沙耶の唄 感想

はい、すんごい今さら感ではありますが、何回目かのプレイをしたのでようやっとの掲載です。
FANZA GAMESのライブラリ漁っていたら、「お、こいつ沙耶の唄買っとるやん!」みたいな再発見がありまして、セール時のドカ買いの喜びを時間差で噛みしめています。
昔Best版のトールケース買ったはずなんですが、あれは今どこにあるのやら。

例のネタ

さて本作。
ネットでネタにされているような洗礼を私も過去に受けた口でして、当時それはそれはびっくりしたものです。
こういう方面のエンタメにもこの媒体って使えるんだ! みたいな。
抜きでもキャラ萌えでもなくっていう発想がなかったのです、あの頃の私には。
認識の間口を広げるという意味では「初心者向けだよ」とニヤニヤしながら勧めてきた友人の言は間違いではなかったわけです。
今そういう人に会ったら、確実に「うわ、多分面倒な人だ……」みたいに思うでしょうから、出会いのタイミングってホント大事。

設定の作り方について

主人公の設定が『火の鳥 復活編』ですが、これをパクリという人はいないでしょう、いないでくれ頼むから。
こういう他媒体から持ってきた設定なりストーリーなりをアレンジして他の媒体に落とし込んだ作品は、個人的にかなり好きです。
『Phantom』とかもそういうところありますよね。
要素をそのまま持ってきて配置しただけだと、まとまりがないというか、どうしてもハリボテ感がでます。
それぞれをしっかり咀嚼して連動させているからこそ、展開に必然性・説得力が生まれるのです。
そのあたりがホント絶妙で、安心して「うわーまじかー!」と楽しめます。

ボリュームについて

面白さに関して、同じ瞬間最大風速出せるのであれば全体がコンパクトであるほど優秀と思っています。
その点では本作はアダルトPCゲームで最高峰ではないでしょうか?
ユーザーに考えさせる隙を与えずどんどん情報を提示してくスピード感が、ビジュアルノベルのそれではありません。
それが成立するのも、いろいろ考えるより先に進めた方が面白そうだっていう展開ありきでしょう。
それくらい一切の無駄がなく、本作をコンテ代わりにそのまま映画にしてしまっても不自然ないくらいです。
そういえば、沙耶の本来の姿が全身では描かれないあたり、一作目の『エイリアン』ぽさありますね(笑)

セカイ系的に

最近めっきり聞かなくなった言葉です。
本作の場合、2000年前後にあった「ボクとキミが上手くいって世界も救ってハッピーハッピー」みたいな、ティーンエイジャー特有の満たされない欲求だったり閉塞感を気持ちよくくすぐるギミックというよりは、完全に一個人によるエゴイスティックな幸福追求であるという点で区別はできるかもしれません。
まあ、前者にもそういう側面が無いとは言いませんが。
一方で、お互いにお互いしかいないという特別感、運命的な関係の演出が成功しているのは言うまでもないところです。
結局、「この惑星をあげる」ということで、天秤の片方に地球全人類を乗っけてみせたわけですから、その点ではセカイ系のカウンターとみることもできましょうか?

おわりに

虚淵氏の作品は、なんでかDL版が配信されないんです。
というか、ニトロプラス自体あんまりDL版配信しないせいで、『Phantom』とか『続・殺戮のジャンゴ』あたりを再プレイして当サイトに掲載しようにもなかなかできず、という状況でして。
押し入れを漁ってパッケージを発掘してくるのは現実的ではありません。
楽を覚えた人間は、もはやそんな面倒くさいこと出来ないのです。
とはいえ、氏の作品で唯一DL版が出ている本作を再プレイして、わりと熱は高まっています。
もし近いうちにその辺のタイトルが掲載されていたら「あいつ、やりやがったんだな…!」とか独り言お願いします。
そういう熱を呼び起こす程度には、間違いなく傑作な一本です。

2020.08.22