STARLESS 21st Century nymphomaniacs. 感想

久しぶりの聖少女氏による新作です。
延期に延期を繰り返し、公式ページ上でのマスターアップ報告を受けてもまだ信じられず、店舗に商品が届いてようやく、本当に完成したんだと現実として受け入れることが出来ました。
この手の延期ゲーは発売日を待ちわびてはいけません。
なんとなく意識はしつつ、しかし公式ページに毎週足を運ぶでなく、店頭でふと気が付いたら発売していた、くらいが正しい待ち方です。
発売日告知と延期発表にいちいち一喜一憂しているようではやってられません。
なんだかんだで私も期待はせずとも待っていた口なので、発売日の閉店直前に思わず買ってしまいました。

美味い話にゃ裏がある。
これを忘れたときに、人は実にあっけなく人生の落とし穴にはまってしまいます。
本作の主人公沢渡君もまさにそのケース。
二週間で400万のバイトなんて冷静に考えればこんなに怪しい話もないでしょうに。
悲しいかな貧乏学生。
この話に乗ってしまったせいで、沢渡君の人生は大きく狂わされてしまうのです。
彼の雇用主である間宮家の人々は基本的にまともではありません。
恐ろしさといったら、メキシコの麻薬組織といい勝負できるレベルです。
人は平等ではなく、支配する側の間宮家の人々にとっては支配される側の人間などどうなろうと知ったことではないのです。
人権とかそういう甘っちょろい発想はここにはありません。
そういうわけですから、雇う使用人というのも使い捨ての玩具か、良くてペットぐらいの認識です。
そのため沢渡君は雇用期間中徹底的に性的虐待を受けます。
前半は持ち前の絶倫ぶりも手伝って、1日5回6回は平気で搾り取られます。
またその一回一回の量が多いこと多いこと。
精液の量が多く描かれるのはよくあることですが、本作においてはそれが自覚的であり、コンドームを被せて射精をさせたり、メスシリンダーを用いて計量したりすることで、あえてありえない射精量をデフォルメとして処理せず、実際にありえない量として描いています。
きっと我々の知っている睾丸とは別の器官が彼らには搭載されているのでしょう。
物理的にタマを握れば絞り出せるっていうのは初耳でした。
中盤からは疾風怒濤の浣腸の連続。
脱糞に次ぐ脱糞。
それはまさに躍動するスカトロジー。
私は浣腸には二種類あると考えています。
まずはSM的発想から派生する浣腸。
ここでの浣腸とは、浣腸の苦痛を与えるという直接的なサディズムの発露であると同時に、排泄という人間の最も恥ずべき行為をコントロールすることで人としての尊厳を奪い取るという作用ももたらします。
いわば浣腸という行為が目的であり、それに伴う排泄物というのはあくまで副次的なものでしかありません。
それに対するのが純粋なスカトロジーに基づく浣腸です。
ここでの浣腸とは単純に排泄物を獲得するための手段であり、第一目標は排泄物にあるのです。
そして本作での浣腸の位置なのですが、極端にどちらに寄っているというわけではありませんが、どちらかといえば排泄物自体に目的があったのではないかと、プレイし終えた今となっては思います。
いやホントに、中盤からはうんこばっかりです。
そういう要素があるとは思っていましたが、まさかここまで多いとは。
それに加え、獣姦やホモセックスも標準装備です。
終盤からエンディングにかけてはまさに酒池肉林。
変態達が肉欲のままに快楽を貪れば貪るほど、不幸へのジェットコースターは加速していき、10あるエンディングのうち大半で、沢渡君は一般の世界から全力でドロップアウトしていきます。
少なくとも元通りの日常を迎えることはありません。

テキストには少々癖があります。
「話」が名詞で出てくる時も動詞で使われる時も全て「話し」で統一されていたり、セリフに明らかに書面でしか使わない単語が出てきたり、気になる点がしばしば。
また、朝起きてから夜寝るまで、ルーティンワークまで全て描写するので、少々中だるみするかもしれません。
基本的に物語は全て間宮家の館の中で展開されますので、館モノ特有の閉塞感がそれに拍車をかけます。
ただしそれが致命的に作品の質を落としているというわけではありませんし、無視しても問題はないレベルでしょう。

いやしかし、変態的な性欲を持つ雇用主に性的に虐められたい、そんな性的嗜好を満たしてくれる作品だと思ってプレイしたらえらいことになりました。
踏みつけてほしいとは思いましたが、ボロ雑巾のように扱ってほしかったわけではなかったのです。
主人公沢渡君は間宮一家にとっての特別な存在ではなく、あくまでやって来ては処分されていく数多い使用人の一人にすぎませんから、どんなに頑張っても楽しめる玩具以上の価値は認められません。
せめて最低限度の人権くらいは認めてほしいなっていうのが私の感覚で、ストーリーが進み巨大な理不尽に流されていけばいくほどに、気分は重苦しくなります。
麻理沙を何度も殴り殺してやりたいと思いましたが、一矢報いることすら叶わないのです。
確かにある段階まではエロスを楽しむことが出来ました。
現実の人間の骨格に基づいたグラフィックはどこまでも肉感的ですし、出てくるのは皆巨乳です。
どんどん頭身が下がってキューピー人形に近づいていく「美少女」の流れに全力で逆行する姿勢には敬意すら抱きます。
あえて言うならば私の覚悟が足りませんでした。
スネオに喧嘩を売ったらジャイアンではなくてマイク・タイソンが出てきたといいますか……。
久しぶりに「うわぁ、変態だ」と感じる作品でした。
もしプレイされるのであれば、くれぐれもお気を付け下さい。