EVE burst error 感想

やった中古で1500円で見つけたぜ、と思ったら、R15版でエロシーン無しとか訳分からんことになりました。
ちょっとエロ無しはやる気がおきませんので、探しました復刻版。
リメイク版も入っていましたけど、ちょっとそっちは魅力を感じませんでした。
原作至上主義ってわけじゃないですけど、実際問題としてリメイクが元より良くなる事ってあんま無いですし。

今はもう珍しくなってしまった、選択肢でマップを移動し、イベントを発生させることで話を進めていくタイプのADVです。
最終的には総あたりで何とかなりますが、まあ面倒です。
加えてプログラムもやたらと量が多く人月もかかるでしょうから、現在廃れてしまったのも納得です。
選択によっては進行に関係のない遊び心が散りばめてあり、面白いっちゃ面白いのですが、物語自体の方が面白いので、結局寄り道より先を知りたい欲求のほうが勝ってしまいます。

非常に印象的だったのが、誰が謎を解くのか、という点です。
本作の代名詞でもありますザッピングシステムにより、小次郎とまりなの二つの視点から物語を進めていく過程で、事件の全貌について迫れるのはプレイヤーだけというのが実に面白いです。
片一方だけの視点では事件の全貌は見えてきません。
小次郎とまりなが最後の最後で合流するまで、謎を解くのはあくまでプレイヤーなのです。
同時進行させる工夫もしっかりあって、片方だけを進めると必ずどこかで詰まってしまい、もう一方でフラグを開放しないと先に進めなくなっています。
これにより、両ルートを同時に進行させることが必要になるため、片方だけにのめり込みすぎて、ザッピングを楽しみきれないということもなく、自然とシステムに入り込むことが出来ます。
両主人公が気づいていない事件のつながりなんかが見えてきたときのワクワク感が堪りません。
特に両ルートを交互に操作しハッキングを仕掛けるシーン。
あのシーンで本作が、ただ選択肢を選んでいくだけのADVと決定的に違うものなのだと痛感しました。
ADV全般をまとめて「ノベルゲー」と呼ぶ人がたまにいらっしゃいますが、あのワクワクを経験したら、恐らくそんな事はもう言えなくなるはずです。
ADVというジャンルは、充分にゲームたりえます。

ただ、一つ言うならば、最後の最後で全てが明らかにならないのがどうもしっくりきません。
どうしても「今日皆さまに集まっていただいたのは他でもありません」なんて言いながら、つらつらと探偵役が事件の全容を明らかにするシーンが欲しくなってしまいます。
本作にはこれが一切欠落しているのです。
確かに、多くを語りすぎてしまうのは野暮ではありますが、エンディングで根幹部分が明らかにされた後も、腑に落ちない部分もよくよく見ていけば存在するのです。
そのあたりを、すっきりさっぱり明らかにしてしまいたい欲求があります。
この「探偵シーン」の代替品がラストの「犯人は?」のコマンドなのでしょうか。
先述のとおり、本作の謎を解き明かすのはあくまでプレイヤーです。
そして、この「犯人は?」の問いに正答出来るという事は、つまり事件の全容を明らかにできているという事で、だったらわざわざもう一度全容を明らかにしていくのなんて無駄じゃない?ということなのでしょう。
確かに、事件を見事を解き明かしたプレイヤーに対してまた解答編を垂れ流すなんて、それこそ野暮の極みです。
また、ここでつらつらと事件の解答編なんてやってる場合じゃない理由もありました。
物語はクライマックスを迎えたら、速やかにエンディングに向かうのがベターです。
ここで解答編を挟んでしまうと、どうしても盛り上がりが醒めてしまいますし、クライマックスからの流れが一度切れてしまいます。
エンディングを最高の形で演出するためには、解答編を切らざるを得なかったのかもしれません。
確かに、エンディングではこみ上げてくるものがありました。
ただしこれも諸刃の剣で「犯人は?」を正答できず、延々繰り返す羽目になると悲惨です。
私は一度トチりました。
結局は構成における取捨選択の問題で、結果的にいい方向に作用していたとは思いますが、やはり答え合わせはしたかったです。
まあ、全てが明らかになってしまうと、逆に魅力が無くなってしまう可能性もあるのですけれども。

「往年の名作」という先入観はありましたが、それ抜きでも充分に楽しむ事が出来ました。
ザッピングシステムはもちろんの事、世界観、キャラクターも良く作り込まれており、物語自体も非常に良くできています。
ザッピングがいくら上手く使えていようとも、世界観や物語が貧弱ではどうしようもありません。
あくまで、優れた舞台装置があってこそです。
小次郎なんかホントに良いキャラしてますし。
ある程度頭が良い人じゃないとああいうキャラは描けないと、個人的には思っています。
世界観あり、キャラクターあり、物語ありきで、さらにザッピングというちょっと特殊な調理法を使いこなしたがゆえに、本作の現在の評価があるわけです。
出来るならば、リアルタイムでプレイしておきたかった一本でした。