マドンナ~完熟ボディCollection~ 感想

私、運命ってあると信じています。
可能性は無限にあるって言いますけど、結局のところ実際に選ぶのはたった一つの選択肢でしかないわけですから、それってつまり一本道なんです。
人生は一本道です。
なんだかんだ理由をつけて衝動買いを正当化したいだけなんですけどね。

プレイした印象としては、まあめぞん一刻です。
遙さん絡みのイベントはことごとくめぞん一刻そのまんまで、他の住人も、まあ一刻館で見たことある連中ばかりです。
そのあたりに、最初は少し微笑ましいものを感じていたのですが、あまりにも持って来すぎです。
そしてそれがまたオマージュとしてもパロディとしてもイマイチ機能していません。
端的にいえば劣化コピーです。
めぞん一刻へのリスペクトも、両作品間での文脈の差からくる滑稽さも生じさせない、程度の低い模倣です。
同じ材料を使って自分ならこう描く、という気概を見せてくれれば面白いものにもなったのでしょうが、残念なことにそのレベルには達しておらず、そのあたりは少々物足りなさを感じました。

基本的には「原画佐野」という圧倒的なセールスポイントを持っていますから、他で足を引っ張らない限り大けがはしないポテンシャルは備えています。
つまりシナリオの方は最低限起承転結だけ付けて、無難に無個性にまとめてしまえば失敗はしないはずなのです。
クリエイターのあるべき姿だとは思いませんが、商売人としては正しいと思います。
にもかかわらず、あろうことかテキストはやっぱり足を引っ張っているという印象が拭いきれません。
例えば、ちょくちょく挿入される「それはもう飽きたよ」と文句の一つも言いたくなるような無駄なパロディが不快ですし、逆にテンポを悪くしています。
さらに、作中でペニス・肉棒・息子等々、いろいろな呼称がなされますが、MY SONというのがとてもうざかったです。
狙いすぎで明らかに外しています。
ただ外すだけじゃなく、後々まで記憶に残るので、余計に寒い印象を受けました。
クリエイターとしての欲求の方向性を間違えていると言いますか、それを除けば全体の流れとしては、のめり込むほどに面白いというわけではないものの、特に不満はないくらいの出来だったので残念です。
ついでに言うと、エセ関西弁になるくらいなら素直に回避した方が良かったのではないでしょうか。

エロシーンは、アニメーション付きのものがあり、グラフィック面ではなかなかの出来だと思います。
シーンによってはその体位でその揺れ方はないだろうというおっぱいがありましたが、アニメーションをつける限りおっぱいは揺らさねばならないというおっぱい職人がいたのでしょう。
この職人が、ぷるニメというシステムでもやってくれています。
一枚画のおっぱい部分をマウスでいじると動くのです。
アホらしいですが視覚的には嬉しいです。
しかも結構良く動きます。
ただしテキストは、やはり足を引っ張るというか、少なくとも私は受け付けませんでした。
どのヒロインも一様に、出来の悪い文字コラのような喘ぎ声を吐きます。
アパートやバイト先のヒロイン達はほとんど豆腐の貞操観念の持ち主であり、主人公にあっさり股を開くので、ある程度エロいセリフを吐くのはキャラクターとも衝突せずに効果的に機能します。
しかし遙さんや理恵のような、男性経験の少ないヒロイン達までいきなり立板に水のごとくエロいセリフをスラスラと吐くのは、非常に違和感を感じました。
加えて、過剰な淫語はボイス付きだと聞くに堪えません。
特に「膣肉」「マン肉」「膣壁」といったような、活字媒体から出てきた口語ではない単語というのが、声に出した時強烈な違和感を発します。
というか、頭真っ白になっちゃうなんて言いながらそのセリフ回しって、あんた普段どういう事考えてるのよって。
また、ぷるニメには数パターンのボイスがつくのですが、これがランダムで、しかも前後の文脈に関係なくいつでも入るので、シーンによっては温度差が結構笑えます。
それはもう、しょうもないパロディギャグ以上に。

まとめますと本作は、酒池肉林の劣化めぞん一刻というのが適当でしょうか。
上手く冒険すれば化けたと思いますが、冒険の仕方をことごとく間違えております。
それでも、グラフィックのレベルは相当に高いですし、テキストがまあまあ当たりのシーンではそれなりに実用性もあり、これで各ヒロインのエンディングで、もう少しオチをつけてくれたら総合的に見て悪くない出来だったと思います。
何せ基本的に投げっぱなしですから。
特に張り巡らされた伏線と、その鮮やかな回収なんてものは端から期待していませんが、締めって大事だと思います。
そのあたりも含めて、不遇の原画家佐野俊英の本領を垣間見た一本でした。

■追記
まあ、不遇とはいえブランドの代表が当の本人佐野氏なので、まともなシナリオ起用しない自業自得なんですけれども。