぜひ覚えて帰ってください。


大変結構なグラフィック

さて本作。
こっちにも鈴音さんがご出演なさっておりまして、なんだよ最初から2本セットで作る気満々だったんじゃないのっていう。
原画の庄司2号氏が結構有名な人みたいなんで、もしかすると2本セットで作るから! とか言って口説き落としてきたのかも、なんて邪推です。
そういう工夫しないと生き残れない業界ですもの。

そんな裏話があったかどうかは知ったこっちゃありませんが、やはりこのグラフィックは実に良いです。
キャラ萌え系でこういう頭身、肉感で作ってくれるところホント少ない印象です。
人気どころのゆずとかサガプラとかのあの雰囲気のCG苦手です。
あれくらいの頭身だと、私としては下手するとSDキャラと同列くらいの感覚になっちゃうんですよね。
こういうゲームのヒロインって認識じゃなくなってしまうというか。


キャラクターデザインについて

一見社交的だけれどその関係に自信はイマイチだった光と、他人に合わせてまで表面上の仲の良さを繕う必要なんてないという鈴音。
より深く相手との関係を信じてみて強くなった光と、他人と関わってみて弱くもなった鈴音。
ストーリーと合わせてかなり対照的にデザインされている印象です。
このあたりもやっぱり2本セットの企画なんだなと感じます。

しかし光は良いキャラしてますね。
変態的な行為にもノリノリで付き合ってくれる彼女とか最高じゃないですか。
しかも、ノリノリで付き合ってくれてかつちらっと恥じらいも見えてくれるという、そのバランスが極めて絶妙でした。
相反する要素を適切なバランスで一つにまとめると破壊力が数倍に跳ね上がるというのは、すでにいくつも事例が報告されています。
ストーリーの中で描かれるこういう魅力は属性みたいなカテゴライズが難しく、キャラ紹介などで分かりやすく提示されないので、出会えるととても幸せな気持ちになれます。
実に良いです。


やたら多い選択肢について

鈴音さんの時もそうでしたが、このシリーズのこのシステム、実はかなり気に入っています。
自分の選択でヒロインが喜んでくれているという実感がすごく良いです。
選択に応じてヒロインがリアクションをくれる作品はたくさんあるでしょうが、本作はそれが徹底しています。
ただヒロインが喜ぶリアクションを見るがためのシステム、ありそうでなかったとても良いものです。

また副次的な効果として、相手が何を好んで何が嫌なのか、理解の進みが段違いで早くなります。
この子ならどっちだろなという予想と答え合わせがひたすら繰り返されるわけですから。
これによってキャラ付けのための大袈裟な言動が減るのもありがたいです。
露骨すぎる説明セリフとかもそうですが、ああいうあからさまな言動が続くと「うへぇ…」ってなりません?


主人公の立ち位置について

上から目線で賢しらに説教かますわけでなく、どうしようどうしようでもでもだってのウジウジ君というわけでなく、無難な主人公です。
中学時に何かあったようですが、そこ掘り下げてなんかやってしまうと主人公の成長物語の側面が強くなってしまいます。
匂わせ程度にとどめるのは好判断でしょう。
これは十津川光を楽しむだけの作品であるからにして。

鈴音の時もそうでしたが、突飛なアイデアと行動力で状況を打開するヒーローではなく、寄り添っていいタイミングで背中を押してやるパートナーみたいなスタンスが心地よいです。
上でも下でもなく、真横からの対等な視点なんですよね。
それによってもたらされる劇的でも突飛でもない、地に足着いた等身大の行く末がじんわり沁みます。


おわりに

鈴音さんに引き続き、このシリーズはやはりクオリティが高いです。
この布陣で次も作ってほしいのですが、そういうこと言うと絶対に出ないのが当サイトのジンクスでして、なんだかなぁ……。
というか、去年の8月からRootnukoのHP更新無いんですが。

良いものは黙っていても売れる、なんてピュアなこと言うつもりはありませんが、私にとっていいものが売れていないと次、またその次が出てこなくなるんですよね。
そういう意味でも、もっと広く手に取られてほしい一本です。


2021.10.29