親不孝世代

晩婚化の時代ではありますが、それでも結婚をする人間はいるわけです。
あくまで1億総中流時代から見た場合での晩婚化、独身者の増加であって、なんやかんやいいつつも、結構な数が結婚をしていたりするんです。私の同級生にももちろん既婚者、子持ちまで現れております。そうなると私の両親、特に母の方がケッコンケッコンうるさくなります。実に面倒くさい。

バブル後の焼け野原を見て育った世代としては、結婚のデメリットばかり目に付いてしまします。お金がない、節約せよと育てられた世代は、どうしても結婚して将来的にどれだけの金が必要になるのかが気になります。儲かっている時は儲けをいかに大きくするか考える攻めの時です。逆に儲かっていない時、いかに出金を小さくするか、守りの時です。「失われた10年」の中で子供時代をすごし、すっかり安上がりな人間に育ってしまいました。

男は外に働きに出て、妻は家を守る。まさに一億総中流時代の典型例ではありますが、21世紀の現代でこれを実現しうるのはマイノリティです。若年層においてはさらに少数でしょう。今の時代、子供を育てようと思ったら、どうしても一人の稼ぎでは難しいようです。
また、男女共同参画の時代です。晩婚化、少子化が進行する諸悪の根源であるかのような言い方をされることもありますが、実際無視できるものでもないと思います。制度的に男女共同参画が推奨される一方、男は外で働き女は家を守る、という固定概念はどれだけ打破されているでしょうか。結局のところポイントはそこです。男も女も平等に働けるようになったところで、この昭和臭い価値観が打破されない限り無意味です。

さらに、女性が稼ぎ手となる場合のモデルケースがハッキリしません。男女共同参画社会が叫ばれて久しい昨今ですが、セットであるべき「女は外で働き、男は家を守る」ないし「女も男も外で働く」という家庭のあり方、生き方のビジョンはあるでしょうか。もちろん、共働きの家庭は世の中いくらでも存在しています。ここで言いたいのは、育児・家事を分担する人間まで織り込んだモデルケースが存在していないということです。家事は分担で何とかできないことも無さそうですが、子供の世話は託児所なのか祖父母世代なのか近隣社会なのか。家の部分が宙ぶらりんになっているから、働き続けたい女性が結婚に向かわないというのは実にありそうな話ではないでしょうか。

なんで男か女、一方しか働かないケースしか想定していないのか。もっともな疑問です。では夫婦が共働きをした場合どうなるか。二人暮らしを前提としたら、かなりメリットが出ると思います。水道・ガス・電気等、インフラの基本料金は折半できますし、住居についても2人で住むから費用も2倍というわけではないでしょう。上手いこと割り振れば家事も半分で済みます。収入は二人分になりますが、生活コストは一人暮らし×2よりも低く抑えることができるのです。ただし、これではルームシェアと何が違うの、という話になりますので、子育てについても考えていく必要があります。端的に言えば、金はあるが時間はない状態です。結局のところ、子供の面倒を見る人手がありません。そこに対していまだに待機児童云々の諸問題がクリアにならないのですから、この国の男女共同参画社会がいかに片手落ちなのか伝わるかと思います。

長々と書きましたが、結局のところ私が言いたいのは2点です。
①結婚による、特に経済的なデメリットが大きすぎる
②現行の結婚制度が現代社会と乖離している
そういうわけで私は結婚しません。両親へのいいわけはこれで完璧です。なんならパワーポイントで資料作ってプレゼンしてやってもいいです。裏を返せば、現代社会に適した形でメリットがあるならば結婚してやってもいいわけです。

あくまで例えばの話でありますが、扶養家族の人数で逆累進課税を行うとか。現在、われわれの所得に掛かる所得税は累進制をとっています。儲かれば儲かるほど取られます。これを、扶養家族の人数よにり減税していくのです。いっそ、結婚しただけで減税でもいいかもしれません。まだ独身でいたいけれど、節税になるんだったらとりあえず結婚しとこうか、みたいな2~30代増えると思います。これが「結婚手当て」みたいな形で行政からの支給にならないことを祈ります。フランスなんかは子供手当て等が充実しているとのことですが、一回集めて再分配は効率悪いです。特に行政がやると。
実際にフランスでは、N分N乗方式という所得税の課税方式を取っています。これは世帯収入を世帯構成人数で割り、個人ごとに課税をする事で世帯構成人数が多いほど課税額が下がるという仕組みです。

恐らく同じようなことを考えてる人がたくさんいることと思います。同時に、それに対する反論や、制度的な穴も多いでしょう。しかし、逆累進の導入如何が問題ではありません。どんな形であっても結婚、ひいては結婚にメリットがあればいいのです。もはや明日は今日より良くなると信じられる時代でも、それこそが人生におけるたった一つの幸せであるという結婚自体に価値がある時代でもありません。もっと即物的な利益を所望します。
化石と化した制度と現代社会との間のギャップを無視してきた結果が昨今の少子化晩婚化なのではないか、8兆円も予算取っておいて男女共同参画社会政策はどうなっているんだ、という問題提起までで本稿は締めさせていただきますが、似たような記事を書いていたら、私に対する母からのプレッシャーが止まなかったんだろうな、なんて察していただければ幸いです。