彼の為に出来ること 感想

Devil-sealから久しぶりの新作ということで、じゃあ買っとこうかなあという感じでついで買いしたのですが、同ブランドの前作をやっているわけでもなく、かと言ってsofthouse-sealを毎作プレイしているというわけでもなく、「じゃあ買っとこうかな」の「じゃあ」ってなんだよって感じです今になって思えば。
多分寝取られたかったのではないでしょうか。
売り場とはすなわち戦場であり、戦場で恐慌状態に陥った兵士っていうのは何をしでかすか分からないものですから、私が本作を買ってしまったのも仕方のないことです。
何せ2000円ですし。

ジャンルが「健気な彼女が男に寝取られるADV」ということなのですが、メインヒロインに関しては健気というより頭が弱いという印象の方が先に来ます。
加害者たちの「退学なんて怖くないぜ」を真に受けるのもどうかと。
このご時世、中卒で社会の荒波へ漕ぎ出していくのはちょっと覚悟いりますよ。
だいたいこの手のアホの穴だらけの理屈にいいようにされてしまうあたり、いや異常な状況に陥ったからこそそのあたりまで頭が回らなくなっているというリアルさを追求した演出なのかもしれませんが、でもやっぱり第三者視点で見ているこちらとしては納得しがたいものがあります。
だってレイプ現場を加害者が撮影して悪用しないわけないでしょうに。
盲目的な素直さは時として愚鈍です。
そして案の定「この映像をばら撒かれたくなかったら~」に続くわけなのですが、この状況っておかしくないですか?このレイプ現場の映像をバラまいて本当に困るのは誰でしょう。
確かにその映像は被害者であるヒロインを映したものですが、同時に加害者の姿も映っています。
編集なり何なりでヒロインだけ巧妙に映したとしても、データである以上はネットワークを介して広がっていきますから、元をたどっていけばやっぱり明確な証拠として残ります。
犯行の証拠を自分で配って回る犯人って相当に滑稽じゃありませんか?この状況はそもそも脅迫として成立していないんですよ。
イジメで退学ならまだ社会復帰可能ですが、性犯罪者の社会復帰ってどれだけ高いハードルなのでしょう。
この頭の弱いヒロインを通じて見えてくるのが、ありがちなシチュエーションでそれっぽいものを組み立ててみたという製作サイドの姿勢です。
私としても、窓の桟をツーっと指でなぞって「まだ埃が残っているわよ」と嫁をいびる姑の真似ごとはしたくありませんが、しかし寝取られモノにおいてはその過程こそが重要なのですから、そこを借り物で適当に済まされては虫の居所が良くありません。
もっとシチュエーションを自分達の頭で理解してほしかったところです。

私にとって致命的に我慢ならなかったのが、イジメ加害者側の男子生徒の語尾に度々現れる「w」←これです。
理屈以前の問題でイライラしますし、気持ち悪さすら感じます。
ネットスラングを実際の会話で使われるのと同じ感覚でしょうか。
これで一気に冷めてしまいました。
致命傷です。

2000円というロープライスとは言え、もう少し頑張って作ってほしかったです。
自分達のアイデアをほとんど詰めることなく、既存のパーツのみで組み上がられたがごとき展開もそうですし、何より寝取られモノを作るということをもっと理解するべきです。
寝取られモノにユーザーが期待するものとは、それに応えるための見せ場は、見せ方は、ちょっと理解が足りていなかったのではないでしょうか。
ましてやロープライス、作品の分量にも限界があります。
それでいてはヒロイン三人。
一人分すら十分に描き切れていないのに人数増やそうなど言語道断。
寝取られモノを作る覚悟の足りなさを、ロープライスという免罪符で誤魔化したように感じる一本でした。