黄雷のガクトゥーン

さあついに黄まで来ました。
ここに来て学園モノとかもう、え? なんでなん?
さすがだよライアーソフト、君たちが何考えてるかさっぱりわからない。
つまり平常運転だ、問題ない!


意外といつも通りな安心感

さて本作。
桜井氏が熱病にかかり、もうろうとした意識の中、ニトロプラスとかlightみたいなノリのヤツ作りてえ! と書き上げた企画書が、制作過程でスチパン世界の引力にどんどん引き寄せられていったような、なんかそんな感じ。
学園モノの皮をかぶってるだけで、あんまり学園モノしてなくてむしろ安心。
根っこのところはがっつりスチパンフォーマットです。
ただ、各章で統治会メンバー中心に取り上げているせいか、全体としてほのかなまとまり感。
その分、いつものノリで出てきたロダン君とか逆に浮いちゃってた印象。


登場キャラ多くね?

数えたことないのではっきりとは言えませんが、スチパン史上最多じゃねえですか? 登場キャラ数。
ちゃんとみんなキャラ立っててそれも良し。
なによりも、女性陣がみんな乳デカい、本当に素晴らしい。

スチパンってまず世界ありきじゃないですか。
まず舞台となる世界があって、それを見せるためにキャラがいる。
主人公やヒロインは独立しても強度を保てるよう作っているとは思いますが、章仕立てで構成されるストーリーの中盤くらいを構成するのってやっぱり、世界を見せるための切り口として舞台装置的に登場するキャラなんですよね。
本作だとそういう舞台装置的キャラのウェイトが低めです。
中盤は統治会メンバーという、わりと主要メンバーよりの人たち多めで構成されてて、そのあたりが先述の「ほのかなまとまり感」につながります。
こいつら、最後まで出てくる!
だからこそ、ロダン君とかがね……。


ヒーロー系スチパン

異能バトル系スチパンって字面だけ見ると、なんだ新境地か!? って雰囲気ですが、よくよく考えたら今までも十分不可思議系バトルやってましたわ。
バンクシーンがないのは若干の寂しさがありますが、毎回違う必殺技が出てくるのもこれはこれで面白い。
ちゃんとバトルしてる! すごい!

でも実際、今回のこれがよかったのか、あるいは従来のバンクシーンシステムの方がよかったのか。
ヒーローモノ的には必殺パターンでバンクシーンもありっちゃあり、というかその方がそれらしい、まであるじゃないですか。
ライダーキックとか。
あえていつも通りのそっちでいかずに今回の形にしたってことは、多分何か狙いがあったはずで、となるとやはりニトロやlightの…! という邪推につながるわけです。
まあどっから引っ張ってきたのかは知りませんが、スチパン的に見慣れないノリだったのは確かです。
え、ライアーでヒーローモノなら『マスクドシャンハイ』? そんなものは知らん。


スチパンを見つめなおす

雷電魔人ことテスラ君、彼がやたら目立つせいで失念しかけてましたが、女性主人公+特殊能力男性ってかなりスチパン的スタンダードなフォーマットでした。
全然認識してなかったからすごくびっくりしました。
舞台が学園だったり、スチームパンクなのに電気、使っちゃうんだ……とか、とにかく今回は「え?…え!?」みたいなインパクト過剰なので、どうもシリーズとして認識が薄いのです。
それだけに、今までと全く異なる外装をひん剥いた内側に、従来のスチパン的お約束を発見するたび、ありがたみを感じてしまっています。
これまでと違うアプローチだからこそ、逆に本来の姿を認識できるというか。

『瞬旭のティルヒア』が外伝的位置づけで、しかもシリーズがもう5年以上沈黙してるわけで、正味な話、本作が現状ではシリーズラストみたいなところあるじゃないですか。
そんな中でこういう振り返りみたいなことされると、それが殊更に突きつけられるようで、なかなかクるものがあります。
走馬灯かっていう。


おわりに

そういえばスチパンのファンディスク系は、これまで全部放置してましたが、『シャイニングナイト』はやろうかな、どうしようかな。
統治会の面々がキャラ立ってるんで、そっちで話作っても十分に映えるはずです。
そのへんも、やっぱりスチパンっぽくないです。
でも、期待されたものを期待されたとおりに作っても面白くないよねっていうライアーソフト的発想で、なにかぶち込んでくれるとは思いますので、じゃあやろうかな。
忘れちゃいけませんけど、ファンディスク作るぜ! と言って『ハチポチ』なんてもの作るような人たちです。
出てくるのが本当にファンディスクだと信じてもいいんだよな…?

学園ヒーローでもしっかりスチパンで、すべてのジャンルはスチパンになりうると思い知らされた一本でした。


2023.11.19