太陽のプロミア 感想

PULLTOPの『とらかぷっ!』の方のチームが独立するということで、なんとなく購入してしまいました。
このブランドでは本作が処女作となりますが、PULLTOPでの実績もありますし、あまり処女作って感じでもないです。
独立ってことで一から会社立ち上げたのかと思ったのですが、起動直後にPRODUCTION PENCILの文字が。
確かPULLTOPがウィルプラスのブランドですから、チーム移籍?……邪推はよしましょう。
ブランドの一チームがブランド立ち上げたんですから紛れもなく独立です。
独立万歳。

今までは学園物ばっか作るなあって印象があったのですが、今回はファンタジーです。
学園要素はありません。
2010年が学園物が死んだ年だったといいますか、なんとなく学園物ならフォーマットが固まってるから適当にやってもそれっぽいものになるかなあっていうのが露呈したのが2010年だったように思います。
2011年に入ってから、わりと大きいところでも任侠だったり航空会社だったり本作のようにファンタジーだったりに挑戦しているブランドもちょいちょい見かけるので、そういう動きはあるのかなあと、あくまで私が勝手に感じているだけですが。
それに依然学園物の発売予定が止む様子もありませんし。

『アマリルートほぼ全部!!』フリー公開という面白いキャンペーンもしておりました。
まあ、私は体験版やらない主義なのであまり関係ありませんでしたが。

さて本編の方は、主人公が記憶を失ってミルサントの街へやってくるところから始まります。
そこからあれよあれよという間に戦いに巻き込まれる感じなのですが、まず戦闘描写が冗長です。
小説であればまだ何とかなったかもしれない文面ですが、ゲームですと特に昨今はフルボイスが当たり前なこともあって、セリフが長いと非常にテンポが悪いです。
戦いの最中に喋りすぎです。
少年誌のスポーツ漫画ばりにしゃべります。
漫画でもしゃべりすぎだろと感じるのに、ボイスが加わるとさらに長く感じます。
お前らはゲートボールでもしているのかと。
また声優の方々がえらい丁寧にしゃべるもんだから。
毎戦闘の終盤に必ず使われる「いっけえええええええ!!」という叫び声と相まって、作中のテンションとこちらのテンションの差があまりにも大きくなってしまい、少々冷めてしまいました。
また、ファンタジーということで、光炉という重要物品が登場し、これが万能設定魔法的な役割を果たします。
結果には必ず過程や原因が必要であり、そういった一切を煩わしい解説なく解決してしまうのがこの魔法という不思議系技術体系の恐ろしいところで、下手に使えば思考停止を招いてしまう諸刃の剣となります。
原因も理由も何もかもわからないが魔法で何とかなった、という具合に。
本作でも一部でそのような描写があり、割と盛り上がるべきシーンだっただけに少々残念に感じました。
しかし、そのほかに関してはよく作り込まれているという印象で、特に世界観に関してはだいぶ頑張っているように思います。
少なくとも学園物だとここまで作り込まないでしょうね。
その世界観が、記憶を失った主人公への説明ということでユーザーに提示されるので、かなりスッと入っていけました。

物語に関しては、攻略ヒロインのルート解放によって三段階に分かれています。
一段目のヒロインを攻略したら二段目に、二段目のヒロインを攻略したら三段目にいけるようになります。
それぞれのルートに世界観や過去の事件といったものが散りばめられているのですが、段階を踏むごとに真相に近づけるようになっており、作りとしてはなかなか飽きない構造となっています。
ですが、物語内で起こる事件というのは、ルート同士でも重複することがしばしばあり、違うように見えてもヒロインの解決方法が違うだけで、原因や犯人というのは同じものとなっています。
このせいで、ルートごとの区別というのが曖昧で、プレイ終了した今となっては誰のルートで何が起こって、というのを思い出せないような、その程度の印象にとどまってしまっています。
いや、これに関しては私が悪いのかもしれませんが。

本当に作りたい物を作るために独立して、実際に作ったという印象の作品。
PULLTOP時代に作った『PRINCESS WALTZ』があるだけになおさらその印象は強いです。
また、それなりの実績があるだけに安定した内容となっていると思いますが、逆にいえば、安定してヒットは打てるけれどもホームランにはならないな、という感じです。
趣味好みの問題もありますが、実績はあるスタッフが揃っているだけに、次回作にはより一層のパンチ力を期待したいと思います。