白光のヴァルーシア〜What a beautiful hopes〜 感想

だらだら紐解き続ける、スチパンシリーズ第4弾でございます。
なんと今回、ライアーソフト初のフルボイス作品だそうで、逆に「ええ、今更……?」って感じです。
そうか、だから『大機関BOX』はこれ以前のタイトルが3本セットでFullVoiceRebornだったわけですね。
なんかもっと特別な意味があるものだと勝手に思っておりました。
まあそういうこと、ありますよね。


劇団嘘屋の声優陣

さて本作、わりと毎度お馴染みな声優陣ですが、高槻つばさ氏が端役ではありますが登場されて、そういえば晩年はライアー・レイルにもちょいちょい出演されていたなあと、時の流れを感じてしまいます。
一方、野月まひる氏は安定のハマり役、Rita氏も理多の方でご出演、ありがてぇありがてぇ。
個人的には、ライアーソフトヒロインのカテゴリに「野月まひる」というのを追加したいです。
実際、氏の演ずるキャラにはやっぱり傾向がありますので、だからこそ外さない、みたいな部分は確かにあります。
先に述べた「わりと毎度お馴染みな声優陣」が、これ結構マジで冗談抜きに、8割方(体感値)共通のキャスティングです。
2019年末には野月団長が主催で朗読劇のイベントを主宰されたりで、やってる側もそういう認識あるみたいですね。
それでもマンネリ感が出ないのはキャラ配置の妙でしょうか。


スチパンシリーズ的に

過去3作の諸々の要素が意図的に盛り込まれているように感じます。
セレナリア』『インガノック』『シャルノス』と本作がつながることで、今後展開するシリーズとしての基盤が定まったというか、本作を起点にしてそれぞれの作品世界を相対化できるようになった気がします。

ただ、いよいよもって「西享」とはなんなのかわからなくなってきました。
西享とスチパン世界はつながっていて、実際に西享はおフランスから使者がヴァルーシアにもやってきている。
ただし、西享は別惑星(!?)らしい。
……星々を渡る技術が確立している?
いやいや、それはさすがに。
あと、西享には我々の地球世界の地名が出てきますので、そこで切り分けはできるかもしれません。
あるいはイギリスロンドンが舞台になった『シャルノス』、こいつがもしかすると西享での話だった?
とはいえ、『シャルノス』の作中でも「西享」ってワードは出てきていましたから、つまりやっぱり西享って何? って話なわけです。
そのあたりどうしようかな、過去3作紐解いて確認してみるのもめんどっちいな、とか思っておりましたら、今回なんと用語辞典が実装されております。やったね!
まあ、そっち読んでもわからんところはわからないわけですが。

一方で、黄金瞳については多少進展がありました。
すっごい演算能力を秘めているんですって!
だから『セレナリア』で緑色秘本の代用に使われたんですね。
緑色秘本になんでそんな演算能力があるのかは全くわからんけれど!
で、後天的に発現するのはなぜ? とか、片目だけと両目だと何がどう違うの? とか、一個分かるとそれ以上にわからないことが増えるという。
やっぱりよくわからんということがわかりました。

あと、シリーズのリリースする順番がやっぱおかしくないですか?
今回確信しましたけど、

①インガノック
②シャルノス
③セレナリア
④ヴァルーシア

の順に紐解くのがしっくりきません?
スチパン世界理解のためにはこれが最適解かと思いますが、いかがでしょうか。


シリーズ毎度のところとそうでないところ

アスルとクセルのボーイミーツガール的な、めくるめく冒険のスペクタクル!
……そういう幻想は打ち砕かれました。
導入の展開とキービジュ的に絶対そういうの想像しますよね?

これまでも半群像劇的にその章で登場するキャラの視点で話が進む演出はありましたが、今回は本格的に群像劇です。
いつもと違い、登場人物が途中で離脱せず最後まで話に絡んできます。
この群像劇のおかげで場面や時系列がまあ飛ぶ飛ぶ。
序盤~中盤は話の設定や過去の経緯が明かされないまま話が進んでいくので、これを楽しめるかどうかがキモかもしれません。
私はこういう、理解が後から追いついてくるような進み方は好きです。
感覚的には、よくわからないけど愛想笑いしておいたジョークの意味が、家に帰ってから分かってスッキリするみたいな。
そのへんはまあ、スチパンシリーズ共通なので慣れたものです。

共通というか、お約束的な部分、形式美的ないつものあれはそういえば今回ありませんでした。
あとは、無駄に作りこんでるくせに遊びのクオリティ的にはイマイチというゲームパートもとうとうリストラ。
で、無くなってから気づいたのが、あのゲームパートってそのタイトルの根幹というか、一番象徴的な部分はしっかり切り取ってたんですね。
『セレナリア』では未知世界の冒険、『インガノック』では都市で何があったか、それ以来それぞれが何を思い何を抱えてきたか、『シャルノス』では何が起こっていてどこに向かっているのか分からないまま走り続けなればならない恐怖、それぞれを落とし込むには落とし込んでたんです、多分。
そういう意味では今回、焦点が当てられているのはキャラクターでした。
それぞれのキャラクターに同じ質問をぶつけて掘り下げたというか、確認・復習というか。
群像劇という形をとったのも、形式美的なお約束を繰り返さなかったのも、もしかするとそういう意図かもしれません。


大石竜子氏のグラフィックは良好

最近遭遇率の高い大石氏のグラフィックなのですが、だんだんとクセになってきている実感があります。
スチパンシリーズを紐解いたのが今年で、ちょうど『徒花異譚』も今年ってのが何か感じますね。
初めては『Forest』でしたが、あの時の「なんやこれ」が今となっては懐かしく、またあれともテイストが多少変わっていて味わい深いです。
比較すると、直近の『インガノック』ともやっぱり違うんですよね。
本作の方がより厚みを増したというか、より洗練された感じ。
惜しむらくは、氏の原画担当であと紐解くべきタイトルというと『フェアリーテイル』のシリーズだけで、あれは確か一発目でこれはなんか違うなとぶん投げたきりでした。
なかなか厳しい……。

素材つながりで、音楽はお約束の流れでこちらも良好。
アラビアンな何かを感じます。
ただ、シーン転換後も同じBGMの際、曲の頭に巻き戻るのが今回やたら耳に残った感じです。
あれはなんででしょうね?
普段は全然意識しないところなのですが……。
あとシーン転換では、アイキャッチの自己主張がすごい。
前後のシーンをぶった切って脳内をリセットするにはいいのかもしれませんが。


おわりに

なんやかんやでスチパンシリーズも折り返し。
いやいや、まだまだシリーズ続き出るかもよ? っていう淡い期待は持たない方が精神衛生上よろしいでしょう。
ソシャゲはアホみたいに儲かるんだろな……。
これでライアーソフトは星空めておに続いてFGOに二人目持っていかれたわけです。
許すまじ、許すまじ。

それと、これで晴れて『ハチポチ』収録タイトルがコンプリートです。
ようやくスタートラインに立ちました。
昔、Railタイトルのアペンドシナリオが欲しくて買いましたが、キャラがわからんそれぞれの世界観も固有名詞もわからんで、ちょっとだけ触って放置してたんです。
とんだフライングですよ、10年ばかり。
その辺も含めて、いろいろ区切りとなった一本でした。

2020.09.29