積みゲー賽の河原



果つることなき未来ヨリ

ファンタジー世界に、旧日本海軍パイロットが太平洋戦争当時の日本からとばされるということで、そういえば異世界漂流モノってあんまりやっていないなと思い、購入に至りました。例の如く体験版は無視です。
当初、エロシーン無しの健全なタイトルいうことで全く検討にはあがっておりませんでした。アペンドで18禁化可能とかまたややこしい事を。よほど別段の動機が無い限り、エロシーンがないとやる気起きないから不思議です。

異世界戦記、なんて言葉があるかどうかは知りませんけれど、そんな趣のある本作です。亜人種と人類が混在する世界で亜人種側に付いた主人公・三森一郎が、暴政を敷く人類公国軍を撃破し戦争に終止符を打つ、みたいな流れを主軸に置き、全体としては共通ルート4章+個別ルート1章という構成になります。思い返せば、初回強制的に突入するユキカゼルートが一番良かったです。そのため、2周目以降に開放される他ヒロインルートに蛇足感はありました。内容も同じ戦場を別の視点から眺めているだけですし。
印象的に、ヒロインごとに違うライターが分担しているようです。共通ルートで各ヒロインをユキカゼ⇒アイラ⇒メルティナ⇒リアの順に取り上げますが、だんだんとテキストのクオリティが落ちていくのを感じました。一郎についてもキャラクターにブレがあり、章が進むごとに違和感があります。冒頭での一本筋の通った男気溢れる姿も、3章あたりになるとただの周りが見えていないアホに成り下がります。全体的にリアの存在感が極端に薄いのも、担当ライターが余計な事書いて他ルートに影響が出るのを嫌ったのではないか等々、あらぬ邪推をしたくもなります。正直リアの存在を抹消してしまっても気づかない程度には存在感薄いです。
ユキカゼルートについてはちゃんとヒロインらしさあり、盛り上がりありで楽しめました。エンディングの「果たされない約束」がまた良いです。歌詞も随所にユキカゼルートを連想させる箇所があり、丁寧な作りを感じます。ラストで一郎が当初からの宣言どおり現実世界へ戦死するために帰るのか、この世界に残るのか分岐がありましたが、この「果たされない約束」が「現実へ帰って国のために死ぬ」という同僚と一郎との約束を指しているなら、異世界残留ENDが正史だったのかな、なんて想像が膨らんで興味深いです。

世界観は正直よく分かりません。一郎の前にも漂流者はいたようですが、その正体はさっぱり。この前任者は核爆弾と思しき兵器を始め、オーバーテクノロジーな品々を遺産として残しており、これが世界観をややこしくしています。鉄道については言及がありましたから存在はしているのでしょう。アルミニウムもあるようですから電気もあるはずです。電気があるなら発電装置があるはずですから、モーターもあると考えるべきです。モーターがあるということは、同じ磁石とコイルの組み合わせでスピーカーがあってもおかしくありません。でもその割にはどうにも科学の気配を感じません。前任の漂流者がもたらした技術だから断片的でかつ技術体系も失われている、なんて話なのかもしれませんが、そうすると今度は現役で動いている遺産の説明がつきません。800年前の遺物がノーメンテで動くとか考えにくいです。メンテするとなると、やはりある程度はその対象について技術的な理解が必要ですから、結局違和感につながります。動力もメンテも不要なレベルのオーバーテクノロジーなのだとしたら、それってほぼ魔法じゃないですか。魔法ありの世界で結局魔法でした、なんていわれてもねえ。そしてその前任者の正体、技術内容について、あえてつっこんで言及しない事でいろいろと逃げを打っているように感じます。

話を単純にするならば、異世界に迷い込んで戦争を憂う姫様に出会い、公国への反乱軍を率いて良い所までいったはいいが、敵軍は大量破壊兵器を持っており窮地に立たされ、非常に危ういギリギリのところで主人公と力を合わせ撃破に成功した、みたいな流れになります。骨組みだけ見ればどこの国のおとぎ話ですかというレベルの超正統派です。こういう企画でこそ、製作者がいかにテーマを噛み砕き消化して肉付けしていくかが求められるのですが、そこで迷走した感があります。確かに他種族の協力を取り付ける、なんて名目のおつかいミッションでテキスト量もヒロイン人数も揃えはしました。しかしながらテキストについては上記の通りですし、ヒロインも下手すると飛竜部隊の面々に食われかねない体たらく。おいエレンと一緒に料理屋経営させろ、なんて願ったユーザーは少なくないと思います。実にもったいない。結局、作品のセールスポイントを、ヒロインの魅力なのかストーリーなのか世界観なのか、イマイチ決めきれず全体的に中途半端になった印象の一本でした。

追記:全章クリア後に勝子ルートを開放して、全体を俯瞰するような話でもやったら、もっとまとまったかもしれません。もしそこまで深いテーマとか考えていたなら、の話ですが。

2016.04.09