LIKE×LOVE ~色川 鈴音~ 感想

Rootnukoといえば、処女作の『id [イド] - Rebirth Session -』を未開封で放置していたはず。
まだ昔、原画買いとかやってた頃の話です。
多分『とっぱら』の影を追っていたのかと思います。
失礼な話ですが、まさかここまで生き延びるとはね……。
ただ今回、原画はアマクラ氏ではないようで、だからこそセールで私の目に留まり、衝動買いの勢いそのままにプレイっていうのがなかなか皮肉でいい感じ。


ハイクオリティなロープラキャラゲー

さて本作、ロープラのキャラ萌え系ですが実に出来が良いです。
このジャンルのロープラ帯だと、当サイトに掲載がある中で比肩しうるのは『さかしき人にみるこころ』くらいでしょうか。
個人的にはそれくらいのクオリティです。
何の因果か存じませんが、私がキャラ萌え系の作品に求めることを完璧に満たしてくれています。
あ、でもアリスのロープラシリーズは別枠です。
あれはあれで一つの独立した別ジャンル扱いにさせてください。


鈴音がツボすぎる

本作ヒロインの鈴音さんですが、どストライクです。
女同士の馴れ合いとか付き合いとかマジ面倒くさいよね、とか言っちゃうヒロインホント堪りません。
おしゃれに敏感で、甘いものに目がなくて、恋に恋する、庇護欲を煽るような、そういう砂糖菓子に人工甘味料ぶっかけてポイップクリームで装飾したみたいな、女の子女の子したヒロインはお呼びでないのです。

庄司二号氏のビジュアルも素晴らしい。
キャラ萌え系的には、こういう等身高めで肉感的なビジュアルはセオリーではないはずなのに、よくぞこの起用をしてくれました。
この点は個人的に英断だと喝采したいです。
よくぞここまで私が好きな構成要素ばかりで作り上げてくれたな!ってくらい。
Rootnukoさん、この路線はまだまだ需要ありますよ。


季節とともに変わりゆくあれこれ

最初から好感度MAXだったり、突然MAXになったり、ヒロインと主人公の距離感が雑っていうのは量産型のキャラ萌え系あるあるだと思います。
そのあたり本作、徐々に変化していくヒロインのリアクションにだんだん距離が近づいていく様子が感じられて、丁寧なつくり込みが感じられます。
頻発する選択肢も、これはこれでアリですね。
変化するヒロインのリアクションを楽しむもよし、評価ゲージ(それぞれが何を意味するのかは未だ分かりませんが(笑))を上げていく作業として楽しむもよしで、しかもこれ、適当にやっててもそこそこ上がるくせに、必ずしも上げなくてはいけないわけでもないというルーズさが結構好きです。
MAXまで上げると若干マニアック向けなエロシーンが解放されるっていうのも、関係が深まってる感じがしてとても良いです。
加えて、鈴音が変化していく経過も巧みでした。
人が変わっていくことが必ずしもすべて成長とは限りません。
変化することで弱くなる部分もあります。
それをしっかりフォローする主人公がまた、貴様本当に陰の者か!? っていう男前ぶりも気持ちいいです。
エンディング後のラストの一言、とてもよかった。


地に足ついたシナリオ・テキスト

誤解を恐れず言うならば、作品要素を分解していったとき本作はとても地味です。
異世界とつながってるとか、魔法で何でもできるとか、ぶっ飛んだ不思議系の部活でハーレムだったりとか、そういう分かりやすくキャッチーなポイントはありません。
しかし、だからこそ地力が表れているとも言えます。
突飛な話はありませんが、先述のように着々と積み上げられていく関係性が実に味わい深い。
ありきたりな題材でも、しっかり咀嚼して再構成してアウトプットできる、それこそが王道なのだと思います。

また、本筋とエロシーンのバランスも絶妙です。
なんかちょっとしたイベントがあって、そのあとセックスセックス! みたいな展開が連続するとそれはもうダレます。
しかもエロシーンがやたら長くてヒロインのセリフが延々続く、とかまでくと数え役満あげてもいいです。
何かあるたびに毎回セックスしてくれなくていいんですよ、ホントに。
お前らは粘膜接触でしかコミュニケーションが取れないのかとね。
一方で本作、会話の充実が素晴らしいです。
主人公とヒロインの会話を通じてヒロインの魅力や先述の「変化」がしっかり感じられます。
それはエロシーンであっても同じで、だからこそ本作のエロシーンはスキップしようという気は全く起きませんでした。
キャラ萌え系に私が求めているものを体現してくれています。


おわりに

え、もしかしてうちのサイト見てくださってて、注文に応えるべく作ってくれました…? というくらい、私の趣味にドンピシャの仕上がりになっています。
ヒロイン一人のロープラで、ようやく『さかしき人にみるこころ』レベルの作品に出会えました。
そして、これはもう自分自身を誉めてあげたいのですが、こんなこともあろうかと前作『LIKE×LOVE ~十津川 光~』の方、準備ができていますので、近くこちらも楽しんでいければと思います。
シリーズとして今後どうするのかは分かりませんが、是非とも続いていっていただきたい、手放しで絶賛できる一本でした。

2020.12.30