蒼天のセレナリア -What a beautiful world- 感想

Liar-Soft大好きを標榜しておきながら、私スチパンシリーズやってなかったんです。
いつかやろうと放置し続け、気が付けば10年以上経ってしまっておりまして……。
シリーズモノって最初からやりたいじゃないですか。
でもシリーズ増えれば増えるほど最新作に追いつくまで時間かかるじゃないですか。
どんどん後回しになって、そうすればするほどさらにシリーズが増えて、やらなきゃいけない本数も増えて、という悪循環。
加えて、私がLiar-Softに求めているテイストって、もっと明後日の方向に全力でスピンアウトしていくやつなんですよ。
同時期だと『LOVE&DEAD』とか『マスクドシャンハイ』とか『サルバとーれ!』みたいな、どうしようもないやつ。
スチパンシリーズって放っておいたらlightあたりが姉妹ブランド新設して作っちゃいそうな雰囲気ありません?
……そうですか、無いですか。
まあ、そんな感じです。

しかしながら、寝かせた事がかえって良い方向に転んでくれて、FVR(Full voice ReBORN)版で楽しむ事が出来ました。
しかも大機関BOXは定期的にDMMで半額セールですよ。
DL版でBOXってなんなんだろうな、みたいな素朴な問いは捨て置け。
フルボイスだわ演出強化だわ、3作分のサントラまでついてるわで、待つのも悪くないなという満足セットです。
……別に狙って待ってたわけじゃないんですけどね!
しかもこれですら発売が2011年なので、何年越し? もうね、アホかと。

さて本作。
こういう直球の冒険モノって実は案外貴重です。
…少なくとも私のアンテナ(破損中)に引っかかる範囲においては。
息苦しい閉じた世界の外へ飛び出していく爽やかが良いです。
惜しむらくはカタストロフに欠けた点で、内側(本作でいえば帝国領内)がいかに鬱屈した世界なのか、そこを描く前にコニーたちが外側(未知世界、セレナリア)に飛び出してしまったので、内外の対比が強調できずそれがいかなる偉業なのかイマイチ感じにくかったです。
ここの対比がもっとあれば、スイカに塩理論で「what a beautiful world」への共感が強まったかもしれません。
とはいえ最序盤ということもあり、あんまりにも鬱々した世界でダラダラやられると、それはそれでこっちまで嫌になってしまいますので、致し方ない差配だったのでしょう。
一つ確かなのは、「世界の水殻」を抜けてセレナリアの青が広がった瞬間にオープニングムービーをぶち込むべきだってことです、多分ね!

あとはまさかのSLGパート。
……めんどくせぇ!
遊びとしてのクオリティは高くないです。
2章と3章だけはやってみましたが、あまりにも不毛感がパないのでゲームパートスキップにして最初からやり直しました。
ただし、冒険感を出すための演出としては非常に効果的だったように思います。
真っ白な未知世界で得体のしれない「人」たち、文化をあてどなく彷徨うのは悪くないです。
特に私が触った2~3章はそんな毛色が強く出ていました。
4章以降はよくわかりません。
少なくとも、SLGパート無しでもほぼ違和感なく進行できたのは確かです。

世界観は独特。
よく分からないものを、分からないままに抱え込んで話を進められる度量が試されている気がしました。
固有名詞が非常に多いです。
しかもそのほとんどがロクすっぽ説明されないので、文脈から何となく雰囲気で概念的ニュアンス的に推測するほかありません。
説明しすぎない良さってのは確かにありますけれども、度が過ぎればただの自己満放置プレイです。
「盟約」とか「機関」とか何となくわかるヤツはまだしも、「数式」とか「ふるきもの」あたりはさすがに答え合わせが欲しいところ。
もしかしてSLGパートのイベントで解説あるとか?
だったらミスったなあ……。

展開についても結構投げっぱなしが目立ちます。
あれ、君の出番それだけ? ってのが散見されました。
風呂敷広げていく勢いで逃げ切ろうとした感じ。
逃げ切れていると感じるかどうかはプレイヤーによりけりでしょうけど。
あと肝心なところ、やっぱり説明しませんよね。
主語飛ばしたり代名詞や比喩を多用して、外側から外側からやんわりと推察を促していくスタイル。
ちょいちょい挿入される童話(?)パートなんてその最たるところです。
結局「緑色秘本」ってなんだったのよとか、何でシュプララプセールがその代わりに使えるのかとか、ベヴェルの戦いの踏み込んだところとか…etc.
とは言え私も結構だらだらやっていたのでインプットの精度も低く、一概に制作サイドだけを咎めるのは気が引けます。
まあ、いいんじゃね? くらいでお茶を濁すのが関の山の。

何となく大きなものの片りんに触れた気はしました。
その辺は冒頭で述べた「どうしようもないやつ」と通ずる永遠の未完の大器感があり、共通項と言えない事もないかもしれません。
Liarっぽい大味さです。
まあ少なくとも、野月まひるボイスだけでも元は取れたとは思っています。
モノローグ読み上げとか楽園かと。
…さて、次の『赫炎のインガノック』は果たしてどうなることやら。
シリーズ一本目として、若干の暗雲(煤煙?)立ち込める一本でした。

2020.01.01