ハチポチ Liar&raiL FanDisk

ファンディスクというのは、メーカーからすれば大手を振って素材を流用して楽な制作ができ、ユーザーからすれば好きなタイトルの追加コンテンツが供給され、みんな幸せになるはずの素敵なやつです。
まあ、楽なゲーム開発なんて古今東西存在したことないでしょうから、前半に関してはユーザー視点の邪推まみれな話なんですが、後者に関しては結構同意いただけそうな気がしております。
そのはずだったのですが……。


多分史上最強に要求が強烈なFD

さて本作。
みなさん多分同じこと思ってると思いますが、でもあえて言います。
10タイトル合同FDは頭おかしいです。
しかも、悪名高き前FD『Round a GO! GO!』の反省を活かしてか、シナリオ・グラフィック両面でかなーり気合入ってるのがひしひしと感じられます。

といいますか、そもそも本作をプレイするスタート時点に立つまでに大変な時間を要しました。
本作が出た当時、私はraiL-softにドハマりしておりまして、初期の3本のアペンドデータが含まれることから手を出し、本編の方はスチパンシリーズの登場キャラが全然わからずぶん投げていたのです。
そのまま時は過ぎ、私がスチパンシリーズを紐解いたのが結局2019年でした。
そして結局、収録タイトル最後の『白光のヴァルーシア』を終えたのが2020年の秋頃。
つまり、本作を購入してから収録タイトルを全部遊び終えるまでに10年弱の期間を要したわけですね。

同じブランドのタイトルを10本遊ぶというのが普通ならまずあまりないでしょうし、今回の場合はスチパンシリーズ、raiL-soft、天野&岩清水のバカゲーと、路線が異なる3系統。
これ全部遊ぶのは相当のモノ好きです。
収録10本遊んだ上で本作を遊んだ濃いユーザーが果たして日本に何人いるのか、非常に気になるところです。


お祭り感は最高

先述の通り、かなり気合が入っています。
各タイトルから主要キャラはだいたい参加させ、しかも各タイトルのメイン原画がそれぞれのテイスト全開で別タイトルキャラ描くという垂涎もののコラボです。
昔よくあった初回版とか予約特典でついてきた限定冊子に、スタッフの縁故やらで寄贈イラストが掲載されていたりとかよくありましたが、あれを全力で本編に組み込んじゃった感じ。

タイトルを超えた、ここ以外では絶対実現しないキャラ同士の掛け合いとにニヤニヤできます。
例えば、アナとシサム・キサラ、十湖の掛け合いとか、アーシャとクロと園美の掛け合いとか、そういう事態(同じ声優のキャラ同士の掛け合い)が発生したりするわけです。
劇団噓屋ファンはもう堪りません。

シナリオライターもそれぞれの色を出したテキストで参加してて、これもまたファン的には嬉しい要素です。
桜井光氏、希氏あたりは特に個性的なので。
ただ、やはり彼らもプロの物書きなわけで、寄せようと思えば文体なんてどうとでもなるでしょうから、どこまで誰が書いているのか正直厳密にはわかりません。
まあ、そこ追いかけて明らかにしたところで誰も幸せにならないんでね。

お祭り感、オールスター感は非常にいいのですが、それでわり食ってるのがメインストーリーでして、ぶっちゃけ話がどう進んでるのか途中で迷子になりました。
今どこで誰が何してるのかさっぱりわからんです。
サイドストーリーとメインストーリーの割合が、『名探偵コナン』の通常事件と黒の組織関連事件くらいの比率(体感)なので、そりゃ忘れますよねっていう。
しかも、その両者で時間的地理的整合性が結構適当なところがあり、混乱を加速させます。
もうフィーリングで何となくついていくしかありません。

あとは思った以上に参加タイトルそれぞれの固有名詞、設定を引っ張ってきますので、未プレイで臨むとやっぱしんどいところありますね。
10年以上前の初回プレイで、私はスチパンワールドメンバーが何言っているのかさっぱりわからず投げましたので。


アペンドデータ

これが地味にとんでもないデータです。
10本分のアペンドとかクッソ大変ですよ。
ただでさえ本作、参加クリエイターの数がえらいこっちゃです。
CG進行はもちろん、シナリオやボイスデータの取り扱いなんかも複数キャラやる声優さん多数なので、まあややこしかろうと。
それにCGも、新規の枚数こそ多くはないものの、お祭りタイトルなだけあって1枚あたりのキャラ数がまあ多いこと。
これ全然楽できてないですね。

そういう前提で、さらに10本分のアペンドまで作ってるわけです。
これはもうとんでもない。

しかしLiar-soft、そのアペンドデータをDL版の『ハチポチ』には入れない、なかなか理解に苦しむ暴挙に出ております。
これはホントなんでなんだぜ?
このせいで、パッケージ版を手元に置いておく必要性が出てきてしまいました。
あと、アペンドデータが『インガノック』と『シャルノス』のFVRには適用できないんですね。
細かいところ面倒くさい仕様です。
一応、『ヴァルーシア』のDL版にアペンドはできましたので、そこは安心しました。
これでパッケージ版にしかアペンド不可とか言われるとホント大変なことになっていましたもの。


おわりに

ついにこれをプレイしたかと、妙な感慨があります。
別にいつやってもよかったんですけど、どうせ遊ぶなら最大限楽しめる状態でっていう、欲張った結果が遠回りの10年でした。
ただ、これがどれだけ気合入った結晶なのか、多分10年前の私は感じ取れなかったと思います。
そういう背景まで楽しめたという点では、寝かせたのも無駄ではなかったのかもしれません。
低認知度&過小評価がかわいそうな、がんばって作りすぎてる一本でした。


追記


結局「ハチポチ」ってタイトルの意味は? という説明がついぞされることはなく、私は途方に暮れていたのですが、公式サイトに答えがありました。
細かいところもちゃんと見ないとダメですね。

▼世界観コラム 第7回「レイルコラム」by希
 https://www.liar.co.jp/LRFD_column07.html

これで完璧に理解できました。
きっと意味などないと。
たとえあったとして、考えるだけ無駄だと。


2022.06.27