腐果の濡獄~蠢く妄執の連鎖……終わりのない饗宴~ 感想

エロ・グロ・ホラーというのは、どうしてこうも親和性が高いのでしょうか。昔から不思議に思っておりましたが、本作もその例に漏れず、それがホラーなドキドキなのかエロさのドキドキなのか、またホラーな怖いもの見たさなのかグロさへの怖いもの見たさなのか、非常に効果的に作用しあっています。

『蟲惑の刻』以来のTinkerBellです。ここは基本的に触手というイメージが強いので、あまり積極的に手を出していなかったのもありますが、それにしても久しぶりでした。『蟲惑の刻』が2005年ですから、ほぼ10年ぶりです。時間がたっても相変わらずのエグさで喜ばしい限りです。まあ、こちらがそういうの狙って買っているというのもありますが。ただし、エロさのベクトルに多少差異があり、本作においては女性への征服欲であるとか、綺麗なものを汚してやりたいとか、そういう方向よりも憎悪に近い感情が根底にありますので、ひたすらに破壊的です。どうやって痛めつけてやろうか、その点に終始します。出血のあるシーンが非常に多いです。公式ページのサンプルCGでは、このあたりイマイチ伝わってこないので、もっと上手い事PRしたら、いろんな人が幸せになったんじゃないかなあと思わないでもないです。

エロよりもストーリーの方に熱中できたのが、完全に予想外でした。猟奇殺人を主軸に物語が展開するといえば『カルタグラ』なんかを連想しますが、ああいうのってやっぱり「犯人は誰だ?」というのが話の中心に来ます。「主人公は誰だ?」なんて詮索をする事になろうとは思ってもいませんでした。冒頭から、主人公の名前が出てこないのは何かしら意味があるとは思っていましたけれど、ヒントも何も全然出てこないので、これもうどうなってるのよ、と。最終的な結末は結構あっけなく、予想も出来る内容でしたが、事件の真相となると、限りなくノーヒントです。自力で犯人に辿り着くのは不可能かと思われます。ただし、真相が気になるワクワク感だけはあります。そして面白さの前には全てが許されます。結末・真相についても、大筋では辻褄が合わない事もないので(納得できるかどうかは置いといて)問題ないといえばないのです。理路整然としているが全く面白くないもの、破綻しているが面白いもの、二つがあるとして、エンターテイメントとしてどちらが優れているかは論ずるまでもありません。もっとも、破綻していてかつ全く面白くないものが跋扈しているあたりに、この業界の問題があったりしますけれども。

例えば、本格ミステリー小説と銘打って、本作のような多重人格オチを持ってくると叩かれること受けあいですが、全く別のカテゴリでやるとそこまで気にならないのが不思議です。別媒体からのアイデアの輸入は手っ取り早くそれなりの企画を作る近道だと大塚英志も言ってましたし。氏曰く、例えばテレビドラマでいえば、当時で既にカビが生える寸前だった「不動産屋の手配ミスで同居」なんて設定をやって大ヒットだった『ロングバケーション』しかり、「両親の再婚で突然家族になってしまった」をやった『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』しかり、もっと言えば『フードファイター』なんて『タイガーマスク』そのまんまであると。
本作も、上記のとおり猟奇サスペンスなテイストが強いです。たまに切り口を変えると、新鮮味が出て非常に良い典型みたいなケースでした。やっぱり触手の割合が少ないTinkerBellは当たるなと思った一本でした。