アニソンっていう音楽ジャンルは成立しうるのでしょうか?

いきなりですが、アニソンってなんでしょう?
なんか音楽ジャンルっぽく扱われていますが、アニソンってカテゴリをぶち抜く音楽的特色とか要素ってないですよね?
あくまでアニメ作品の主題歌っていうこれは外的な要因であって、その楽曲自体の音楽性によって分類されているわけではありません。
分類的に便利な部分もあるので、それはそれでまあいいのですが、そうなってくると不思議なのが「アニソン好き!」っていう消費者。
特に、その楽曲は好きだけれど本編のアニメ作品自体は見たことないし内容も全然知らないという人たち。
前からすっごい不思議に思っていましたので、今回は客観性度外視で感情的に、私個人の価値観に基づいて、論理の対極みたいな記事をお送りさせていただきます(そうしか書けなかったのです……)。


アニソンの魅力の構造

おそらくですが、アニソンが愛される理由の一つに刷り込み効果みたいなのがあると思います。
例えばオープニング曲は早くその話を見たいというワクワク感、エンディング曲はその回の余韻といった要素とセットで毎回何度も繰り返し視聴されます。
しかもオープニングとエンディングは大抵作画も一番気合入ってるところなので、視覚情報的な効果も絶大です。
楽曲自体の評価にアニメの視聴体験分の印象が上乗せされるわけですね。

ある程度気分が高揚している状態でその曲を聴く経験を繰り返すことで「その楽曲を聞く=気分が高揚する」というパブロフの犬みたいな現象が我々の脳内で起こっているのではないでしょうか。
同じアニソンの印象がそのアニメを見た人と見ていない人で全く異なる、なんて経験をしたことある人、結構いるのではないかと思います。


各年代のアニソン

どの年代のアニメを見て育ったかにより、アニソンのイメージって結構違うはずです。

80年代以前の場合、作品イメージというか、要素とか世界観、固有名詞をガンガン盛り込んだ歌詞が印象的です。
まさに「そのアニメのための歌」という感じの楽曲が多いです。

90年代はタイアップの時代。
アニメの主題歌が「枠」として使われた時代で、作品イメージは度外視、全然関係ない楽曲が起用されるなんてことが頻発しました。
これはアニメに限らず、J-POPのオーソドックスな戦術です。
とはいえ、J-POP全盛期なだけあってクオリティの高い楽曲も多数あったため、先述の気合の入ったムービーと相まって「あれ、普通にカッコよくね?」みたいなケースも多数あったことを補足しておきます、るろ剣とかね。

そしてゼロ年代以降。
やっていることは80年代と90年代のいいとこどりみたいなところがありますが、しいて特色を挙げるならば文化的に近しい人たちが歌っている、といったところでしょうか。
筆頭は声優ですが、「アニメの主題歌をよく手掛けるアーティスト」みたいなふんわりしたカテゴリが形成されている感も年々強まっています。
ある意味で現代の水木一郎みたいな存在です。

世間のオタク系文化への忌避感が薄れていくにつれて、一般社会でもアニソンというジャンルがあってもいいんじゃない? という感覚が広がっていていいことだと思います。
最近なんか、普通に紅白出ちゃいますんね。


「アニメ見ないけどアニソン大好き!」について

さて、アニソンのカテゴライズは楽曲の外的要因によるもので、その外的な部分も時代とともに変遷を経ており一貫したものではない旨、ここまで書いてきたつもりです。
しかし、あくまで見るべきは現実であるっていうのはこれまた重要な観点です。
むしろ科学的には本来そちらの手順の方が正道でしょう。
そういう人がいる以上、もしかすると逆転の発想的に、アニソンというカテゴリを横断する何らかの音楽的特性があるのかも、ということも考える必要があるのかもしれません。
その辺のテクニカルな部分に関して、私は中学校時代に音楽の評定で「2」を取ったことがある程度には音楽的教養・素養がないので言及はしません、というかできません。
なのでもしそのあたりに言及できる人がいらっしゃったらお願いします。

もしアニソンをアニソンたらしめる内的要素があるのであれば、そのアニメ見てないけどその作品の主題歌は好き、みたいなのも成立します。
もっと言えば、どのアニメの主題歌でもないけれど、特定の条件を満たしているからジャンルはアニソンね、みたいな現象が発生しうるということです。
ただしそれは、そういう前提でもない限り「アニソン好き!そのアニメは見てないけど」ってのはそれどういうこと? という話の裏返しなわけでもありますが。
それってただ単純にその楽曲が好きってだけの話で、アニソンかどうかって関係なくね? っていう。


おわりに

アニソンには特有のブースト効果、思い出補正、抗えない何かがあります。
私は90年代のアニメで育っているので、冷静に考えるとアニソンが好きというより普通にJ-POPが好き、みたいなところがあります。
というか今回の話はそこが出発点でして、アニメの主題歌になったとたんカテゴリがアニソンに変わるのはなんで? 楽曲しか聞いていないのにアニソンが好きってどういうこと? っていう、そんな疑問がぐるぐると。
ただ、ゼロ年代以降で挙げた「アニメの主題歌をよく手掛けるアーティスト」というカテゴリは確かに存在しているので、例えば90年代のJ-POPにもあった「ビーイング系」みたいな分類方法に近いかもしれません。
その音楽性ではなくその売り方によってカテゴライズされるのは、J-POPの文脈的にはむしろ全然正統派なのかも、なんて見方はありうるように思います。
とはいえ、その視点でもってしても「アニソン好き!作品の方は見ないけど!」という消費志向を説明することは全くかなわないので、そこはなんとも。

まあ、音楽ってそういうものなのかもしれませんが。


2020.09.21