AVキング 感想

男に生まれたからには誰しも一度は、俺がAV監督だったらもっと抜けるビデオ作ってやるのに、なんて考える時期があると思います。
ならばやってみましょうか、というのが本作です。
非常にいいところに目をつけた企画だと思います。

『サカつく』シリーズよろしく、AVレーベルをつくろう!みたいなノリのSLGを期待していたのですが、やはり開発コストの問題からかベースはADVになっています。
AV女優をスカウト、育成、契約等々、そのあたりの要素を勝手に期待してしまい、実際とはギャップがありました。
しかしながら、AVの企画、演出等々は上手いこと要素として盛り込んでいるように思いますし、作成したAVデータの外部出力等のギミックも押さえています。
惜しむらくはやはり販売規模でしょうか。
アダルトPCゲームの販売規模では回収できる分も高が知れていますし、そうなれば自然と開発にかけられるコストも限られます。
AV監督をする上での醍醐味でもある女優のキャスティングが実装されていないのは痛手です。
出演女優のパラメーターを出来上がる作品クオリティに影響させようとしたら作業量跳ね上がりそうです。

シナリオ上、AVで稼ぐ他無いが他人にヒロインを抱かれるのが嫌だからヒロインの出演ビデオは主人公が作る、みたいな建前になっていますが、これについては女優をヒロインに限定するためにあえてそういう方向に持っていったのではないか、シナリオ・設定はあくまでシステムに引っ張られてのものなのではないか、なんてのは邪推です。

フラグ管理がかなりシビアです。
綱渡りみたいなスケジュールでイベントをこなしていかないとトゥルーエンドに辿り着けません。
かといって通常のイベントをおろそかにすると、撮影可能なシーンバリエーションが増やせません。
シーンバリエーションを増やさないと販売が伸びずゲームオーバーです。
私は諦めて攻略サイト使いました。
地力でやったらどれだけ時間がかかるか分かりません。
……情熱が足りないとも言います。

ガチガチの経営SLGで「AVレーベルをつくろう!」をやってみたい気持ちが無いわけではありません。
弱小インディーズレーベルから初めて、いくつもレーベルを束ねて他媒体まで手を広げる総合メーカーまで成長させていく、なんて想像しただけでワクワクします。
しかし悲しいかな我らがニッチ産業、そんなリソースもノウハウもあろうはずがありません。
何本売ればペイできるのか想像もつきません。
そんな中、情熱と採算の最大公約数的ポジションに生まれたのが本作です。
この手の挑戦的な作品には積極的に投資したいですが、如何せんそういうユーザー様はマジョリティではないようで。
もっと出る杭を伸ばしてやれる土壌があればいいのになあと切に願いたくなる一本でした。

2016.01.06