自爆カノジョ~彼女は隠れて身悶える~ 感想

我らが中島大河氏の、フリー転向後1発目でございます。
やっかいだったのはDL版の予約をやっていなかったという点でして、本当にパッケ版しか出さないのか、昨今横行する発売日にいきなりDL版販売が開始されるパターンなのか、事前情報なしという。
まあ、今日日ロープラ帯でDL版出さないとか意味分からないので確実に後者だろうと読んでおりまして、結果その通りだったのですが、結局発売日になっても買う事はありませんでした。
発売後に定価で購入するのってなんか違和感があるんですよ。
定価の内訳って多分「本編+発売前のワクワク」なので、やっぱり予約の勢いって大事です。
挙句の果てに、この間FANZAでやってたあかべぇそふと10本1万円セールにラインナップされてしまいまして、ここぞとばかりに買ってやりましたよ、ええ。
このブランド初めてでしたが、あかべぇ系列なんですね。

というわけで本作。
当サイトに掲載された作品としては近年まれにみるベッタベタ具合でして、純粋なキャラ萌え系は久しぶりだなあとしみじみ。
個人的にこの手のタイトルで重視したいのは、エロシーンと日常シーンのバランスです。
とにかくエロシーンで尺を稼いでテキストボリューム充実、とか言われてもホント困ります。
で、そのエロシーンも延々とヒロインが謎のセルフ実況プレイをしているだけとか、マジで勘弁していただきたい。
君のおまんまんの中で彼のおちんちんが今どうなっているかとか、私はぶっちゃけあんま興味なのです。
そういう最悪の事態が避けられていて、さすが中島氏、その辺は期待通りです。
ヒロインの魅力を引き出すには、やはり会話やらコミュニケーションで実際のやり取りを提示し続けるしかありません。
ただ日常を積み重ねているだけに見えて、だんだんと変化していくヒロインの態度だったりがいろんな角度から描かれているのって、良キャラ萌えゲーの必須条件だと思うんですよね。
繰り返しますが、そのあたりがしっかり押さえられていて、さすが中島大河クオリティです。
もう延々とニヤニヤしっぱなしで、プレイ中の自分の顔を想像するとひたすらに気持ち悪……。

回想モードでCG枚数だけ見ると、あれ? これで3,800円相当? みたいな印象ありますが、これはおそらく立ち絵の方にリソース割いてるせいです。
立ち絵の素材量がハンパじゃないですし、セリフの最中でさえ立ち絵が動く動く。
しかも、ちゃんとセリフに即してきっちりと。
スクリプトの手間ももちろんですが、セリフごとにどの表情をあてるか考える作業だけでえげつなさそう。
私個人的には従来、立ち絵を動かすことに対して全く価値を見出していませんでした。
ADV画面に表示される画像情報なんていうのは、場所(背景)、その場の人物と、そのうちの誰がどんな感情でセリフを発しているかが提示されていればそれで充分、くらいに考えておりまして、E-moteとかLive2Dみたいな立ち絵を動かすツールに至っては、そんなとこに投入するコストがあればもっとプロット練れ! みたいな暴言もあったようななかったような。
ただ本作に限っては、これは良い体験をしました。
ちょっと認識を改める必要があるかもしれません。
立ち絵って大事だなという再発見です。
もちろん、ただ動かすだけの自己満足にしか感じられないケースは多々ありますし、全てのケースでそれが効果的とはいえませんので、全案件無条件肯定は難しいですけれども。

これは完全な邪推ですが、本作の企画書には『からかい上手の高木さん』のタイトルがあったのではないでしょうか。
明らかにベンチマークですよね?
クリティカルヒット回を濃縮して、素直になった高木さんが自爆特攻を繰り返すってのが本作の基本路線です。
それをパクリとか言うつもりは毛頭無くて、むしろよくぞここまでアダルトPCゲームのフォーマットに落とし込んだな、と。
他作品のガワをそのまま持ってくるのではなく、それの何が良いのか、支持されているのかきっちり分析して要素を抽出して、作りたいものに落とし込んでいくと良いものが出来上がります。
そういう過程が感じられると、ブランドに対する信頼感って深まりますよね。
まあ本作は中島大河買いで、信頼感の先は氏になるのですけれども。

キャラ萌え系は一枚絵のないシーンでこそ真価が問われるなと再認識した一本でした。

2020.06.28