泡風呂エクスペリエンス 感想

新作で買ったタイトルをいくつか放置しているにもかかわらず、半額セールでふと目についたタイトルを一生懸命プレイしてしまうこの現象は何なんでしょうか。
昔からちょいちょい発生しています。
まあそれで困っているとかは別にありませんけれど、謎の罪悪感に襲われます。
そんな具合にこの冬の半額セールで目に入ってしまったのが本作です。
劇団近未来ってsofthouse-sealの下請けみたいなイメージだったのですが、自己申告としては同人サークルなんですね。
結局sealとは決別したのでしょうか。
ここしばらくは、劇団近未来名義で定期的にリリースしている印象です。
私個人的には審査機関通してJANコードつけてあれば商業タイトルだと思っているので、その括りで見れば本作は同人タイトルということになります。
自主規制という建前のもと、わいせつ物陳列罪と戦う業界的にあんま曖昧にして良い部分でもないと思うのですが、このあたり誰も定義してくれないのがなぁ。
同人タイトルのくせにJANコードついてるパッケージって、そこそこの規模のサークルだと結構多いように感じます。
それ商業ルート乗せる気満々やんけ! っていう。
最近はDL版ばかりなのであまり気にしていませんが。

さて本作、ソープランドです。
「アダルト」ゲームとは言いつつもこの業界、風俗モノのタイトルって案外少ないです。
ファンタジーで娼婦とかはまだ出てきますけれど、世界観が現代だとまあ少ない少ない。
パッと浮かんだところだと『脅迫2』のソープ堕ちENDとか、最近だとあずみがいきなりデリヘル嬢で登場した『眠れぬ羊と孤独な狼』とか。
ヒロインの設定だけソープ嬢ってことなら『Forest』なんかも該当ですね。
風俗とは微妙に違いますが『CLUB ROMANCE ~クラブ・ロマンスへようこそ~』なんかも近いところがあるかもしれません。
ユーザーの趣味でヒロイン追加できるとかめっちゃ画期的やん! と、当時はワクワクしたものの、まったく鳴かず飛ばずでございました。
まあ私に思い当たるのはこの辺が精々。
なんでこうも風俗モノタイトルが少ないのか。
素人考え的には、処女性がどうとか、ユーザーが風俗に興味無いとか(私の友人に風俗狂いがおりますけれども)、まあまあ理由が浮かびます。
萌え系で取り扱うにはあまりに爛れていて、凌辱系で取り扱うにはぬる過ぎる中途半端さ。
特に凌辱系なんかだと、大体風俗嬢みたいなのはすっとばして性奴隷まで一気ですもの。
異論は大いに歓迎ですがこの業界、他のモブ女キャラとは一線を画する特別な女性こそがヒロインであり、その特別なヒロインにとって唯一無二の存在になる事が主人公の目的(手段問わず)、みたいなところがあります。
金次第で誰とでも寝るヒロインと、その相手をしてもらえる程度の金を持っている「だけ」の主人公では、お互いに全く特別感がありません。
お互いがお互いでなくても事は起こり成立してしまうからです。
ダイヤモンドに何で価値があるかといえば、突き詰めると「貴重だから」というところに行きつきます。
そこらへんに落ちてる石をありがたがる奇特な人はいないのです。
前置きが長くなりました。
要するに、そういう世間様に背中向けて爆走する人たち大好きなのが当サイトというわけです。
風俗嬢、泡姫、結構ではございませんか! そういう前のめりなの大好き。

内容的には、いろいろこじらせかけた童貞が高級ソープランドで当たりを引くとどうなるかが、なんやかんやでわりとリアルに描かれています。
一回目の入店で店員相手にキョドりまくり、「本番! 本番は出来るのか! 本番させろ!」とせっつく姿に、あれこれはやばいやつなんじゃないか、なんて疑念を抱きましたが、よくよく考えれば30前の童貞なんて世間的に見れば十分やばいやつなので、むしろ正しい描写なのかもしれません。
「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」の10年後の姿がここにあります。
そしてそんなやばい初体験からすっかり落ち着いた2回目、この落差は成長の跡が覗えて良いです。
たった一度の経験が男を変えるんですね。
3回目以降ともなるともう自信持っちゃってますもん。
素人童貞が何を偉そうに、なんて声が聞こえてきそうですが、自信の有無っていうのは人間にとってすごい大事です。
自信もって堂々としているだけで、なんか出来る人っぽく見えるってのは実際ある話です。
そしてその自信の根拠っていうのは、別に適当でいいんです、本人さえそれを拠り所に出来るのならば。

そしてナディアさんです。
冒頭で、ソープ嬢とかヒロインに相応しくないんじゃ! みたいなことを書きましたが、あれは嘘です。
必要以上に天使です。
少なくとも私的にはドストライクです。
やってる事といい、そのナイスバディ(死語)といい、強烈に女性なんですけど、その一方でいかにも女性っぽい面倒くささは感じない、奇跡みたいな存在感。
気取らない感じなのにすごく気遣いが出来て、それでいてそう感じさせないあたりが堪りません。
というか、純粋にサービス水準が異次元です。
こんなん商売と分かっていても惚れてしまいます。
髪型ベリーショートなのも、あれは絶対プレイ用ですよ。
長いとローションでベタベタになるからね! ボイス無しは特に気になりません。
ナディアさん微妙な関西弁使いなので、むしろ正解かも。
下手に声つけると、この絶妙な正体不明感が無くなります。
ただ、ならどうしてBGVつけたのよっていう。
これはホント謎。
ボイス無しなら無しでいくらでも想像が出来るというメリットが、アリならもちろんそのままの魅力があったのに、声は無いのに想像で補完もさせないという謎采配。
本作唯一と言っていいくらいの失策です。

また、興味深いのがキャラの立たせ方で、世間一般的にキャラクターを立たせるならイベントなり関連エピソードなりを通じて掘り下げていくものですが、そういうのがほぼ無いです。
しいて言えばナディアさんの自己申告があるものの、過去何があってどう生きてきたのか、具体的に明かされることはありません。
というか本作、そもそも話らしい話が無いのです。
お店に行ってお気に入りのコンパニオンにサービスを受ける、ただそれだけ。
変に店の外での展開が無い分、風俗っぽさが強調されて、良い演出だと思います。
ナディアさんは、ソープランドという非日常の中にだけいる天使なのです。
店の外で登場させたら、それはもう日常の延長線上になってしまい、多分キャラの魅力は大きく損なわれることでしょう。
これが狙い通りの演出だとしたら、ちょっとこのサークルの認識を改める必要があるかと思います。

童貞がソープランドにドハマりしましたっていう、極端に言えばただそれだけの話なのですが、諸々がしっかり噛み合って、非常に良く出来た作品だと思います。
ある意味すげえリアルな成長物語の一本でした。

2019.02.08