紅殻町博物誌 感想

希氏式インチキワールド全開です。
お恥ずかしい話ですが、山形県に紅殻町という地名探しました。
当然、影も形もありませんでしたが。

こちら側と向こう側の対比が実に面白いです。
こちら側というのは我々の常識である現実、向こう側というのは希氏のインチキワールドを指します。
山形県というこちら側の現実世界と、紅殻町というインチキ世界。
そして紅殻町自体も地下の河原が紅殻町というこちら、ここではないどこかという向こう側の境界となっていますし、本紅という舞台装置も、インチキワールド的な現象と現実との境界を作り出す役割を担っています。
極論すれば、本作はこのインチキワールドにどっぷりとつかり込んで「なんじゃこりゃ」を楽しむための作品とも言えるでしょう。
どこからがホントでどこからがフィクションなのか、分からないのが楽しいです。
構造的にずるいんです。
なまじ実際の地名出したり史実のトリビアを盛り込んでくるものですからちょいちょい心のへぇボタン押すんですが、ちょいちょい真っ赤も差し込んでくるもので、何がホントで嘘なのか混乱しきりでした。
おそらく狙ってのことなのでしょうが、このフワフワ感はRailの中でも本作独特のものだと思います。

前作『霞外籠逗留記』を受けて、ブランドの方向性も見えた気がします。
不思議を不思議のまま解き明かすことなく愛でるのです。
なんかよくわかんないけど素敵! という海に溺れながら、ふとした瞬間につかむ「こ、これは!」という喜び。
尖りすぎてる分、刺さったらもう抜けません。
というか、希氏が好き放題暴れているだけっぽいですが……。

ヒロインについても対比が目立ちます。
本紅の引き起こす騒動に巻き込まれた際、インチキワールドに行った2人行かなかった2人、学生の2人成人の2人、黒髪の2人そうではない2人、エンディングでここではないどこかへ渡った2人残った2人、処女の2人非処女の2人、etc.
このあたりに深い意味があるとは思いませんが、遊び心は感じます。
所詮彼女たちもこの町の従属物に過ぎないということです。
少なくとも、彼女たちがセールスポイントとなるタイトルではありませんので。
なにせ紹介ページのトップなのにヒロインの画がないですくらいですし(Railはこのパターン多いです)。

本作、ストーリーは一本道です。
私個人的にはナイス構成だったと思っています。
別にヒロイン個別ルートで作っても良かったんじゃないの?という意見あるかと思いますが、あくまで本作メインは紅殻町ですので。
戦術のとおりヒロインは添え物です。
エンディングの構成が、どのヒロインを選んでも大筋では一緒というのもきっとそのせい。
いや、断じて手抜きではなくて。
ラストは紅殻町の秘密を明かすことに意味があったわけで、別にどのヒロインだろうと目的を果たせれば問題ないのです。
まあ、体裁整えるために4人ヒロイン出しちゃったし?じゃあとりあえず個別のエンドくらいは用意しとく?位のノリだったんじゃないかなあと私真剣に考えてます。


世界観のワクワク度でいえば、Railでも屈指の一本でした。