平グモちゃん-戦国下剋上物語- 感想

安心と信頼のライアー買いです。
ライターが岩清水氏なので、いつもの良い意味で力の入れどころを間違えたテキトー感あふれるバカゲーが来ると思ったのですが、完全に裏切られました。
岩清水氏の本気を見ました。

まずグラフィックが綺麗です。
あれ、ホントにライアー?と疑いたくなる出来です。
基本的に流行の絵柄を取り入れつつ、しっかり独自色も出しているバランス感覚が絶妙という他ありません。
実に良い原画起用をしたと思います。

困ったことに、シナリオがすこぶる面白いです。
正史では現在に伝わっている松永久秀の一生をベースに、IFをふんだんに盛り込んだ偽史を加えることで、さながらADV版『太閤立志伝』とでも言うべき面白さを垂れ流しています。
(太閤じゃなくて久ちゃんですけど) また、削りが絶妙に上手くいってます。
戦国時代が舞台なので、どうしてもチャンチャンバラバラしたくなってしまいますが、合戦における刀やら槍やらのシーンは極々一部にとどめられています。
確かにそれも戦国武士の一側面ではありますが、本作では戦国武士のもう一つの側面、どうすれば生き残れるのかに焦点が当てられています。
誰に付くか、誰を巻き込むか、裏切るのか、あるいは下克上をするのか、その中での久ちゃんの苦悩にかなりのウェイトが置かれています。
そちらに力を入れて描くために、合戦やらどうでもいい日常の1コマというのはごっそり削られています。
おかげで、ボリュームはあるのにくどくないという素敵なシナリオに仕上がっています。

システム面にも改善が見られます。
ついにマウスホイールでのテキスト送りが可能になりました。
この一歩は非常に大きな一歩です。
さらに、この久ちゃん立志伝を史観年表という形で、シナリオのどこからでも再開可能にしてくれたのも非常に良かったです。
「史観」という言い方があまりに適切すぎます。
本作、分岐が多く、エンディング数もかなりの量になるため、コンプリートに必須の機能といっても過言ではありません。
何より、好きなシーンをいつでもプレイしなおせるというのがただそれだけで嬉しいです。
ただし、CGとエロシーンの閲覧もこの史観年表とセットになっておりまして、ここからしかCGもエロシーンも見ることが出来ません。
史観年表のページ数が結構多いので、なかなか目当てのCGやエロシーンにたどり着けず不便です。
これだけは不満でした。

本当に良い意味で不意打ちでした。
岩清水氏には申し訳ないのですが、正直ここまでのシナリオは期待していませんでした。
ライアーソフトに期待しているのは三振かホームランかなので、こういうのが来てくれると、何度三振されようが買ってしまいます。
まあ三振は三振で楽しむのですけれど。
そんなこんなで、下克上な本編の内容も合わせて、裏切りだらけの一本でした。