そして明日の世界より―― 感想
丁度『終末の過ごし方』をプレイした直後に、本作の発売情報を仕入れ即予約まで踏み切ったのが、気がつけば結構昔だったりするからびっくりです。
背景の塗りがすごくいいなと思って製作陣チェックしたらライターが健速氏だったという。
特に意図せず遭遇したタイトルに、好きなスタッフが参加していたら、どこかしら運命じみたものを感じて「これは買わねば」なんて思ってしまう辺りが、私も結構乙女チックです。
しかしながら、野郎の乙女チックもなかなかバカにできないもので、なかば勢いで買ったやつが想定外の大当たりをぶちかましてくれたりします。
恐らく、私がプレイしたタイトルの中でもトップ3に入る素晴らしいエンディングでした。
まあ、今まで特にトップ3を具体的に列挙したわけでもないので、トップ3が5作6作ある可能性高いですけど、それにしても爽やかすぎます。
誰が死んだとかで涙を誘うタイトルは、そこら中にいくらでもころがっていますが、こんなに爽やかな涙を誘うのはなかなかお目にかかれません。
葬式の涙と甲子園優勝の涙といえば、対比が明確でしょうか。
「全米が泣いた」とか、その手の作品って大概前者です。
悪いとは言いませんが、どうにも安直な気がしてなりません。
何よりも、どうやったってスカッとしないです。
一方で本作。
本作は明らかにアフターストーリーのあのエンディングをやりたいがために作られています。
俺たちはここで生きたんだという、あの強烈な主張が、汚れきった私の心には眩しすぎました。
「ボクとキミとの関係性の行方=世界の進退」みたいな図式の「セカイ系」なる作品群が一時期注目を浴びましたが、今思えばアレに対する完全なアンチテーゼです本作は。
まずあるのが世界なのです。
ちっぽけな僕たちの心の持ちようがどう変わろうと、世界は世界のまま変わりはしません。
また、セカイ系においては中間社会の欠落、すなわち「ボクとキミ」と「全セカイ」という極小と極大の社会が直結している点が槍玉に上がりましたが、本作の場合はキチンと中間社会が描かれています。
たとえそれが小さな小さな島であろうとも。
印象的なのは、どのヒロインも選ばないエンドがアフターストーリーと直結していると思しき点です。
(私の主観です)特定ヒロインのエンドに至らない、すなわち、そもそも「ボクとキミ」なんていう小さな関係性に閉じこもらないのです。
最後の主人公たちの写真に写る人々が象徴的でした。
確かに世界は終わってしまうけれども、その時まで精一杯生きてやろうじゃないかという心意気がね、もう眩しすぎます。
やっぱり、これをやろうという目的が明確になっていると、面白いものが出来ると思います。
繰り返しになりますが、本作ではあのラストシーンです。
各ヒロインのエンドも、世界の終わりを迎えた中で生きるということについて真正面から向き合った非常に爽やかなものになっていますが、アフターストーリーはちょっとまた別次元です。
湧き出る温泉は、主人公が最後まで日常を捨てずにいたことを示していますし、周囲の島民の笑顔は、この小さな社会が世界の終わりに際しても混乱する事なく生き抜いたことを象徴しています。
本作の集大成としてあれ以上はないと思います。
たかがゲームで人生観が変わる、なんてことはそうそうないと思いますが、本作プレイ後は少しだけ世界が輝いて見えました。
私の貧弱な語彙ではこれ以上に表現できないのが残念です。
生きてるっていいなと本当に思った一本でした。