働くオトナの恋愛事情 感想

長らくキャラ萌え系のタイトルは、学園の地縛霊と化していたように思います。
萌え系と言えば何故か舞台は学園で無ければならないという、お約束というか固定観念というか、そんなやつです。

かつて「美少女ゲーム」なんて呼称がありました。
名前からしてすでに少女縛りです。
今の「萌ゲーアワード」も、そういえば少し前まで「美少女ゲームアワード」でした。
名称変更当時は、萌ゲー縛りかよ!なんて反発したりしていましたが、斎藤環的視点で「萌え=二次元的表象に対する性欲の獲得」と考えれば、むしろより包括的な枠組みへの変更だったのではないかと、今さらながら思うわけです。

話がそれました。
日曜朝7時半のスーパー戦隊シリーズでは、やたら強いカラフル全身タイツなお兄さん方が何故か毎週送り込まれてくる怪人を集団リンチし、ボロボロにされた怪人が最後っ屁とばかりに巨大化したところを、こちらも巨大合体ロボットで迎撃しとどめを刺すというお約束がありますが、あれはお子様方に関連玩具を効率よくお買い上げいただくという目的に基づいた様式美であります。
変身セットに武器を模した玩具、合体変形ロボにその他食玩衣類等々、もはや機能美すら感じます。
これと比べると、学園モノが学園モノである根拠の薄弱なタイトルのなんと多いことか。
あまりに突飛な設定を学園にねじ込んだせいで、それ学園でやる必要ある?なんて印象をもたれた経験ある方、私以外にもおられるのではないかと思います。

前置きが長くなりましたが本作、学園から脱出を果たしております。
かねてより、アダルトPCゲームはもっと学園から卒業して就職べきだと密かに主張しておりました。
本作ドンピシャリです。
これは販売に貢献して、非学園系タイトルを増やさねばと購入です。
絶対に破られないプロテクトを実装、なんて大仰な事を言っていたようですが、残念な事に破られたようです。
違法ダウンロードと戦う姿勢は継続していただきたいです。
まあ、違法アップロード/ダウンロードしている人間を個別で訴えた方が手っ取り早く抑止力になりそうな気もしますけれど。
結局はプロテクト導入コストと訴訟コストの問題なのかもしれませんが、Microsoftやadobe製品ですら海賊版が出てるくらいですし、ソフト的に防ぐのは現実的でなさそうです。

「オトナの恋愛」との事ですが、オトナ同士の遊びと割り切った肉体関係というのがまず1点あります。
一度限りの関係を結ぶサブヒロインが多数登場しますので、このあたりの後腐れのなさは「オトナ」と取れない事もないのかな、と。
ただし、肉体関係を持つにあたっての理由は若干安っぽさ無理矢理さを感じるものがしばしばありました。
さすがに自転車のチェーン直してあげただけで3Pは美味しすぎます。
しかしお酒が入ってその流れで突入するエロシーンは、シチュエーションといい流れといい妙に生々しさがあり、夢があって良いかと思います。
言うまでもありませんが、性的に奔放かつ狩猟精神旺盛な大学生にありがちな、飲ませて潰していただきますとは全く別次元の話です。

一方でメインヒロイン陣は処女で固めてきました。
男性経験がないため、割り切った肉体関係というより、こちらは働いて自活できている、自立しているという意味合いでの「オトナ」という事かもしれません。
アスカちゃん学生ですけど、これはこれでアクセントになって良いです。
それに最終的に社会人やってるからセーフです。
このラインナップの中だと、高校生って実は高校生ってだけで価値があるんだなと感じられて実に良いかと思います。

また、メインヒロイン陣のキャラクターデザインついては、アニメ・漫画チックなゴテゴテした記号に頼らず非常に好印象です。
テンプレで固めてお約束に終始した先にあるのは、悪い意味で分かりやすい薄っぺらいキャラクターでしかありません。
その点本作、お約束にある程度乗っかりつつも、それだけで終わらせて無難にまとめようとしない気概は感じられました。
そのせいもあって、プレイ後にヒロインの魅力が一層深まります。
あと全体的におっぱいが大きいのも大変グッドです。

主人公の会社員生活についてなのですが、おおまかにやっている事の描写にとどめ、細かい業務内容に触れなかったのは正解だったと思います。
延々と決裁書やら申請書やら資料やら作成している場面を描写されて面白くなる姿が想像できません。
業界によって手順やらルールやらの細かい差異もあってイマイチピンとこない可能性も高いです。
例えば私の場合、主人公のように延々と社内業務だったら多分死んでます。
わけの分からない生産性の無い事に一日費やしたり、キチガイじみた事言う重要顧客がいたりってあたりは逆に結構共感できました。
営業あるあるです。

改めて、カテゴリ的に分類するならばキャラ萌系です。
ただし、登場人物の年齢層を上げて、舞台も学園から脱却を図ることで目新しさを感じさせることに成功しています。
また、過剰なアニメ・漫画的表現を極力排除することにより、オトナというコンセプトに沿った雰囲気を作り出すことにも成功しています。
そのあたり含め、『空色イノセント』に続きさすがに地力を感じました。
市場で生き残るための戦略が感じられる優れた企画力に基づいて製作された大変満足の一本でした。

2016.04.14