積みゲー賽の河原


CANNONBALL~ねこねこマシン猛レース!~

『キャノンボール』と聞けば、ジャッキーチェンがスバルの改造レオーネで闇夜を計器走行する姿を連想しますが、内容的には『RED LINE』の木村拓哉を連想してもそれはそれで間違いないと思います。私個人的には『RED LINE』の製作陣は絶対本作知ってると思っています。

まずは挨拶代わりのインストールバグですが、訓練されたライアーユーザーにとってはプレイ前の通過儀礼のようなものでしょう。まあ過去最大級ですけど。今ならばDL版かベストプライス版が安いわ修正済みだわなので、あえて中古で要修正版を購入するのはあまりに信心深いと言わざるを得ません。確かにこの大味さは魅力のひとつですけれども。

本作の魅力はその混沌さにありまして、エンディングには辿り着けるものの、全イベントの全容に至るには大変な労力を要します。全イベント回収チャートを作れた人がいたならば、その人は敬虔な信者であると共に大変な暇人でしょう。私自身、多分イベント全て回収できていません。何周かすれば確実に全部イベント回収できるようにしてくれよという話もあるかとは思いますが、登場キャラの多い本作でそれをやると話の展開がだれてきますし、キャラそれぞれの掘り下げや各々の目的、理由、そして世界観が断片的だからこそ面白いというのもあるのではないかと思います。ある程度ファジーであるが故の魅力ってあります。
また正直なところ、レース中の選択肢の勘所が未だに良く分かりません。何となく選んでたらそれなりの結果になっていますが、本編の進行とどういう連動してるんでしょうか。レースのスピード感や瞬時の判断を何とかしてADVの形式に落とし込もうとした努力は感じられるものの、この今一歩及ばない大味さ。この感覚はLair感としか言いようがありません。もうホント大好き。

変なところから原画を引っ張ってくるスキルに定評のあるLair-Softですが、本作は小梅けいと氏を採用しております。獣耳描かせたら良い仕事しますねこの人は。『狼と香辛料』のコミカライズなんかもあれ最高ですし。もうね、趣味全開かよ。同作原作のイラスト担当である支倉十が同じくLairの『AngelBullet』の原画やってるのも何かの繋がりが感じられて良いです。何より私が愛して止まない『狼と香辛料』ってのがいいですなあ。しかしなんでよりによってあんな馬鹿ゲーの原画なんて。……話が逸れました。

歴代Lairヒロインランキングなんてやったら、恐らくフォクシィは良い線いくはずです。怪しい立ち位置の登場場面から、いきなり主人公の相棒役こなすわ、敵の手に落ちるわ、なんかセカイ系ヒロイン的ポジションに実はいるわ、展開的に人気が出やすいポイントことごとく抑えてますし、キャラクター設定も暗殺者で孤児達の面倒見ててアンドロイドで耳が生えてと、過剰積載状態なのに全てがそうなるべくして納まっているというもはやある種の奇跡。正ヒロインが一人だから出来る荒業です。Lairでは正統派ヒロインの方がむしろ人材不足なのですが、ちょっと本気出せばこういうのも出来るから恐ろしい。

さらにダメ押しですが、音楽が良いんですよ。サントラあれば間違いなく買うクオリティですが、そこは当時のLairらしくインストールフォルダ開けたらWAVファイルが入ってます。どうかしてますよ全くもう、もっと商売っ気出していいのに。そういえば最近のタイトルって開けなくなってますけど、いったいどのあたりからこうなってしまったのか。是非暇な人調べたら教えてください。多分私より暇な人もそうそういないでしょうけど。
これ書いてたら懐かしくなって、聞こうと思ったらファイル保存してませんでした。どうしても我慢できなかったので、ゲームディスク引っ張ってきて現行環境にインストールして久々に楽しんでやろうと思ったら、どうやってもインストールできねえでやんの。で、公式サイトで見たらDL版が半額セール中。なんでパッケ版持ってるのにDL版も買わねばならないのか。最近このパターン増えてる気がします、ファック。でもやっぱりメインテーマの「CANNONBALL」は最高です。これは間違いない。

全面的に過積載すぎる内容を、奇跡的なバランスで組み上げたら本作が生まれました。楽しみどころはたくさんあります。私個人的にはそのあたりを全部楽しんだ結果、一周して「フォクシィ最高!!!!」ってなったら本作の本懐は遂げていると思います。一人では語りつくせぬ、底知れぬ魅力があります。こういう破裂する寸前まで詰め込んだ熱いタイトルが眠っているのは、今だったらどの媒体なんでしょうか。そういうところに特攻したいなあ。未完成っていうのは時として魅力にもなるんだぜっていうのを痛感できる一本です。

2018.05.07