未来ラジオと人工鳩 感想

初めてのLaplacianです。公式ページで廃墟った空港の画像を見た瞬間、購入確定しました。こういう近未来SF系は大好物です。
空想科学技術により社会がどう変化するか、その中で人間のどんな営みがあってそのせいでどんな事件が起こるか、そしてそこから現代の社会システムをどう眺めるかまで描けたら、硬派なハードSFファンまで唸る一品に仕上がりますが(それが一般消費者にとっても面白いかはさておき)本作はそこまで踏み込んでいないので、私レベルのにわかSFファンでも楽しめる裾野の広さを持っています。
未来なのに何故か技術的に制約があって不自由しているって点ではあれです、『アルテミスブルー』みたいで良いです。時代的にも2060~70年って絶妙にワクワクするあたりで実によろしい。

人工鳩の発想は面白いです。確かに通信技術に革新が起こるでしょう。それ以上に、太陽光のみで稼動できるエネルギー効率の良さ、鳩の構造を完全再現するロボット技術、そして自己増殖するメカニズムを応用すれば世界がやばいことになる事請け合いですが、そのあたりを一人の天才が独自に作り上げたという事でブラックボックス化しており、上手い落とし所だと思います。ある種、古代文明のロストテクノロジーに近いです。ナウシカ的な。
しかし、電波食いの設定については少々疑問が残ります。全ての通信が人工鳩に依存している状況下で、人工鳩ネットワークが暴走して使えなくなっているが故に無線通信技術全般が死に絶えているという話ですが、中継無しでダイレクトに端末同士通信できる機材使えば一発で状況は解消されるのでは?しかもそれはそんなに難しい技術ではなく、単純な話トランシーバー使えば良いだけの事です。そもそも主人公が使っている無線機とラジオがまさにそれですし。説明では、暗号化のモジュールを無理矢理繋いだら通信可能になった、との事でしたがイマイチ腑に落ちません。人工鳩の暴走理由と照らし合わせてみても、あくまで人工鳩ネットワーク内のノイズを除去するため電波食いを起こしていたわけであり、それに端末間の直接通信は関係ないように思えます。
それに人間の、資本主義の欲望を舐めてはいけません。無線が使えなくなったら、もう一度有線ネットワークで世界を繋ぎ直すくらいは平気でやってのけるのが業深き人間という生き物です。まあそれに関しては、反科学技術派の世論が根強い~みたいな説明があったので良しとしますが。

設定の根本的な突っ込みどころはさておき、そこからの話の展開は熱々で非常に良い感じです。ラジオの毒電波で人工鳩を駆逐していくという発想がそもそも面白いですし、ラジオ番組を運営する手探り感やライブ感に、スッと自然に感情移入していけました。また、番組中のトークに限らず、キャラ同士の掛け合いのクオリティが高い。声出して笑えるタイトルは久しぶりです。いっそ面倒な設定全部うっちゃって全編笑える掛け合いだけでも満足できる、というか全編これだけ笑えるクオリティ保てたら間違いなく傑作の仲間入りです。
と、共通ルートでは上記のように抜群のクオリティを発揮していましたが、個別ルートはどうも失速気味。特に割を食ったのは水雪で、秋奈ルートや椿姫ルートであった事の真相への伏線さえ無いばかりか、一生懸命ソラの味覚や声、記憶まで戻させたと思ったら、ラジオで殺した人工鳩の数が戻れば勝手に回復していたというまさかの事実が後に発覚。どこまでも救われません。これがギャグ要員の悲哀でしょうか。
そもそもかぐやルートをラストに持ってくるという制限を掛けている作品の構造上、その前段の個別ルートで未来ラジオも人工鳩も全てを明らかにするわけにはいかないわけです。しかも、途中下車式のルート分岐を、出てくる順序無視して椿姫⇒水雪なんて順番でルート突入してしまったら、ソラの記憶喪失関連の真相を知った上で水雪の頑張りを眺めなければならないという、悲しすぎる事態が発生します。この物語の構造についてはもう少し改善の余地があったのではないかと思わずにはいられません。でないとかわいそすぎる。

そして未来ラジオです。本作中では一番ぶっ飛んだテクノロジーになっており、もはや仕組みを説明することすら放置されています。それはそれで全く構わないのですが、バッドエンドで主人公死亡ニュースが現実になる展開も用意した方が、起こりうる未来から発信された音声を受信するという未来ラジオの機能の説得力、存在感が増したのではないでしょうか。一応、それ以外の受信した内容は発信が確認されているわけですし。

長々といろいろ書きましたが、面白かったのは間違いないです。それに、突っ込ませていただいた部分についても、明示していないだけで裏設定があるのかもしれません。
こういう面白い設定で挑戦してくれるメーカーは今後も応援したくなります。恐らくよっぽど変なの出さない限り次も購入かと思います。次が楽しみになる一本でした。

2018.09.30