ゆまほろめ ~時を停めた館で明日を探す迷子たち~

中島大河氏があかべぇから独立したのち、私にとっては一発目のフルプライスタイトルになります。
正直、ランプオブシュガーは趣味が合わないので、氏が企画・シナリオ担当でなかったら手を出していなかったかと思います。
ランプ的にも、ここ何本か中島氏にシナリオ担当させてみて「次あたり一人で企画から一本いってみる?」みたいな位置づけでしょうから、この食べ合わせがどうなるのか、かなり興味を持って臨みました。


残念な構成

さて本作、どうしてこうなったのでしょうか?
根本的な問題は間違いなく、あまりにも展開に乏しくのっぺりしたミーナ以外三人の個別ルートです。
そもそも共通ルートからして何をするという目的が示されるわけでなく、主人公たちに動機はなく、そして彼らが何かをして状況に進展があるわけでもなく、新しい情報が出てくるわけでもない。
それが延々続くと、かなりしんどい気持ちになります。
しかも個別ルートでも停滞感変わらず、そのまま雑にエロシーン5連発ののちに取ってつけたようなペラい山場からのエンドでございましょ?
いやーしんどい、とてもしんどい。

適度な分からなさ、何だこれどうなるんだという疑問は、ユーザーに対する引きになります。
週刊少年ジャンプが得意なあれです。
そのあたりの燃料供給が絶望的に足りませんでした。
もっと早い段階で動機付けを、せめて何をすればいいのか教えてくれるとかで、なんとかならなかったものでしょうか?

例えば、初回はミーナを救えない強制バッドルートにするとかでそのあたり提示できると思います。
なるほど、ミーナ以外の3人で伏線を回収してくればいいんだな、と分かるだけで大分違います。
ただ、それをやるとミーナ以外のヒロインは踏み台ですと明言してしまうようなものなので、他ヒロインが好きなユーザーからヒンシュクを買うことになります。
そのあたりは制作チームのなにか高度な判断があったのでしょう、きっと。

また、人間退屈すると細かい粗探しをしてしまうもので、重箱の隅を漁るようなダメ出しを始めるわけです。
純麗は出口出口とヒステリックにうるさいだけでこいつなんも建設的な言動せんなとか、主人公がやたら「~だぞ」「~ないぞ」と語尾の「ぞ」が多すぎて鬱陶しいとか、そもそも主人公がツッコみ下手でノリも悪いので会話のキレがないとか、何の工夫もなく館の中を毎日あてもなく徘徊するばっかりで頭おかしくならないのかとか(こっちがおかしくなりそう)、エロシーンで主人公の体の構造破綻しすぎとか、時計がないのに毎朝ほぼ同時に集まれるこいつらすげえなとか、挙げだすとキリがありません。
こういうところって、話の本筋に勢いがあれば全然スルーしてしまえる部分です。
ダレて集中力がなくなるから余計なところに気が散ってしまうのです。


誰がやらかしたのか

犯人探しを始めましょう。
「企画・シナリオ」という担当になっているので、世界観とかプロットあたりから中島氏が関与しているものと思われます。
ならば、この設定をうまく使うわけでもなく、展開でユーザーを引っ張る勢いがあるわけでもないのっぺりしたストーリーは氏によるものなのか、それともディレクターの水鳥氏がゴリゴリ口出しした結果こうなったのか。
仮に前者だったとして、ならばディレクターが軌道修正をしてほしかったところですし、後者だとしたらディレクターが余計なことしてくれたわけです。
あれ、じゃあディレクターの水鳥氏が全部悪いってことだね! というのも多分それはまた違う話で、もしかすると、これ以上にどうしようもない状態だったものを、水鳥氏がここまで持ち直した、という可能性もあるわけです。

あかべぇ時代の中島氏を思い返してみましょう。
氏の担当タイトルは「本作の売りはここです!」というのがわりとストレートに前面に出てました。
他タイトルと差別化しているポイント、と言い換えてもいいです。
それが本作では、最終盤まで何をしたかったのかがよくわからない。
これはもしかするとあかべぇ時代はディレクターが優秀で、中島氏をうまくコントロールできていたけれど、独立してからは……、みたいな可能性も出てきます。
一応、ああこれをやりたかったのねというところは本作にもあります。
ただ少なくとも、それだけでフルプライス分のボリュームを満たすには足りず、水増しの結果としてミーナ以外3人の虚無感が生まれてしまったような印象を抱かずにはいられません。

で、誰がやらかしたのか。
そのあたり特定するためには、ここ最近のランプオブシュガータイトルや、あかべぇ時代に実際どういうススメかたっだのかを私が知らなすぎるので、ちょっと情報が足りなすぎる状況です。
なので、中島氏が次に出したやつ次第でしょう。
そこでお会いできるのが私の知っている中島氏であればランプに、本作と同じような中島氏であればご本人に起因する問題だということです。
個人的に中島氏には期待しているので、ランプには申し訳ないですが前者であってほしいのが正直なところ。


おわりに

ナトリ、岩沼、柴田、亘理、川崎、山元、さすが中島氏、宮城出身なだけあるなw
……とか思ってた頃が懐かしいです。
中島氏の企画・シナリオということで、過剰に期待していた私がいることは否めませんが、それにしてももう少し何とかならなかったかと思います。
次は何とか持ち直してほしいなと願う一本でした。


2022.07.05