いつか、届く、あの空に。 感想

ランプで中島大河が新作出すよって話がありまして、懐かしいタイトルを引っ張り出してきたわけです。
というか、最近セールで10本1万円セット対象になっていたので、ちょうどノリで買い直したタイミングだったのです。
私の世代的に、ニコ動で「きしめーん!」とか弾幕コメントやってイキってた黒歴史抱えてる人多いかと思いますが、私のその例に漏れず似たようなことやってた手合いでして、「きしめんの新作?」みたいなわけの分からない理由で本作を手に取った記憶があります。
良かったですね、ああいうネットミームにもちゃんと広告効果的なのがあるんですね。


ビジュアルノベルっていいよね

ADVとビジュアルノベルで、どっちが好きかと言えばビジュアルノベルです。
ただ、テキストへの要求レベルが上がるので、ビジュアルノベルならなんでもってわけでもありません。
恐らくですが、そのあたり作るのも面倒ですし、ユーザー的にもそんながっつりテキスト読みたい層ってのも減ってるせいで、最近はビジュアルノベルタイトル減ってるんじゃないかと推測してます。

たまに食べると無性においしく感じるマックのハンバーガー的な補正もあるかもしれませんが、やはりビジュアルノベルはテキストを追いやすいです。
画面に出るテキストは多い方が楽に感じます。
立ち絵が隠れてしまうのはあれですが、そんな頻繁に表情の切り替えもないので、立ち絵からの情報もそこまで加味しなくていいのは良好。
視覚的にもうるさくないですし。

逆に、視覚を邪魔しないところでは、BGMがかなりいい仕事していたのではないでしょうか。
ゾッとくる場面で非常に印象的でした。
まあ、BGMが目立つこと自体どうなのかって話もあるかもしれませんが。


伝奇的なのが楽しい年ごろではなくなってしまいました

不思議を不思議のまま、よく分からないものをよく分からないままに消費するのは好きですが、不思議に対する共感ってのは大事だと思うんです。
その点では本作、主人公が物分かり良すぎまして「あ、そうなのね、策君はそれでいいのね」みたいな私との温度差がありました。
いや決して、「わけわかんねーよ!」ってキレ散らかせとか、途方に暮れる姿を描写しろとかじゃないんですけど、もっと「何これ…?」を共有できたら嬉しかったかもしれません。

あと、分からないことをわりとしっかり説明してくれるのが本作は良心的かもしれません。
ほんわか不思議学園キャラ萌え系のつもりで入ってきてるユーザーに、いきなり伝奇バトル投げつけるわけですから、この配慮はとても優しいです。
最初は遠回しで大仰な言い回しが鼻についた唯井家や桜守姫家の皆様のセリフも、苦労が感じられるポイントではないでしょうか。
むしろそれがなければただの説明セリフの垂れ流しが延々続いてしまうわけですから。
ただ、こういうほとんど呪文みたいなセリフ回しが、昔プレイしたときほどは楽しめなくなってきました。
こういうバトルをカッコいいと思う感性が死んでしまったのでしょう。
多分老化です、悲しい。


展開の逆算力

伏線があっても面白くなければどうしようもないし、伏線がなくても面白い話はいくらでもあります。
だからそれを過度に称賛するつもりはないのですが、全体を俯瞰して逆算して作ってる印象は強く受けました。
いや、そうはならんやろポイントも、そりゃ挙げればありますけれど、それでも全体のまとまりは確保できてると思います。
異能バトルって、できるできないの線引きがキモなんです。
例えば魔法でなんでもありにしてしまうと際限がなくて、「超強い魔法:発動すると相手は死ぬ」みたいになると目も当てられません。

全体のプロット作るのと、言葉遊び満載の固有名詞を作っていくの、どっちが先だったのかはめっちゃ気になります。
多分、鶏か卵かってくらいぐるぐるぐるぐる、あったのかなかったのか。
この言葉遊びのドヤ感で、展開の迫力3割増しくらいにはなってますから、とても大事なところです。


おわりに

そういえば最近ビジュアルノベルって息してないよねって気づきました。
いや、その辺俯瞰できるほど新作本数やってないので、言い切ってしまうのもあれですが。
また久しぶりにビジュアルノベル掘ってみようかしら? と思える一本でした。


2022.02.21