マルチ商法のセミナーに行ってきた話

みなさんお金好きですか?
私は好きです。
お金はたいていの問題を解決します。
お金は平等です。
お金は裏切りません。
唯一問題があるとすれば、なかなか私のところに集まってくれないことでしょうか。

不労所得というやつがあります。
働かなくてもお金が得られるという、夢とロマンの具現体みたいなやつです。
学校を卒業して就職をしてから、唯一私が一貫して持ち続けているのが「働きたくない」という気持ちです。
それは今も変わりません。
百ある甘そうな話なら、いつだって乗ってみたいのです。
そして不労所得を得たいのです。


セミナー参加までの経緯

そんなおり、某無料で使えるイベント・セミナーの告知サイトで「資産形成の初歩を学ぶ会」みたいなやつを見つけました。
これはいい機会とさっそく応募です。
ちょっと冷やかしてやりたいといういたずら心と、あわよくば講師氏(女性)とお近づきになりたいという下心があったことを否定しません。
で、参加してみると、資産運用で一番身近な株と不動産の初歩の初歩を本当に教えてくれるセミナーで、「へえ、まじめにこういうの教えてくれる会もあるんだな」と、我ながら上から目線で感心したものです。
講師氏(巨乳)は不動産メインだそうで、いろいろ教えてくれた先生的な人とのめぐり逢いが本当に良く、おかげで今も上手く回ってるとかなんとか。
すると私はもう、目の前の餌に我慢ができないダボハゼですから、どうやったらそういう人と知り合えるんでしょうね? と聞いてしまうわけです。
それを受けて講師氏(顔は普通)、その先生的存在が同じような勉強会を定期的にやっているから参加しないかとお誘いくださるではありませんか。
しかも無料。
そりゃ行きますわ。

というわけで第二回目。
講師氏の先生なので老師としましょう。
老師は不動産でFIREを達成されているそうな。
前半でロバート・キヨサキの金持ち父さんの話が出て少し身構えましたが、引用した内容はいたって健全な部分のみで、まあ納得なところばかり。
収入の種類の話とか、金持ちのネットワークを持ってるとか。
それにプラスで、資産形成における複利の考え方や、それにかかる時間の話など、これも基礎として良い話。
普通にタメになる内容でホント拍子抜けですよ。
ただ、ここに伏線が散りばめられていたのが後々明らかになります。

老師の会が済んでから何日か経ち、講師氏からまた連絡がありました。
第二回目の話の中でも触れていたのですが、老師のようなFIRE達成者の話を聞ける会が他でも定期的に開催されていて、近くそれがあるから来ないかとのお誘い。
老師の話はタメになったし、巨乳講師も来るしで二つ返事でOKしました。

そして来る第三回目。
私くらいになるといろいろ分かるようになるのですが、この時は始まった瞬間予感がありました。
あ、これあかんやつだ…と。
壇上に上がったのは、普通のおっちゃんをアクティブにした感じの、一昔前の言葉を使えばチョイ悪オヤジ、それのおしゃれ成分を50%OFFしたような、まあそんなの。
今となっては私の印象最悪なので班長と呼称します。
班長が怪しかったポイントがおおよそ以下の3点です。

ポイント①:人生語りがやたら長い


2時間の持ち時間で、冒頭30分以上は彼の人生語りでした。
いかに自分が普通のやつだったか、考え方を変えて行動をしてからどれだけ人生が開けたか、そういうのを延々語るわけです。
そしてこの班長の喋りがこなれてるのなんの。
これは常習犯のかほりです。

ポイント②:熱いロバート・キヨサキ推し


考え方を変えた要因として、まあロバート・キヨサキを推す推す。
これは裏を返せば、ロバート・キヨサキがそれだけ分かりやすい本を書いたって話でもあるのですが、こういう場面で使われるせいでホント印象が悪い。
班長も結局案の定だったわけですしね。

ポイント③:「夢」「自由」をひたすら強調


いやお前、ワンピース読みすぎかよってくらい、途中からこのあたりのワード使いまくりです。
目指すものがある、それを手に入れる手段がある、ならどうしてそれを始めない? っていう雰囲気作りはまさに匠のそれ。

というわけでお察しの通り、班長はマルチ商法の派閥のボスで、講師も老師もその派閥構成員だったわけです。
自由を手に入れ夢を叶えた俺、の語りがあった後はもうそのビジネス手法の説明一辺倒でした。
本人らも自覚があるようで、世間で言われているマルチ商法とはここが違う! というポイントの主張も忘れないところがさすが。


参加者誘導の巧みさを振り返る

最後にネタバラシがありましたが、途中までは誘導が本当に巧みでした。
全3回のセミナー、いずれも私から参加したいと言ってます。
だからこれ、全然だましとかじゃないんですよ。
3回目の班長も本当に何も強制はしてませんし、そもそも「合う合わないはある」「全員が必ずうまくいくわけではない」と一応明言はしていました。
私もひどい書き方してますが、違法性はないです、多分。
聞いた話だと、怖いお兄さんに契約するまで返してもらえないとか、何時間も監禁されて洗脳状態にされるとか、そういうガチで怖いのもあるみたいなので、その辺と比べれば全然健全。
これはいける! と思った人はやっていいでしょうし、実際に上手くいく可能性もあると思います。
それをサポートするための勉強会も結構な充実具合で用意があり、なかなかの頻度で開催しているようでした。


マルチ商法かねずみ講か

違法性があるとか、明らかに非現実的な話だとか、そういう話ではないです。
似たような話でねずみ講というやつがありまして、マルチ商法はそれと混同されているから損してる部分はあります。
ねずみ算式に増えますが、ねずみ講ではないのです。
とはいえ、ではすべてのマルチ商法が健全かというとそういうわけでもなそうなので、ケースバイで見ていく必要はもちろんあるでしょう。

私が今回持ち掛けられた商売のシステムはこんな感じです。

①紹介した客の購入金額の5%が私の懐に入る
②私が紹介した人がさらに紹介した客の購入分からも5%が入る
③もらえる5%のロイヤリティは自分の下の6代分まで

つまり、私起点で紹介の輪を広げていけば、それだけ私に入る収入が増えるわけです。
最初は私が頑張らないといけませんが、輪を広げた先に「自分も稼ぎたい!」という人がいればどんどん紹介していくので、私は何もしなくても彼が稼いだ分の報酬が得られるようになりますね、という話。
数字的にも、5%が6世代なので、商品代の30%が販促費と考えれば、世間で流通してる商品とそこまで異常な設定でもないように思います。
そして取り扱っている商品も、懸念されるような詐欺まがいの商品ではなく、世間的な評判も問題ないやつでした。
だから違法性があるってわけじゃないみたいですし、繰り返しますが、可能性はある話なのです。


誰も触れない落とし穴

それでは皆様お楽しみの今回のオチです。
結局ですが、私はこの話辞退しました。
理由はいくつかあります。

理由①:商品の勉強が必要


これはいわゆるバイラルマーケティング、つまりユーザー同士の口コミをベースにした販売方法という体を取っています。
「これ使ったことないしよく分からないけど、良いらしいんですよ、だから黙って買え」みたいなオススメで買う人はいませんよね?
自分がユーザーにならないといけないんです。
初期投資をして、商品知識を仕入れる必要があります。

②口コミを広める先が必要


班長は「あたり先がなくて不安な人、こっちで用意します」みたいなこと言ってましたが、それって裏を返せば、先人たちがどれだけ苦労していろんな人あたりまくって玉砕したかって話ですよ。
みんな自分の身近で広めようとして失敗して、多分SNSとかでの拡散方法を説明されるんでしょうけど、多分そういう苦労が確実にあるはず。

③それってもう「不労」じゃなくね?


そうなんです、①と②、これもう普通の営業活動です。
全然働いてます、むしろ最初は無給か持ち出しになる分、普通に働くよりタチ悪いです。
ネットで検索したらやっぱり自爆営業して赤字な人が多そうでした。

誰も気づいてないみたいだったので、当日あえて指摘はしませんでしたが(小心者なのでできなかった、が正しいですが)、ああいうセミナーを開催するために班長の一派が動いてるわけです。
運営のために駆り出されて、それもう完全に仕事ですやんっていう。
不労所得で夢を叶えよう! って言ってる自分らがもう目の前で働いてますやん!
仕事だけど仕事じゃないって洗脳があるっぽい点だけは詐欺だな、と思いました。
恐らくですが、「お前の派閥を作るために俺が面倒見てやってる」とか班長が言ってるんですよ。
働いているという自覚なく働かせるって、これ最強のやつですからね。


おわりに

繰り返しますが、違法性は多分ないです。
実際に成功できる可能性もあります。
ただし、それには普通に努力が必要ですし、普通に競争があります。
考えようによっては、完全歩合の仕事を雇用契約なしでやっているようなものです。

頭からお尻まで、それがシステムといて完成しているという点では本当に感心しました。
思っていたほど悪くなく、合う人には合う、でも私はそうではなさそうってところでしょうか。
「マルチ=悪」の先入観は改まったけど、結局私には関係ないねと確認できた良い経験でした。


2022.03.29