積みゲー賽の河原



オイランルージュ

花魁艶紅という漢字表記がすごく素敵です。公式ページがオープンになったその日にもう購入を確定していました。だって吉原の遊郭で経営SLGですよ?どんなものになるか見当がつきません。ライアーソフトのそういうところ大好きです。こういうところは何としても買い支えていかねばならないと常々考えておりますよ、ええ。まあ私としては姉妹ブランドのレイルソフトの方が好きなんですけれど。

グラフィックは凄くいいです。決して派手ではありませんが、塗りがどこか浮世絵を彷彿とさせるものがあり、世界観に非常にフィットしています。また登場キャラはほぼ全員黒髪というのもポイント高いです。私個人の好みもありますが、この時代設定でカラフルな頭髪にしていたら、おそらく違和感しか生み出さなかったでしょう。そして大半が黒髪だからこそ、お夏の赤髪が映えるわけです。文身師という、どこかアウトローな雰囲気漂うお夏というキャラクターにピッタリです。登場機会の多くないサブヒロインという立場でいて、しかし彼女が非常に引き立っているのはおそらく狙いどおりなのでしょう。髪の色という視覚的に分かりやすいキャラ分けを放棄しているため、キャラクターそれぞれがきっちりと差別化して描かれているのも良かったです。一人の原画でここまでしっかり描き分けをしているのはただただすごいな、と。

SLGパートには冒頭でしっかり解説が入る親切設計です。しかし最初からスタートするたびに解説を見るか見ないか聞かれるのはだんだんウザくなるので、どうせならON/OFFつけてほしかったところ。また数字の表記が全部漢数字というのも、確かに雰囲気は出るでしょうが、アラビア数字に慣れきったこの脳みそには、しばらく違和感がありました。まあ慣れるまでの辛抱です。そして漢数字に慣れた頃、もう一つ気がつきます。SLGパートめっちゃ楽。ちゃんと投資さえしておけば売り上げは右肩上がりです。序盤に無茶をしなければまず潰れることはありません。ただしそれによって攻略までが楽になるかといえばそうではなく、一部ルート分岐にはただヒロインに投資するだけでは入れないものもありますし、サブヒロインのイベントも特にお夏に関してはいまだに条件がわかりません。原因が分からないままに手に入れる結果というのは気持ち悪いものです。それを踏まえたとしても二、三回ゲームオーバーになればやり方が分かるシステム、バランスというのはなかなか優秀ではないでしょうか。残念なのは、発生条件がイマイチよくわからないのですが、前のシーンのBGMが次のシーンでも流れてしまい、BGMが二重になることがたまにある点です。重要なイベントでこれが起こると結構ショックです。

シナリオの方は実に丁寧に作られています。遊女としてのヒロインたちそれぞれの理由がしっかりと掘り下げられており、それぞれの遊女としてのあり方、生き様、しっかり描かれています。作中では「遊女としての張り」と表現されていましたが、誇り、気概、心構え、そんな感じのニュアンスです。また、それらを描く上での下調べというものを非常に感じました。おそらく製作現場には資料や文献が山積みになっていることでしょう。例えば、床での遊女と旦那様たちの会話。普段言えば滑ってしらけてしまいそうなくさいセリフも、夜の遊郭という場面では「粋」へと昇華されます。そこでの言い回し、言葉選びが実によく練られています。加えて言えば、本作中には一切横文字が使われておりません。これがまたじわじわと効いてきます。私も気がついた時は思わず声を上げてしまいました。そういった下調べや苦労の上に、この世界観が構築されているのです。

ゲームとしても遊べるのはもちろん、吉原文化入門なんかにも耐えうるレベルなのではないかと思ったりします。それくらいしっかりと吉原遊郭という世界を再現しています。いや、私自身吉原文化は門外漢ですから、どれだけ正しく描写がなされているのかっていうのは正しく判断することはできないのですが、それに近づけようという熱意は確かに感じる一作です。私なんぞには、この時代にお夏はどうやって髪を染めたんだっていうツッコミを入れるのが限界です。それにしたって、当時はかぶき者なんていうド派手な格好の無法集団が我が物顔で街を闊歩していたそうですから、もしかすると染髪の方法があったのやもしれません。本を一冊書くには百冊の本を読まなければならないといいます。百冊のマンガやライトノベルを読んで作りました、というような作品はよく見かけますが、本作のようにしっかりとした下調べに裏打ちされた確かな世界観というのはなかなかお目にかかれるものではございません。このあたりの熱意は他のメーカーも是非真似していただきたいところ。