種付けおじさん異世界へ ~孕ませ士種蒔権蔵、エルフの里へ流れ着く編~

ここ数年、なろう系小説も案外読めるやつあるじゃないの! と、上から目線で読む機会が大分増えました。
それ以前は「なろう系ねw」とクソの掃きだめみたいに思っておりましたが、母数の暴力により蟲毒よろしく、傑作も生み出されているのだと認識するに至りました。
中二的な「俺カッケー!」だけではなく、ぬるま湯のような何もかも都合がいい世界も市民権を得ており、それはそれで疲れた3~40代のひとつの理想郷で非常に刺さるのです。


なろう系アセットだからこそ際立つ地力

さて本作、異世界転生です。
このフォーマット、アダルトPCゲーム業界では思ったほどは波及しなかった印象です。
ロープラ帯でちょいちょい見かけるくらいでしょうか?
正直もっと危ない粗製乱造が起こるかと思っていました。
さすがにそこまで節操なしではなかったようで安心します。
あるいは、私が知らないところで跳梁跋扈してるのでしょうか?
まあ、私に見えないところでやってくれる分には構いませんが。

本家の「小説家になろう」はこういういくつかのお約束的なアセットを、図らずとも整備してしまった(あるいは現在進行形でし続けている)ところに価値があると思っています。
先述のロープラ帯と相性が良い理由もこのあたりでしょう。
例えば異世界転生ものなら「トラックに轢かれて死んで、神と出会って剣と魔法の世界に転生し、冒険者ギルドに登録をする」という冒頭のこの部分までなら誰でも書けるようになりました。
ただ、それこそ粗製乱造の最たるところで、数ある小説投稿サイトにこういう冒頭だけの(それも大分怪しいレベルの)作品がたくさん転がっているのは、その実態までは目の当たりにせずとも多くの人がなんとなく把握しているところでしょう。

で、そのあたりはオークソフト、テキストの安定感はさすがです。
冒頭の導入も変に狙いにいったりせず、そつなくスマートに展開します。
我を出さず淡々と堅実に積み重ねる質実剛健さ、好きです。
同じアセットを使うにしても、素人がそのまま使うのとプロがカスタムして使うのとではめっちゃ差が出ますよねってのが出てる感じ。


このシステム見たことある!

オムニバス形式でイベントを進めていくスタイルは、懐かしい『聖ヤリマン学園』と同じです。
どうせお前ら、選んだヒロインのエロシーン見られればいいんだろ? っていう潔さがいいですし、明確に話の区切りがあるからこそのとっつきやすさもあります。
ある時期を過ぎると、連続で長時間プレイできなくなるんですよ…。

多分開けたイベントの数がフラグだと思いますが、定期的に差し込まれるサブヒロインもメリハリがあって良好です。
最初イレーナのイベントの窓がなくて焦りました(笑)
こういう意外性は非常にありです。


ヒロインが合わない

この手のタイトル遊び時に一番致命的な事態が発生しました。
ことごとく趣味が合いません。

エミリアは規律に厳しいというよりは頑固なだけで、感情的に主人公を罵倒する様には幼稚さを感じます。
リィナは恋に恋する女の子なのでこれも守備範囲外。
ターニャは無垢が通り過ぎて若干の知恵遅れ感。
イレーナは悪くはないのですが、私には少々ババア味が強すぎます。
マリアンヌ様はサブで個人的にはネタ枠。
一番好みなシオンも残念ながらサブ。

こうならべると辛いです。
エミリアは期待していた分の落差もありました。
このあたりはもうどうしようもありません。

とはいえ、この価格帯でヒロイン6名はかなり頑張っていると思います。
エロシーンのCGもクオリティ高いですし。
ただやっぱり、趣味が合わんのだよなあ……。


おわりに

全体的なクオリティは安心と安定のオークソフトです。
価格帯的に非常に高いレベルでまとまっています。
ただ唯一、私とはヒロインの趣味が合わなかっただけで……。
どうしようもなく不幸な出会いの一本でした。


2022.05.16