euphoria 感想

Erewhon』の時に、半額セールで対象になってたら買うわ! みたいなこと書きまして、まあその通りになったわけです。
基本的に逃した魚は追わない主義ですが、さすがに本作は避けて通れませんでした。
『フラテルニテ』は……、そのうち書きます、きっと。

飛ぶ鳥落とす勢いでここ数年、当サイト内にて局所的に評価爆上げ中の阿久津監督の処女作でございます。
氏のタイトルで処女とか笑えるって話はさておき、監督業一発目からこのタイトル持ってくるあたり、やはり只者ではありません。
ただし、企画自体は浅生詠氏なので、どこまで阿久津氏の功績といえるかは制作現場の実情が見えない事には何とも言えません。
少なくとも私は、ここまで安定して怪作を連発している以上、クオリティに対して氏が寄与している部分はかなり大きいと確信しております。

一方、企画の浅生氏の占めるウェイトについても、やはり小さくないと感じてはおりまして、例えば本作、後半怒涛の展開で状況が一変するあたりなんかは『Erewhon』に近いものを感じました。
というより、『Erewhon』が本作に近いんですね、時系列的には。
もしかして『夏の鎖』も同じ事やってます? そういえばあれについては現時点で未プレイなので、いずれ埋めておかなくては。
差し当たっては次半額セール対象になったタイミングで。

さて内容。
丹念に丹念に変態的かつ猟奇的なエロシーンを積み重ねてくれています。
人間コインランドリーとかは、もはや驚異的でした。
画面的には全年齢で流せる内容なのにオエッとなります。
世の中にはこれに興奮する人もいるのかと思うと、世界の広さを感じられます。
『GTO』で麗美から雅達を700万で買った変態のおっさんとかは多分ドンピシャでしょう。
程度の差はあれ、相手が嫌がることを強要して興奮するタイプの人間はいます。
例えば私の前の職場の某H氏とか。

閑話休題。
この被らなさ、バリエーションの広さは素晴らしい。
その点では『Erewhon』と実に好対照です。
ただしうんこ比率高めなのはご愛敬。
現時点では、血よりうんこの方が多い唯一の阿久津作品です。
うんこはなぁ……、うんこ自体に興奮する素養が私には無いのです。
私が好きなのはあくまで排泄の強制による尊厳のはく奪でして、排泄物自体はその副産物でしかありません。
いろいろ考える努力は認めますけれども。

今となってはまんまと乗せられたな、という心持ですが、ホントムカつくんですよこの梨香とかいうクソガキが。
ボコボコにしてやりてえわと思ったら、どうぞご存分にって話じゃありませんか。
1周目に梨香を選んだ私を誰が責められましょう。
結果的には、もしかして制作側の計算通りです? これ多分。
クソガキのルートは笑ってしまうくらい、作品の核心にかすりもしません。
他のヒロインルートではどんどん伏線が張られていくのに、ねぇ? 蒔羽さん? あなただけ何もないじゃありませんか! 彼女はきっとチュートリアル要員なのです。
ユーザーを誘い込んで謎を放り投げ、2周目以降で徐々に明らかにしていくという。
きっとそういう計算されつくした手法。

ムカつくクソガキが紛れ込んでいる一方、合歓は良いですね。
こういう計算高くて強いヒロインは好きです。
ただ正直、最終盤に真実が明らかになった後のはあんまり。
ただの良い娘です。
なら本性あらわした後の叶の方が良いです。
強いヒロインが好きなのです。
掌の上で転がされたい。
余談ですが、合歓ってネーミングすごいですね。
この言葉は知りませんでした。
意味調べてびっくり。

全編を通じて、情報の出し方が非常にスムーズです。
主人公自身、自分の置かれている状況が分かっていないので、持ってる情報量がユーザーとイコールなんですよね。
まあよくある手口です。
あとは記憶喪失とか。
それプラス、伏線の張り方も出てくる情報量がちょうど良い。
時と場合によっては、分からない事を分からせないまま進めてしまうことも大事なのです。
特にこういうタイトルだと、それによって緊張感が演出できたりしますし。

で、それを無理矢理と言ってしまっていいくらい最後に辻褄合わせました。
浅生氏の豪腕はさすがです。
さすがではありますが、如何せんラストは駆け足過ぎたように思います。
というより、いろいろ広げすぎて駆け足にならないとまとまらなかった、という具合でしょうか。
多少強引でもまとめてくれる律儀さには好感ですけど、正直カタストロフには欠けました。

そういえば、勝手にこれデスゲームだと思ってましたが、カテゴライズ的にはどうなんでしょうか? 冒頭で委員長氏が『車輪の国』の南雲エリばりに退場してくださったせいで勝手にそう思ってましたけれど、蓋を開けてみれば恵ちゃんノリノリですもんね。
特に開錠失敗とかもしませんし。
まあ、開錠失敗パターン作ったところで、エロシーンに毎回2択分岐があって、変な方選ぶと「開錠判定:失敗」のアナウンスが流れ、それ以降は共通テキストで「俺は何を失敗したんだ」みたいなぶつ切りENDになるだけでしょうから、あったところで面倒なだけって線が濃厚ですけど。
せいぜい全員死亡の一枚絵が追加されるくらい? 1/2で毎回同じCG出たらそれもそれでうざいなぁ……。

委員長氏といえば、やっぱりプロの声優はすげえなあと思いました。
台本に「おぉお゛おお゛お゛おおごおごぉぼぉぼぼぼぉぉごごごごおっ…!! がががががぁぁああああああ…!」なんて書いてあったら、私は絶対「これはもしや、笑ってはいけない音声収録的な?」と疑います。
え、これ読めと? マジで? ってなりますて。
アホ淫語実況系と双璧です。
多分わるきゅ~れ作品の収録とかもそんな感じだと思います。
プロってすげえなあ。

しかしながら、本作出たあたりから突然CLOCKUPが尖った作品作り出したのは何があったのでしょうか。
もっといえば、この阿久津亮という傑物はどこから湧いて出てきたのでしょうか。
私の中でCLOCKUPって、定期的にイマイチパッとしないタイトルを出してる、特に手を出そうとは思わないブランドだったのですが、それを一変させたのが阿久津氏です。
いやホントに、本作の前後で別ブランドみたいなもんです。
もっと言えば、今やCLOCKUPのブランドを担保してるのが阿久津氏といってもいいくらい。

CLOCLUPもCLOCKUPで、よくこんな狂気に満ちた企画を通したものです。
うんこゲーはただでさえ流行らないのに、設定もプロットもかなり頑張って練ってるわけじゃないですか。
普通これで投資分を回収できるとは思わないですよ。
邪推するならば、ホビボックスのお財布の紐握ってる人からなんらかの政治的パワーが働いたのかもしれません。
実績の無い人間が普通にやってチャレンジさせてもらえる範疇を逸脱してます。

狂気に満ちた企画を、狂気に近い判断で成功させた一本でした。

2019.03.12