てとてトライオン!

定期的に開催しております、昔やってたキャラ萌え系をやりなおしてみようのやつです。
10年以上インターバルをあけたので、実質初回プレイになります。
10年あければそうなると、我が家の研究結果で明らかになっております。
あと、やはり10本1万円セールは偉大。


負けない戦い志向

さて本作、減点方式で見れば非常に高評価になるかと思います。
不快なキャラや言動、鬱屈した展開など、ユーザーにとってストレスになりうる要素を可能な限り取り除こうとしている印象があります。
失点しなければ負けないという発想でしょう。
勢いよく進む展開に爽やかな後味と、確実に一定以上の成果は上げています。

加えて、ユーザーレビューで高評価されがちなところ、叩かれがちなところを上手く処理しているようにも思います。
例えば、主人公がヒロインへの好意に気付く描写を明確に入れてあげたり、「好きだ!⇒即セックス!」とはせず、間にクッションとなる期間を置いてあげたり、全ヒロインEND後にグランドルートを作ってあげたり、そのあたりです。
そういう文言、他所様のレビューでご覧になった事ございません?
極論すれば、キャラ萌え系はキャラがユーザーに刺さりさえすればそれで勝ちですから、実に堅実なことで大変結構かと。


負けない戦いの成果

私は勝手にちんちくりん組とナイスバディ組と呼んでいましたが、後者は良い感じでした。
カラっとした元気系で男友達みたいな距離感の夏海と、仕事できるけどプライベート残念な女上司そのまんまの一乃と、私の琴線にビンビンです。
2/4がヒットしてればキャラ萌え系として十分成功でしょう。
ちんちくりん組はほら、乳とか精神年齢的なのとか……。

エンディング後の後日談が好きなんです。
一段落したあとのヒロインと主人公のニュートラルな姿や、将来に向かって頑張ってる姿、そういう材料がいただけると妄想が大変捗りまして、キャラへの愛着が一層増すといいますか、まあそういうのがあります。
FDでアフターストーリーとまでいかなくても、本編が終わってスタッフロールが流れて、そのあとちょっとだけそういうエピローグが入るだけで全然違います。
先述の通り、ユーザーが要望しがちなところをそつなく押さえているのに、これだけは対応してくださらなかったのですね。
かなりあっさりスパッと終わった印象でした。
そこだけは若干残念です。
ただ、本編では学園で起こるドタバタへの対応がメインで、彼らの将来の話とかほぼ出てきていなかったため、そこに突然後日談とか放り込んでも違和感が…という判断はあったかもしれません。


10年後の汚れちまった私

発売当初の若かりし私は、全方位隙なく高水準にまとめてくれた! みたいな感じ方していた記憶がありますが、今改めてプレイするとパンチが足りないように感じてしまいます。
今の私は減点方式ではなくて加点方式なのです。
先に「不快な点を排除」と述べましたが、じゃあ具体的にどこまでセーフでどこから不快なの? なんて線引きなんて誰にもできないわけで、となるとあんまり攻めたことはできなくなります。
普通に商売するなら正しい判断だと思います。

あとはやはり、気になるポイントがどんどん嫌らしくなります。
社会の荒波に揉まれ丸くなればよかったものの、私の心はけば立つばかり、立派なチクチク野郎になってしまったのです。
例えば本作の舞台である獅子ヶ崎学園、少年マンガを純粋に楽しむキラキラした心であればめっちゃワクワクだったでしょうが(事実昔はワクワクでしたが)、今となっては「特活の金の流れとかどうなってるん?」とか、「学園設備壊れたなら作った人たちに頼んで直してもらおうよ」とか、「いや、それ学園生が直すんかい!」とか、「学費払ってる親御さん激おこちゃうん?」とか、「そもそもなんでそんな面倒な認証システムにしたの?」とか、そういう些末なところがどんどん気になる次第でございます。
それで評価下げるとかはないんですが、素朴な疑問として、なんでそうしないのか、どうなってるのか、気になって気になって。
だってディズニーランド行ってアトラクション一つも動いてないのに入場料変わらないばかりか、復旧の手伝いとかさせられたら腹立ちません?
まあそういうケツの穴の狭い話です。

もちろん、獅子ヶ崎学園という舞台が主人公を主人公たらしめる装置になっているので、必然性はあります。
ただそれはそれで、設計者の親父が息子を特別扱いしすぎとか、もう2年早く送り込んでおけば一乃さん世代の苦労ももう少し軽減されたんじゃないの? とか、言い出したらキリはありませんけれども。


おわりに

爽やかな気持ちになりました。
定期的なキャラ萌え系の摂取は、視点を健全化させる効能がありそうな気がします。
一方で、フィクションを純粋に楽しめなくなりつつある自分に軽く恐怖を感じます。
本気でそのあたりに文句言い始めたらもう終わりでしょうね。
老害にはなりたくないなとしみじみ思う一本でした。


2022.06.18