さくらさくら 感想

春になると、この国では「桜」という単語が満ち溢れます。J-POPなんかだと特に顕著で、三月から五月にかけて、桜ソングなるものが何曲も世に出されていきます。我らがアダルトゲーム業界にもこの流れは押し寄せているようで、タイトルに「桜」の文字が入る作品が増えたように感じます。ただ悲しいかなこの業界、企画のタイミング、進行管理等、いろいろ残念なことになっていますから春に限らず一年中、季節を問わず桜タイトルが発売されています。その最たるが本作であります。二年以上にわたる延期の末、結局は六月の発売ですから、とことん桜のシーズンに出す気はないようです。

何が素晴らしいって、限られた部分での主人公のモノローグ以外はほぼ全てキャラクター同士の会話しかテキストがないにもかかわらず、今はどういう状況で何が起こっているのか、をユーザーが把握できるようになっているところです。変に芝居がかった、あからさまに状況を説明するような台詞を多用したせいで、日常会話というにはあまりに違和感ありありな状況に陥る、なんて不細工な真似はしません。実際これはすごい事だと思います。非常に上手いなと感じました。単純に全てを描写して説明してしまうわけでなく、かといってよくよく読まなければ読みとれないというわけでもなく、そのあたりの情報の出し方が絶妙です。

今日日珍しい口パク演出を搭載しています。直樹作のシーソーフィギュアもいい味出していると私は感じました。加えて、寮内マップ移動のアニメ演出や入手アイテムリストと、変に凝っています。そんなもん作って二年以上も延期したのかと思うと残念な気持ちになりますが、しっかり完成させているので文句はないです。最悪なのは、中途半端に延期したあげく結局不完全な出来のまま出荷してしまう事ですから、それを考えれば本作の場合、余計なランニングコストでメーカーの財布が痛い思いしているだけなので。

ストーリー自体は、主人公がひたすらに優柔不断なだけの話ですが、最後の最後はビシッと決めてくれたので良かったです。終わりよければすべてよしです。主人公があっちいったりこっちいったりで「お前いつまでやってるんだよ」と突っ込みたくなりますが、サブキャラ達が何かしら笑える事をやってくれるので、あまり中だるみというのは感じませんでした。ラブコメのコメディ部分がしっかりしているのです。また、主人公を二人にしたのも正解だったと思います。主人公があっちにフラフラこっちにフラフラの三角関係がコンセプトなので、主人公を一人にするとヒロインは二人までしか登場させる事ができません。そうなると、フルプライスでヒロイン二人、しかも内容は二人の間を主人公が何十時間ものプレイ時間の間、延々と行ったり来たりするだけという恐ろしいソフトが出来上がります。間違いなく途中で飽きます。それを回避する手段が、二つの三角関係に四人のヒロインという荒技だったのです。いや別に荒技ってほどでもないか。ただ直樹シナリオの方は、私の中でくるみ先輩がキーキーうるさいだけのサブキャラになり下がっていたせいで、イマイチ三角関係っぽくありませんでした。やはりユーザーから見て、ヒロイン二人の戦力が均衡していないと、三角関係は楽しみ切れない気がします。その点、メインシナリオでの桜先生とさくらさんの戦力の充実っぷりときたらもう。どちらにも良い顔したい主人公にものすごく感情移入できました。

長期間の延期こそしたものの、その分しっかり仕上げてきた良作です。私としてはFDも是非プレイしたいと考えているのですが、果たしていつ出るのやら。スケジュール管理だけが残念な一本でした。