やきたてクロワッサン 感想

いつかプレイしようと思っていたクソゲーが押入れから出てきたので、せっかくですからプレイしてみました。
案の定、清々しいくらいのクソっぷりでしたが、これくらい突き抜けていると一周して面白くなってくるから不思議です。

以下、公式ページ(現在は閉鎖)の紹介文より抜粋

天候、引越し、昔済んでいた街…これから住む家、ベーカリーオータムリーフ。


一行に二カ所の誤字はいただけません。
公式サイトの作品紹介ページですよこれ。
他にもちょくちょくやらかしています。

また、同じく「システム」の項目より抜粋

システム
焼きたてのパンの香り漂うお店で三人のお姉さんと同棲生活♪
■お姉さんいっぱい! あまあまな生活♪
突然できたお姉さん達。

最初はちょっと硬い態度でも打ち解けてくればたっぷり甘やかせてくれます。

もちろん、エッチなごほうびもいっぱいくれちゃいます♪

……これってシステムなんですか?ほとんど蛇足ですがスケジュールパートを一応搭載してるんですから、せめてそっち紹介すればいいのに。
肝心なのは実際の中身だから、と言われればそれまでなのですが、包装がホコリまみれになっているお菓子を「食べれば美味いから」と言われてもイマイチ食欲がわきません。
外から見えている部分があんまりにもあんまりだと、そりゃ中身だってそれなりでしょう。
実際、本作の中身は大分アレなわけだったことですし。

グラフィックが本作唯一の良心です。
パッと見ると、普通のゲームに見えなくもないレベルに達しています。
そこに、人体構造の崩壊とパース無視のビックリ一枚絵がひっそりと忍ばせてあるあたり、この原画家は笑えるクソゲーというものを分かっています。
致命的なのはテキストでした。
ほとんど企画プロットをそのまま持ってきただけなんじゃないかというくらいにテキストによる肉付けが欠落しています。
あんまりダラダラと何の展開もない会話のみというのも退屈ですが、足りなすぎるのも問題です。
テキスト自体にも、軽妙さとかテンポの良さとか心地よい読み口とか、そういったポジティブな要素は皆無です。
そういうレベルです。
突然好きだといわれて、そのまま流れでエロシーンに突入、気が付いたらいきなりエンディングを迎えます。
起承転結のテンポが悪い、盛り上がりの足りないダラダラ系のシナリオなんてものはいくらでもありますが、そういった作品は、テキストの質はともかくとして、量を増やそうという意思が感じられるだけまだ可愛げがあります。
本作にはそういった工作の痕跡すら無いのです。
当然、盛り上がりも面白みもありません。
あげく、終盤にいきなり新しいサブヒロインが登場して、そのままエンディングに突入したりしますし。

でも、本作に20時間分くらいの山も谷も無いダラダラ系日常シーンテキストを延々と挿入してやれば、よくあり萌え系作品が出来上がるんじゃないかとも思うのです。
グラフィックを今の流行の感じにしたら多分そのまんまでしょう。
そう考えると、ただ無難につまらないだけの、誰の印象にも残ることの無い凡百の萌え系作品になるよりは、クソゲーとして個性を発揮しているだけ本作はマシなんじゃないかとも感じられます。
少なくとも、間違いなく私の記憶にはクソゲーとして本作が深く刻まれました。
面白い面白くないはさておき、ベクトルは間違えていますが、酷さが一周して他に無い個性をしっかり持ってしまった一本でした。